第12話 昼休みを返して!

 衣織さんと一緒に登校したことによって、休み時間のたびに、事情聴取を受ける羽目になってしまった。どさくさに紛れて、他クラスの生徒もいた。僕の平穏な高校生活は、今日に限っては、失われたといっても過言ではない。


 これが毎日続くなら、転校を考えるまである。


 ——そして昼休み。

 そんな僕に、追い打ちをかけるようなトラブルが舞い込んできた。


「鳴、ちょっといい」


 なんと、衣織さんが、僕の教室に尋ねてきたのだ。

 突然の衣織さんの来訪に教室はプチパニックになった。


 当然のごとく視線は痛い、痛すぎる。


「な……なんでしょう?」


「ねえ、その……」


 もじもじする衣織さん。おおよその察しはついている。


「鳴……お昼……一緒に食べない?」


 思った通りだった。そして周囲の反応も思った通りだった。


 箸を落とすもの、殺意を込めた視線を僕に向けるもの。


 この半日で、衣織さんと共に行動することが、どういう事か分かった。


 僕は、ユッキーと一緒にお昼の約束をしていたので、ユッキーの振り返ると、グーサインでウィンクをしていた。どう思っているのかはわからないが、行けということだろう。


 ユッキーが良いというなら、特に断る理由もないので、衣織さんの誘いを受けることにしたた。


「あの」


「うん?」


「え?」


「窪田先輩は、なんで鳴を誘うのですか?」

 

 なんと衣織さんとのやりとりに、愛夏が参戦してきたのだ。


「え、あなた誰?」


「私は、和田愛夏、鳴の幼馴染です」


「お……幼馴染?……幼馴染のあなたがなぜ?」


「あなたといると、鳴が迷惑なんです!」


 何をいうんですか……愛夏さん。


「え……そうなの鳴?」


「いや! そんなことはないですよ! 全然ないですよ!」


「そう言ってるけど……?」


「鳴、あなた休み時間のたびに、困ってなかった?」


「まあ、それはあったかもだけど、それは衣織さんのせいでは」


「衣織さん?」


 衣織さんは、さんをつけたことがお気に召さないようだ。


「い、衣織のせいでは!」


『『衣織』』


 呼び捨てにしたことをクラスメイトはお気に召さないようだ。


 昼休みが修羅場になってしまった。


 僕の穏やかな昼休み、返してください。



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