第8話 学園のアイドル
衣織さんが部室から飛び出して行った後、僕は結衣さんから部活の説明を受けていた。
現在軽音部には、2バンド、1ユニットが所属している。1ユニットが僕と衣織さんだ。
基本的に練習は、演奏側と視聴側に別れ、交代で3曲づつ演奏して、意見やアドバイスを出し合う、システムだ。
部室は1室、予算が潤沢にあるわけではないので、個人練習は各自で頑張らなければならない。
ちなみに、結衣さんと衣織さんは2年生で同じクラスだそうだ。
「なるほどですね。僕、音楽の部活はじめてなんで、アドバイスや意見交換、ワクワクします」
「そっかそっか、でも鳴と衣織にアドバイスできるヤツはいないと思うよ」
「そうなんですか?」
「なんだ、衣織だけじゃなくて、鳴も無自覚なんだね」
「え」
「衣織もだけど、鳴のギターは高校生の部活レベルじゃないと思うよ、もしかしてプロなの?」
「とんでもないです、目指していたことはありましたが、夢破れたって感じですかね」
「早っ! 諦めるの早いよ! まだまだこれからじゃん」
「あはは、確かにそうかもしれませんが、今は楽しみます。せっかく衣織さんと一緒にプレイ出来ることになったんですから」
「ん、鳴は衣織狙いだったの?」
「狙いってわけじゃないんですが」
SNSの動画を結衣さんに見せた。
「ん、衣織」
「はい、僕は彼女の曲と歌声に惹かれて、ギターを再開しようと思ったんです。それが衣織さんだったのはびっくりしましたが」
「すごい偶然だね! もしかしたら運命の出会いかもよ? 衣織もまんざらじゃなさそうだったし」
う……運命の出会いだと……でも僕は……まだ。
「まあ、どっちにしても鳴は大変だね」
「え、どうしてですか?」
「衣織と一緒にいれば、すぐに分かるよ、彼女は学園のアイドルだよ……非公認だけどファンクラブもあるんだから」
ファンクラブ……。
「まあ、せいぜい頑張ってくれたまえ」
結衣さんにポンと肩を叩かれた。
結衣さんもいい匂いだった。
年上のお姉様たちに、無駄にドキドキした僕だった。
それでも……。
それでも、まだ僕は、愛夏の匂いを忘れられない。
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