第6話 衣織の受けた衝撃 〜衣織視点〜

 部室に入ると知らない子がギターを弾いていた。時期的に入部希望者なのだと思うけど、勝手に機材を使っているのはいただけない。


 注意してやろうと思ったのだけれど、出来なかった。


 それは、彼のギターが凄すぎて、私が聴き入ってしまったから。


 私はしばらく、彼の演奏に釘付けになった。


 そして、よくよく聴くと、彼が弾いているのは私のオリジナルだった。


「その曲……」


 静観しようと思っていたのに、思わず声が漏れた。


「すみません、勝手に機材使わせてもらって……」


「「あ」」


「あ、アンタは、あの時の視姦野郎」


 昨日の残念イケメンだった。


 見た目はそこそこなのに、ナヨっとしていて煮え切らない。私は彼にそんなイメージを抱いていた。



「あ……あの時のは、どうも、ありがとうございました」


 ん、ありがとうございました……。


 てことは、この子しっかり見てたんじゃん!


 私は自分で赤面するのが分かった。


「はあ————っ!

やっぱりイヤラシイ目で見てたんじゃない! それとも、ビンタされて喜ぶドM?」


「ち、違うんです……言い間違いです!」


 睨みつけてやった。この怯えっぷり、嘘ではなさそうだけれど……。


 ここまで怯えられると私が悪者みたいに感じてしまう。


「まあいいわ……で、ここで何しているの?

つか、なんでアンタが、私のオリジナルを弾いていたの?」


「音無 鳴です! 入部希望です! 勝手に機材使ってスミマセンでした」


 聞きたい答えではなかった。まどろっこしい子だ。


「そう、入部希望なの、機材の件はいいわ、学校の共用物だし……それよりも、

何で私のオリジナルを弾いていたの?」


「最近のお気に入りなんです! SNSで見つけて、それからずっとこの曲に……いえ、歌声に惹かれて!」


 何、この神理由……素直に嬉しい。この子私推し?


「私は窪田くぼた 衣織いおり。衣織でいいわ、鳴」


 私は、自分が抑えられなかった。


「ねえ、弾いてみて。

私、鳴のギターで歌ってみたい」


 あのギターで歌ってみたい。


 私のソウルが鳴のギターを求めた。


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