第2話 憂鬱

 僕、音無おとなし なるは、中学最後の日に、3年間苦楽を共にした彼女、和田わだ 愛夏あいかに別れを告げられた。


 他に好きな人ができて、もう気持ちが戻ることは無いそうだ。


 僕は高校でも彼女と一緒にいるつもりだった。


 心変わりするまでの愛夏も同じだった。


 だもんで、僕と愛夏は同じ高校に通っている。


 しかも何の因果か、よりにもよって同じクラスだ。


 あのままの関係が続けば、喜ばしいことだったのだろう。


 実際にはそうはならなかった。


 クラス発表を見た時、僕は何の罰ゲームだろうと思った。


 神様を恨んだ。


 転校も考えた。


 でも、そんなに簡単な問題じゃない。


 正直毎日が憂鬱だ。


 忘れたくてもなかなか忘れられない。


 親友のユッキーこと幸村ゆきむら 信之のぶゆきは、新しいでも恋でもすれば、すぐに忘れられると励ましてくれているが、今の僕には無理だ。


 もう辛いのは嫌だ。

 あの胸がザワザワする感覚が嫌だ。


 何をやっていても落ち着かなくて、

 食欲もわかなくて、

 些細なことでイライラして、

 夜も眠れなくて、

 どんどんどんどん卑屈な気持ちになっていく。


 どうしたら良いのか分からないモヤっとした感情……全部嫌だ。



 本音でいうと消えてしまいたい。



 あとどれぐらい、このモヤモヤした感情と付き合わなくてはならないのだろう。


 本当におかしくなってしまいそうだ。


 これまでの僕は、恋愛における良い影響を受け続けてきたわけだが、今はその真逆だ。


 恋愛における悪い影響を受けまくっている。


 失恋。


 これまで失恋した友達を慰めたことはあったが、こんなも辛い想いをしていたとは知らなかった。


 知らぬが故に僕が掛けてきた言葉の軽さ。思わず自責の念を抱いてしまう。


「時間が解決してくれるよ」なんて……今の苦しみから解放されない、曖昧な言葉をかけたバカはどこのどいつだ。


 当事者意識のない無責任な言葉だったと、身を以て知った。


 憂鬱だ……消えてしまいたい。


 早く家に帰りたい。


 ベッドに潜り込んで現実逃避したい。


 これが僕の高校生活だ。



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