第1話 出会い

 高校生活にも少し慣れたある日の通学路で、舞い上がる桜の花びらと共に、春一番が運んできたのは、スカートの前が見事にめくれ上がった女生徒の姿だった。

 

 おそらく膝丈ちょい上のチェック柄のスカートだ。

 パンチラなんてレベルじゃない。


 モロだ。


「ピンク」


 あまりに突然の出来事に、僕は思わず心の声を漏らしてしまった。


 僕と同じ学校の制服だが名前は知らない。でも、めちゃくちゃ可愛かった。


「見た?!」


 頬を赤らめ女生徒は僕に問いかける。

 

「い、いえ見てないです……何も見ていないです」


「なら、ピンクって何よ」


「それは、その……」


「パチ——————ン」


 乾いた音が鳴り響いた。


 僕は尻もちをついて、頬を押さえていた。


 何が起こったのか分からなかった。いや、分かっていたけど一連の出来事が唐突過ぎて、理解が及ばなかったのだ。


 女の子にビンタされただけで尻もちついてしまうなんて、情けないかも知れないが、彼女の1発は、あまりにも強烈だった。


 彼女は汚物でも見るような目で僕をにらんだ後、スタスタとその場から立ち去った。


 これはラッキースケベと言うのだろうか。だとしたらもっと初心者向けに、もう少し弱めの刺激がよかった。


 学校までの道のり、あらわになった彼女のスカートの中身が目に焼き付いて離れなかった。


「ちっす、なる


「おはよう、ユッキー」


「あれ、お前、顔どうしたん?」


「いや、ラッキーと言うか、不幸な出来事があって」


 ——僕はユッキーに先の出来事を話した。


「それは、ラッキーじゃね? 可愛かったんだろ?」


「あ、うん、まあ……」


「なんだよ、ノリ悪りーな」


「ほら、僕まだ……」


「ああー、お前まだ愛夏あいかのこと引きずってんのか?」


「う……うん」


「まあ、お前ら小学校の頃からずっと一緒だったしな、分からねーこともないけど、早い事忘れちまえよ」


「そうしたいんだけどね……なかなか」


「なんだよ、いちいち辛気臭くなるなよ」


「悪い」


 新生活がスタートしたというのに、僕の心はあの日から止まったままだ。



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