2-7 夢現、第二層へ

「あいつらどこまで行ったかな、アーサー」

「さぁなもう天蓋までは行ってるんじゃないか」

「じゃあ俺たちがここで戦って足止めしたらちょうど良くなるよな」

「そうだな」

「と、いうことでだ。黒服さん達、悪いけど帰ってくれない?」

 アーサーとヴェンスの前に、黒服を着込んだ集団が細い剣を持ち立っていた。

「我々は執行者、邪魔をするならランク処理屋の貴様らとて容赦できんぞ」

「なぁにが執行者だ、かっこつけか?しかも執行官のパクリかよ。大体、ちっこい子供を誘拐しようとか考えが犯罪者のそれだぞ」

「ヴェンス、あまり言ってやるなよ、こいつ等はそれが仕事なんだろう」

「黙れ、屑共、我々は正義だ。我々こそ正義なのだ、理由はどうあれ貴様らも敵と判断した。ここで消えてもらう」

「そうかい、じゃ。本気で行かせてもらおうかね。死んでから後悔するなよそっちが始めたんだ」

 ヴェンスは大剣を、アーサーは銃を構えた。

「行くぞ!」

 ヴェンスは地面に剣先を当てながら引きずるように走りだした。アーサーはそれに合わせ銃を撃ち始める。執行者達は剣で銃弾をはじき迫ってきた。ヴェンスと戦闘の集団が火花を散らし剣戟を交える。ヴェンスは力の限りで剣を振り抜き、さっそく何人かの執行者をあの世へと送った。

「どうした弱すぎるぞ、そんなもんで終わりか?死にたくなければ出てくるな!」

 ヴェンスの言葉に何人かの動きが止まる。その直後、的確に頭に撃ち込まれた弾丸で何人かが動かなくなった。

「そっちが始めた、といったはずだ。生きて帰れると思うなよ」

 アーサーは銃を回しながら弾丸を再装填した。

「悪いが教会専属処理屋はここで終わりだ!」

「その通り!」

「俺たちは個人の行動を取らせてもらう、」

 手を掲げ大きく叫ぶ。

 その時、執行者集団の後ろで悲鳴が上がった。両陣営の動きが止まる。

「いい、考えがあります。俺が解決してあげましょう」

 十字架を背負った男が突如として現れ執行者の一人を刺し、上に掲げた。

「貴様!ロッ…ぎゃぁああ」

「ロッハー…何でこいつがここに…」

「解決策それはね…み・な・ご・ろ・しです」

「イカレタ悪魔め、全隊ロッハーをターゲットに変更しろ!」

 執行者がすべてロッハーに向かっていく。ロッハーはそれをものともせず十字架を叩き下ろした。

「なに、ぎゃああ」

「うがぁ、あ、あ」

 執行者たちを打ち払いながら、ヴェンス達の方へと向かっていく。

「やぁやぁ今晩は、ほしい物があるので貰いに来た次第で」

「何を言ってる?」

「構うなヴェンス。どうせこいつもいつか決着をつけねばならなかった相手だ。幾らあの英雄と同年代の奴であろうともな」

「じゃ、始めましょうか殺し合い!」

 あたりの空気が一変する。ざわざわとうねりを上げ木々が揺れ始めた。

 それだけの殺気をロッハーが出しているのだろうか。

「本気で行くぞ!ヴェンス!」

「了解、アーサー。駆動剣解放マナ石充填!」

 ヴェンスの持つ大剣に光が集まり拡大した。そのまま上段に構えるとヴェンスはロッハーに向け剣をふるった。閃光のラインがロッハーを襲う。

 しかしロッハーはものともせずにそれを十字架で受け止めた。

 ヴェンスとロッハーは武器を互いに克ち合わせ時には引き、時には叩きつけあう。

 ロッハーがヴェンスの大剣をはじき横に攻撃を当てようとした瞬間、アーサーの放った弾丸が、ロッハーの肩を貫いた。だが、ロッハーは止まらずヴェンスの腹を殴りつけた。

「グハッ…!」

 ヴェンスは飛ばされ木に激突した。辺りが噴煙で見えなくなる。

「ヴェンス!」

 アーサーは銃撃をロッハーに当て続けるが、ロッハーはビクともしない。

 それどころか急激に回復しているようにもみえる。

「どうした、つまらない奴らだな」

「黙れ、クソ野郎が。まだ終わっちゃいない」

 立ち込める煙の中からヴェンスが立ちあがる。レバーを引き倒す、剣が真ん中から分かれ中から電子波の走る不可視の剣が現れた。

「おぉおぉおおお!」

 剣を振るいロッハーに跳びかかった。ロッハーは十字架を地面にたたきつける。すると中から幾重の剣が姿を現した。

「まだ死ぬなよ…」

 剣を投げつける、それは螺旋を描きヴェンスの手足に突き刺さった。

 しかしヴェンスは動きをやめずロッハーに向かっていく。

「うおぁぁああ!」

 ヴェンスは剣を振るい上げ、ロッハーに斬りつけた。ロッハーの体は肩から腰のあたりまで切り裂かれ切断された。

「ぐおぉぉ!!」

 ロッハーは唸り声を上げぐらりと揺れた。その刹那、ロッハーがヴェンスの顔をがしりと摘むと思い切り投げ放った。ヴェンスは岩に叩きつけられ動かなくなる。

 剣が地面に突き刺さる。

「ふはは、無駄なんだよ!ご苦労さまでこったな」

 急速にロッハーの傷が回復していく。あれだけちぎり取れていた腕が再生し、一瞬でくっついた。ロッハーは細い剣状の武器を取りだしアーサーに向かって投げ込んだ。

 アーサーはそれを回避したが、腕を掴まれ腹に蹴りを叩きこまれる。

 血の味が腹の底からあがってくる。アーサーは吐血し、その場に倒れた。

「どういうことだ…幾らナノマシンがあっても…ここまでは無理のはずだぞ…」

「言うつもりはないね。残念ながらここまで。だ。お前たちの持つ通行券を継承させてもらうぞ」

「通行券…まさか…」

「気付いても遅いんだよ、シーラ、やれ」

 すると暗闇の中から獣の様な姿をした何かが飛び出し二人の下に近づいた。

 ≪コピーします≫

 くみ付かれ首筋を噛まれる。体から何かが抜ける感覚。そして鋭い痛み。

「うわぁぁあぁあああ!!」

「ぐわあああああああ!!」

「とる物だけ取ったし命だけは助けてやろう。命だけは、な」

 体に焼いたような痕が残る。二人は倒れ動かなくなった。



 空間が揺らぎ波紋が現れ、シルクハットを被りコートを着た男が入ってきた。セリとカテラに会釈すると、カテラの隣の開いている椅子に座った。

 ちょうどその時、「こんばんは、当ステーションは01412番です。本日は第二層行きガジェットバスにご搭乗ありがとうございます間もなく発射いたします」

 と、アナウンスが流れ、静かな揺れの後、遺跡が動きだした。


 コートの男が小さなカバンを膝の上に乗せて開けた。その瞬間、カテラがセリ服を掴み、椅子の向こう側に引き込んだ。自分たちの座っていた場所が消えていた。


「お前、誰だ?」

 カテラは既に布を払って大砲を構えていた。セリも剣を抜く。

 コートの男はカテラを見ながらシルクハットを取って深々と頭を下げた。

「またすぐ会えると言っただろ、なぁカテラ」

 顔を上げた、ロッハーだった。箱から、箱の暗闇から腕が飛び出し、傷の直ったガイノイドが姿を現した。その次にロッハーは不釣り合いなほど巨大な十字架を取りだす。

「ショータイムの続きだよ、楽しもう。ここなら逃げ場もないだろう」

「ロッハー…何でお前が許可されるはずのない遺跡に入り込める!」

 カテラが叫ぶ。

「なんでって、許可を貰ったんだよ、持ってる人からちょっと特殊な方法でね。」

「まさか…」

「そのまさか!誰とは言わないけど二人とも譲ってくれたよ」

「シーラ、お前はあの再生人格にリベンジするんだろう。行けよ。」

 シーラは何もしゃべらず顔を此方に向けた。牙が取り付けられ明らかに魔改造されている。

 体勢もどちらかと言うと獣に近くなっている。

「お前を殺したいとか言ってたから、体を改造してやったんだ。その代わり性格が消えちまったけどな。最期は泣いて喜んでたよ。ハッハッハハ」

「最低な奴だ、あなたは」

「自覚してるよ、どうも」

 ロッハーは一瞬下を向き呟くように答えた。

「カテラせっかくだから、同業の好で戦ってくれや」

「私とお前は同業でもなんでもない!」


「僕は大丈夫、カテラはロッハーを!」

「セリ…分かった」

 ニライとクラウトの操作により壁が貼られて場所に仕切りが出現した。

 ナズナとスズシロからダウンロードした記憶でセリの戦闘能力は向上している。

 あの時のようなことはないはずだ。

「もう僕は、逃げない、逃げるもんか!」

 セリは剣を構え大きく息を吸ってゆっくりと吐いた。



 セリの事は心配だが、今はこの目の前の相手に集中しなければ此方は確実にやられるという事を。カテラは大砲を地面に置くと、チャージモードに切り替え、懐から二丁の銃を取りだした。アーサーが持っていたライフル銃より小ぶりなソレは対人用の小銃だった。多少改造の改造が施してあり、簡単に説明するとすれば充電式で弾丸不要の電磁砲だ。

「そんなおもちゃで戦うのか?今回は俺も本気だぞ?」

「やってみなきゃ分からないでしょ」

 ロッハーはにやりと笑い十字架を地面に叩きつけた。十字架が二つに分かれ中から細身のナイフが飛び出す。ロッハーは指の間で挟み込むように掴むと、振りかぶり投げた。

 カテラは投げられたナイフを冷静に左手の電磁砲のグリップで弾き落とし右手の電磁砲の引き金を引いた。

 ガチリと歯車がかみ合う音と共に銃口から雷光がほとばしり一線の光がロッハーに向かっていく。

「無駄」ロッハーはつぶやき、幾本ものナイフを空中に放り投げた。ナイフは重力に逆らうように空中に停滞している。

 電磁砲の雷撃がナイフに反射して飛散し威力を大幅に弱め、ロッハーに命中したが服を少し焦がした程度だった。

 それでもカテラは続けて何発も撃ち続けている。それも全て反射しているにもかかわらず。

「無駄だと言った!」

 ロッハーは空中に停滞したナイフを何本かつかむとカテラに投げつけ、それと同時に走りだした。

 カテラは右側に回避したが、目の前にはロッハーが迫っていた。

「終わりだ!」ロッハーはカテラにナイフを突き刺そうとした。カテラは体をひねり回避すると、無防備な腕に電磁砲を撃ちこんだ。ロッハーは痛がるそぶりも見せず、カテラの

 腕を掴みひねりあげた。カテラは脱出しようとしたが、首を掴まれて持ち上げられてしまった。

「ぐはっ…」

 ロッハーの足や腹を蹴ったが、一向に手を放す気配はない。

 首を絞められ、銃を落としてしまった。それでもカテラはロッハーを睨みつけていた。

「カテラ、こう見るとお前は白兎に似てきたなぁ。強がるところがそっくりだよ」

 ロッハーは嫌な笑みを浮かべながらカテラを舐めまわすように見つめた。

「黙れ。私と師匠は家族じゃない、師弟だ。それと、まだ、お前の勝ちじゃない!」

 ロッハーの後ろから引き金を引く音がゆっくりと聞こえた。ロッハーが振り返ると、地面に無造作に置かれた大砲の砲口がこっちに顔を向けていた。体が反応し、射線から逃げようとした時、足に違和感を感じた。徐々に広がる痛みに下を向くと、自分のナイフが深く足に刺さっている。

「カテラ、お前…こんな!」

「私の名前を呼ぶな、変態」背中に強い衝撃と痛みが走りまわりロッハーは前のめりに撃ち飛ばされた。つられて首に力を込めていた指が外れた。

 カテラは体が完全に落下する前に指を外し、ロッハーの無駄に大きい体を発射台のように見立て、胴体を両足で蹴り飛ばした。ロッハーは背中から黒い煙を出しながら、地面にころがっていく。カテラは膝をつきせき込みながらも、電磁砲を拾い上げ体勢を整えた。

 目を上げた時、転がったはずのロッハーの姿がなかった。

 カテラは咄嗟に前転する様に飛び出した。自分が今までいた場所にロッハーの黒い拳が叩きつけられていた。硬いはずの地面が陥没している。

 カテラは電磁砲を撃ちだすが、ロッハーはそれをものともせず濁流の様に向かってくる。

「くそ、もうスイッチが入ったか!」

 カテラは突進を回避しながらゆっくりと大砲のある方に向かっていく。

 ロッハーに先ほどの様な知能は無くなったように突進と無作為な攻撃を繰り返している。

 アレはロッハーの体の中の極細のナノマシンが莫大な痛みと引き換えに強制的に細胞を働かせ傷を治している状態。通称「狂戦士」これが不死身のロッハーの秘密だった。代わりに精神を稀薄を著しく奪い、人格の傾きを痛みのみに昇華させる。戦争の為だけの技術。旧文明の技術。そして教会の禁じられた業。

 師匠と同じ魔獣処理屋で傭兵教会の技術者の一人だった男。師匠とコートの男の相棒だった男。今は反逆者、死を齎す悪魔。それが彼の全て。変わってしまった全て。私が知る彼はもういない。


「ロッハー!」カテラは叫び注意を引いた。大砲を構えてロッハーを待つ。もう終わりにするここで、この場所で。ロッハーは荒々しく呼吸をすると振り向いた。その目には涙がたまっている。

「ガァァァギャヤアアア」腕を振りかぶり深く重くこちらに向かってきた。

 大砲に紋章が表示され言葉を紡ぎだす

 ≪砲弾全装填 全発射≫

 発射までの時間の方が僅かな差で長く、その前にロッハーが着いてしまう。目の前まで迫ったとき、ロッハーの体が止まった。時間が停止した様な空間の中で、ロッハーは動きを止めたのだ。

「白兎の餓鬼か、いつの、まにか、強く、なったな」

 ロッハーはカテラの頭をなでた。

 直後、大砲から砲弾が発射されロッハーの体はまばゆい閃光に包まれた。



 ナズナの記憶が情報と思考を教えてくれる。アレは七十七式ガイノイドの改造型。見えている牙の様な物は軍用のナイフを転用したものだろう。獣じみた挙動は過去の遺物データから再生したか、ロッハーがあのガイノイドを書き換えたかどちらかだろう。

 カテラの方ニライとクラウトが張った電磁膜のおかげで何が起こってるのか分からないが大丈夫だと思う。

 ガイノイドがよだれを、潤滑液を垂らしながら徐々に迫ってくる。

 スズシロの記憶がもたらした経験はセリに冷静さを与え、ゆっくりとガイノイドの動きを追っていた。恐怖は確かにあったがあのガイノイドと初めて対峙した時ほどじゃなかった。

 あの時はただ逃げるしかなかったけど今は違う、今なら戦える勇気も覚悟もあった。

「オォォオオオ!」

 シーラは吼えセリに向かって爪を振り下ろした。セリは右に体を引くようにして何とかかわしたが、爪が地面に跳ね返りを付けるように、今度は水平に薙ぎてきた。

「かわせないなら!」

 セリは剣を振るい迫りくる腕を切り払った。剣は深々と腕に刺さり、バターでも切る様に滑らかに切り落とした。青い血が噴き出しシーラはすぐさま後ろに下がり喉を鳴らしている。辺りに点々とシミが広がっていた。

「すごい切れ味だ…」

 町の中でヴェイスが見せた時の様に通常時は板どころか葉も切れないような代物がまさかここまでの物だとはセリは思ってはいなかった。よく見ると剣が薄く発光し湯気が出て発熱している事が分かる。これが稼働剣と呼ばれる旧文明の兵器なのだろうか。

 喉を鳴らしていたシーラはセリを睨みつけると三本の足で器用に走り跳び上がり壁を蹴り上がりだした。

「壁も走れるの?」

 セリは剣を持ち直し、左手で逆手に構えなおす。稼働剣は唸り音を上げカタカタと震えだした。

 シーラは空間の天井まで駆け上がると一気に急降下してセリめがけ口を大きく開け飛びかかってきた。セリの、スズシロの記憶は一瞬で判断を終え、体をひねる様にシーラの一撃を回避すると、飛びかかる体勢の延びきった足を下から救いあげるように切り裂いた。

 後少しで当たるという所でシーラが勘づき、足の指を掠めただけだった。

 セリは瞬時に剣を手放し右手でつかむと一気に降り下ろした。剣はシーラの胴体の駆動部分に深々と突き刺さり、シーラは唸り声をあげて地面に突っ伏した。

 声が聞こえる。シーラが何か喋っているようだった。

「…ころ…して…」

 その瞬間、不意に目の前が暗転し、気づくと自分は剣を振り上げているところだった。

「終わりだ…これで…?」降り下ろそうとしたところでクラウトに止められた。妙な違和感で体が支配されている。

「セリ、もういいやめろっ!そいつはもう動かない!」

「マスター!正気に戻ってください!」ニライにも言われセリは剣をゆっくりと下ろし下を見た。人型だったものが其処に転がっていた。バラバラになって。何がどのパーツか分からないほど血にまみれている。自分の手を眺めると返り血で濡れていた。


「なんで、こんなことに…僕は何をした?」セリは茫然とその光景を見た後、強烈な頭痛と吐き気に襲われ、血溜まりに倒れ込んだ。


 走馬灯の様なものをセリは見ていた。前に見たココノエとレーヴェと言う人達と何かを研究している場面。一人の少女と話している場面。そして誰かに撃たれ、意識を失う場面。

 そしてカテラと初めて会った場面。セリはその記憶の螺旋をただ下に流れていくような感覚のまま漂っていた。その時、一筋の光が冷たく濁った水の中を漂うセリの腕に巻きつき、上へと引っ張った。上に上がる連れ水が透き通っていくのが分かった。意識が徐々に覚醒していく。声が聞こえる、自分の中から懐かしい声が。

「起きろセリ、こんなところで止まっていいわけがない。お前は行かなきゃいけないんだ」

 光に一気に引っ張られ、渦巻く光の輪の中へ吸い込まれた。

 ぼやけた景色が映る。顔に血が張り付いているのが分かった。

「マスター!起きられたんですか!?クラウトさん!」

「成功したかよかった…無事だなセリ、どこもいたむところはないか?」

「クラウトさん?ニライか?」起き上ったセリの目に消えかけたクラウトの姿が映った。

「悪いが強制的に再生人殻に再起動をかけさせてもらった。もう少しセリの覚醒が遅かったら、俺も引っ張られて消えるところだったがな」徐々にだがクラウトの姿は元に戻っているようだった。

「カテラはどうなったんですか!?」

「分からん。戦いが終わったかもわからんからな」

 その時、大きな爆発音が聞こえ、壁の一部が吹き飛んだ。その先にカテラが大砲を構え立っていた。

「カテラ!よかった無事だったんだ」

「セリ…大丈夫だった?」

「ロッハーは?」

「倒したよ。もうこの場所にはいない。落ちて行ったんだ。この場所から下へ」

「シーラは、アレ?」シーラの死体が消えていた。血も残ってない。

 まるで何者かが空間から削除したかのように、だ。



 アナウンスが聞こえてきた。

「間もなく第二層エリアです。本日はご乗車ありがとうございました。またのご利用を―」

 空間が止まり、白い壁が消えかかっている。

「さあ行こう。セリ」カテラがほほ笑みセリの手を取った。

 その時ニライがふと何かつぶやいたのをセリは聞いていた。


「ようこそ、新世界へ。人類の再生の地へ」と。

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