第10話 勇者候補

「貴様……何者……だ」


目の前の蒸尾服を着ており、今まで何者かと話していた丁寧な口調から、執事のような雰囲気を出していた。


「俺の……名前……か。そうだな、でもこの世界でも通ってる名は、ジーク・ラタニア。ジークと呼んでくれ」


今の状況を探る。現在、俺は執事と思われる魔王軍幹部と対面している。スキル、メテオ・ストライクを放ち、不意打ちをしかけたが指で抑えられてしまった。どうやら、『メテオ・ストライク!』と言いながら攻撃したことが、不意打ちの意味を成さなかったらしい。


「なかなかよい不意打ちですね。だが、わざわざスキル名を言ってくださるとは。そのおかげで防げたというのもあります。じゃ、次は私から参りましょうか。シャドウ・パンチ」


「グアッ!?」


勇者とは思い難い声を発してしまい、思わず左膝を地面につき、倒れてしまう。剣はまだ、執事の指の間。


勇者スキルである能力透視を発動させる。えっと……。魔王軍幹部クリス。レベルは……なっ!?92……だと!?ありえない……。俺たち人間の辿り着けていないところにいる……だと!?魔力量も限りなく膨大だ。まるで、無限にあるかのようだった。体力も、これが、レベル92の体力と思わされる程に膨大だった。



「あんた、めっちゃ強いじゃ……ねぇか。ハァハァ。良くもまあ、こんな平凡な地に来たものだ」


シャドウ・パンチ。それは、見たところクリスの影から出現した特殊な黒い腕による腹パンだった。高級な金属を扱う装備の筈なのに、いとも簡単に特大ダメージを負わされた。あれをあと2発喰らわないうちに殺られるだろう。


「ククク。こんな、平凡な地だからこそである!ここにいるなんて、来て抹殺するしかないでしょう!」


「二人!?俺以外にも、いるのか……」


「ええ、いますとも。まあ、あなたはここで死んでいただきますがね。シャドウ・パンチ!」


剣を指に挟まれ、膝を地面につき、動くことを許されない状態だった。そこに、自分の影から背中へシャドウ・パンチが繰り出された。


「うあああああああ!!!」


俺はまたもや、悲鳴をあげる。もう、体力は残りわずかだ。回復系は、スキルのヒールしか持っていない。


「あ、安心してくださぁい。ここの私たちのいる屋根ですが、スキルである硬化を使用しているので、コンクリートとやらよりも堅いぞ。壊れることは滅多にないとも」


「そう……か。てめぇ、人の頭を踏んずけながら言うことじゃないだろ……」


クリスの足に自分の頭を踏まれ、ついに耐えきれなかった。しかし、頭を踏みつけられながらも、気合いを入れ、剣を思いっきり握り、渾身のメテオ・ストライクをお見舞いする。


「き、貴様……私の腕があああああ」


やつの挟んでいる指のある腕を一刀両断したのだ。これで、クリスも距離をとったので、すかさず立ち直り、剣を構え直してヒールをかけて回復する。


「よくも、私を傷付けてくれましたね……。その行為、重いこととしれ!」


彼は、形相を変え、おぞましい顔になった。そして、魔法を唱えた。彼の唱えた魔法はおそらく、召喚魔法。紫色の無数の……。約20個の魔法陣から、まるで影そのもののような形をした、シャドウ・マンとやらが出現した。


「ククク……。これで、私の勝利は確実なものとなったぁ!」



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