第7話 暴走の秘密①
「
何者かによる魔法により、俺の剣に光が注がれる。無数の光の粒はやがて、剣へ浸透し、暴走していたパーソナル・オブ・ファイヤというスキルが止まった。形状変化もなにもなかったかのように元に戻る。
「ふぅ〜。ギリギリってところかな?そこのサナさんは、まだ残り1で耐えてるみたいね」
スキルの暴走を止めてくれた者が誰なのか、すぐにわかった。シーナさんである。どうして暴走を止められたのかはまだわからないが。それよりも、サナさんが心配だ。
「シーナさん……ありがとう。それより、サナ!サナさんしっかりしてくれ!」
剣を投げ出し、心配に休戦を命じようとした。しかし、「この決闘はお前の勝利である。なにも、止める以前に終わっているのだよ」と言ってきた。まあ、そうなるか……。
「んっ……。くっ」
サナの元へと駆け足で駆けつける。サナはゆっくりと両腕を使い、立ち上がろうとする。そこへ肩を貸す。
「サ、サナ……。申し訳ございません。俺のスキルが、暴走したみたいで……」
「はぁはぁ。私……なんかより、あん……たの方が、心配……なんだ……け……ど?」
「はい?」
頭の上に?が付く。なぜ、俺の方が心配なのか。疑問だ。
「私の方は……。HPが、減っているだけ……だからね。あんたは、はぁ……。魔力……。つまり、MPが、残りわずか……なんじゃ、なくて?」
「あ、……」
俺は言われてから気づかなかった。そうだ、この世界の人達の行動力は全て体力ではなく、魔力で行動しているということを。
それはどういうことかというと、簡単な話である。俺の元の世界の日本では、体力を消費して活動を行う。しかし、この世界ラグナロクの人達には魔力というものが存在する。
体力はたかが寿命にすぎなくて、魔力が活動源らしいのだ。俺は噂で聞いたぐらいだからある程度のことまでしかわからないが。
「ね?ま、あなたが……。大丈夫なら問題ないんじゃ……ない?」
「今のところは、活動力には左右されてないよ。でも、スキル等を使うのに魔力は必須だから、完全回復するまで当分は狩りができないなぁ……。残念」
「そんな落ち込むことじゃないでしょ。私、仕方ないから攻撃手段の魔法かスキル覚えておくよ。両方でもいいけどね。フミヤが休んでる間に狩っとくから」
「すまない、シーナさん。変態……?みたいなことを初見の時に言って申し訳なかったよ」
「そのことは気にしてないから。演技だし」
なぜ別行動で狩りをしようとするかといえば、この世界では、各街にある冒険者の館にて、パーティーやギルドの登録をすれば、その登録時のパーティーメンバー全員に一人が狩りをした分だけ経験値が取得できる仕組みなのだ。ギルドの場合は違うらしいが。
「そういや、あなたたちの名前、聞いてなかった。回復してくれる?そこの治癒師さん」
「いいわよ?エストレーモ・レクーペロ。そして、私の名前はガルフォス・シーナよ」
「俺の名前はフミヤだ」
「ん?あなた、貴族の人じゃないのに冒険者やってるんだ……。規則違反になるよ?まあ、バレなきゃいいと思うけど。あ、回復ありがとう。私が使うのと同じ魔法なのに回復力が全然違うね……。やっぱり、職の違いでかな?」
「多分そうだと思うよ。職によって、その強さというのが変わってくるからね」
「それより、そろそろコロシアムから出ませんか……。決闘も終わったことだし」
会話が止まらないので、俺は真剣な表情で彼女たちに伝える。
「そうか、私、負けちゃったんだ」
世界最強の女剣士は、空を見上げながら涙を流す。
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