第5話 決闘(デュエル)

初めての決闘デュエルだ。この世界にも、ゲームのような決闘ができるなんて思ってもみなかった。この世界の決闘のルールはいくつかあるようで、その中から彼女が選んだのは【1体1のマンツーマン戦】だ。


マンツーマンというのは元の世界(日本)では、結構馴染みある言葉だろう。1体1で戦うことを意味する。他にも、グループ戦やギルド戦争といったものがある。


グループ戦というのは、リーダーが自分で好きな冒険者を決定した条件のもと、何人かを集めて闘わせるといった決闘だ。グループ戦は主にランキングバトルで使われるらしい。


ギルド戦争というのは、結成されているギルド同士でやり合う決闘だ。ギルド対ギルドの大型戦争になる。これをやる理由には、相手のギルドの支配権奪還や財産奪還等を目的とする事が多いらしい。


「準備は大丈夫か?」


なぜかこの街に偶然設備されていた、コロシアムでの決闘となった。コロシアムには様々な装備があり、どの装備も一級品、二級品の物ばかりだ。それらはランクを付けると低い方を意味するのだが。始まりの街だから仕方ないのかもな。


「ああ、いつでもいいぜ」


俺の選んだ装備は、全部銀で作られた銀の剣と、防御力は少なくなるが動きを軽くするために、赤の羽衣を腹部に。そしてコテやらブーツではなくスニーカー的なのがあったため、それを履く。


対する彼女は少し重装備だった。武器はレイピアで、重そうな鎧とコテ、ブーツだ。頭にはなにも装備しておらず、盾も装備していない。俺も頭にはなにも装備していないが、皮の盾を装備している。鎧がない分防御力の補填をするためだ。


俺とサナはコロシアムに入場する。途端、観客席から大きな声援が轟く。この街は小規模なため、そんなに人いないと思っていたのだが、結構観客席が埋まっていた。他地方から来た者たちもいるのだろう。


中央で2人距離を離れて見つめ合う。決闘の審判がその間に入り、コールを始める。


「決闘を始めます。よろしいですね?」


観客席からの声量がだんだん小さくなってくる。集中しているために、聴き取りづらくなってきているのだ。


「はい」


「もちろんよ」


返答をする。そして、決闘開始のホイッスルが鳴る。


「では、初め!」


審判が両手を上げ、その場から離れるのを確認した俺とサナは一気に距離を詰めて互いに剣のぶつけあいを開始する。


「くっ……。なかなか簡単にHPを減らさせてくれないか」


「あったりまえでしょ」


俺の一撃を簡単に弾き返されてしまう。弾き返したあと、すぐにレイピアによる高速連続攻撃が来るためこちらが攻撃に出れる隙がないのだ。


彼女は重装備のはずなのに攻撃速度がとてつもなく早い。がなかったら、一瞬で倒されていたことだろう。


「ぐぬぅ。こっちもまだまだいけるぜ?」


歯を食いしばるも、こちらも負けずと剣をレイピアの先に走らせて受け流し、この決闘初のスキルを発動させる。


「【パーソナル・オブ・ファイヤ混沌の炎】」


漆黒に包まれた炎へと剣が変形し、レイピア使いのサナの顔に襲いかかる。


「剣が炎に変形するなんて聞いてないわよ!?危な、暑!」


それも無理もないだろう。勇者スキルによるによって剣をスキルに変形させてるんだから。


それに、暑いどころの話じゃないはずだ。高温の一撃が直撃したんだから。


「グハッ!なんとか言いなさいよ……!まずい、私のHPが……。こうなったらぁ!【エストレーモ・レクーペロ】究極回復!からの、【コンジェラツィオーネ・インフェルノ】氷結地獄!」


彼女は魔法を惜しみなく駆使する。体力を回復させたあと、氷をあちらこちらに展開する。俺は危うく氷に包まれそうになったため、回避する。形状変化させていた剣も元に戻る。


「レベルたった56のくせに、やるじゃない」


俺はレベル11だったが、魔王軍幹部を倒したことにより、56まで大幅に上がったのだ。もちろん、ステータスやスキルも同様に強くなった。対する彼女のレベルやステータスは。


「サナのレベルは71、ステータスも1000を軽く超えている。なかなかだな。俺も負けを認めるしかないかもな」


氷の展開により、まるで南極にいるような寒さに覆われた会場だが、シーナの支援魔法により観客は寒さに気づいていないみたいだ。観客から決闘者への支援は禁じられているため、自分でなんとかしなければならない。


「こうなることも踏まえて、状態異常耐性のある装備を選んでおいて正解だったわ」


「へぇ。動きを軽くするためでは、なかったのね」


「いえす」


彼女との決闘はまだまだ続く。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る