第3話 魔王軍幹部ガルダゴ

俺たちが酒場から出た時には、すでに死者が少数出ていた。


敵の正体は黒く染まった漆黒で紫色のオーラを放っている斧を携え、豚の鼻そのものに見える鼻をしていて腕が太く、あの斧を振るのに適しているといえよう。


そしてなにより特徴的なのが、めちゃくちゃ太った体と角である。彼を見る限り、恐らくオークだと推定する。


「なんだよみんな、オークごときに死者を出して。オークとかくそ雑魚モンじゃねぇかよ。余裕じゃね?ちょっくら、通常攻撃してきますわ」


俺はオークに向かって走る。腰に帯びていた鞘から剣を引き抜き、(この剣は兵士の剣といって、とても安く手に入れられる初心者向け武器と女神は言っていた)きりつけようとする。


「ば、ばか!!オークが雑魚って誰が決めたのよ!オークはとてつもなく凶暴で、魔王軍の最高戦力の一角で、その中からもっとも強いオークが幹部に選ばれたりするのよ!?なに勝手に突っ込んでんのよ!!【ディフェーザ・ポジツィオーネ】防御力上昇魔法


シーナが何語かよくわからない単語を唱えた。すると、シーナの周りを青色のオーラが覆い、それの発生源はシーナの足元にある魔法陣のようだ。そのあと、俺の体に青色の暖かい光が纏わりつく。


「ありがとう、シーナ!」


現場の状況的に防御を上げる魔法だと判断する。気合いの一閃をオークに切りつけた。しかし、さすがは上位の種族だけあって、生半可な剣ではビクともせず、弾かれる金属音だけが鳴り響いた。


「雑魚めが。ひよっこ剣士の柔らかすぎる攻撃なんぞ、効くはずがなかろう。次は俺の番だなぁ?【デス・ボール】」


奴の斧の先端部分から、黒色の丸い球体が数個出現した。それらは、クルクル回って俺に向かってきた。


「くっ」と、歯ぎしりをする。ボール1個1個が俺の胴体に重い一撃を食らわしてくる。ただでさえ、レベル11という低いレベルとそれに合わせて低いHPなのに、グングン下げられる。


高レベル治癒師であるはずのシーナの支援魔法が、まるで意味をなさないような感覚だった。


「痛すぎる……」


小声で苦痛を表現する。奴のスキルであろう、デス・ボールはとても重かった。始まりの街にこんなにえぐい敵が来るとか、ゲームの常識を超越している。いや、違う。


「そうだ。ここは……、ゲームの世界ではない」


「ゲ……厶?なんじゃそりゃ」


奴には聞き取れない単語らしい。まあ、ちゃんと聞かれてなければそれでいい。ここは、現実。そう、今の俺にとっての現実であり、救わなければいけない世界。


奴のステータスを、【ステ看破】のスキルで見破った。レベル86でかなり高レベルだ。とても、適いそうな相手じゃない。そりゃ、死者がでるわけだ。でも、耐えれたのはシーナのおかげだ。これを無駄にするわけにはいかない。でも、どうすれば……。どうすればあいつに勝てる?


『……ハンス。エン……ハンスよ』


「エンハン……ス?あっ、」


どこからともなく聞こえた声。そうだ、あるじゃないか。あいつに勝てる最高のスキルが。チート並の力が。先日偶然手に入れた、素晴らしいスキルが。


「何独り言をグチグチ言ってんだァ?さっさと、死ねよ小僧ォォォォ」


奴の斧が振り下ろされるのと、ほぼ同じタイミングで


「【エンハンス・アタック】!!!!」


攻撃力を上昇させるスキルを発動させる。黄色のオーラが全身を覆う。これで、10秒間攻撃力が2倍上昇することになった。だが俺は、奴の斧を交わし、さらに同じスキルを10回ぐらい発動させる。


すると、自身のステータスをみたらわかるが、攻撃力が20倍に膨れ上がっている。これで、86レベのオークの防御力を遥かに上回ったということだ。


「喰らい……やがれぇえええ!!!」


斜め上斬りの通常攻撃を行う。20倍に膨れ上がっているおかげで、オークの体にぶっ刺さった時、先程とは違う感覚、柔らかい感覚だった。


オークの左肩から腹まで斜めに剣で斬る。そして、自身の体を回転させて再び斬り刻む。これを計4回行った。もう、オークは疲れ果てている感じだった。俺の攻撃を避けきれず全て体で受け止め、大量の血を吹き出し、背中から地面に倒れた。


「お……。おで……の。ま……けだ」


オークは静かに力尽きた。そのあと、俺にかかっていたバフが全て消え、俺も疲れ果てて地面に背中から倒れる。HPはまだ残りわずかだが、残っている。すると、観客……ではないが、俺たちより前に応戦していた街の冒険者、そして住人が一斉に歓声をあげる。


拍手する者、どこから持ってきたのかわからないラッパを吹きまくる者、歌を歌う者など、色んな者たちがいた。



このあとどうせ、宴をやらされるんだろうなぁと思いながら疲れ果てた身を休めるため、静かに目を瞑る。



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