第57話 匂われて舐められて

 私は、クラーナとともにベッドの上で寝転がっていた。

 二日酔いの彼女は、私の匂いによって癒されている。一日お風呂に入らず、濃くなった私の匂いを堪能しているのだ。


「はあ、はあ……」


 クラーナは、鼻息を荒くしながら私の匂いを嗅いでいた。

 二日酔いで頭の痛みや気持ちの悪さを感じていたようだが、それも今は忘れられているようである。


「アノン、腕を上げてもらえる?」

「腕を上げる? まさか……」

「ええ……脇の匂いを嗅ぎたくて……」

「なるほど、わかった。いいよ」


 クラーナは、私の脇の匂いを嗅ごうとしてきた。

 彼女は、基本的に私の匂いが強い所を好む。汗をかきやすい脇は、とても匂いの強い場所であるらしい。

 そこの匂いを嗅がれるのは、かなり恥ずかしいことだ。慣れているとはいえ、未だに少し抵抗はある。

 だが、それでも、私はクラーナの喜ぶ顔が見たい。体調の悪い今なら、猶更そう思うのである。


「すー」

「うっ……」


 クラーナは、私の脇に鼻をつけて大きく息を吸い込んだ。

 それが少しくすぐったい。


「……クゥン」

「クラーナ? どうかしたの?」

「え? その……少し舐めたくなって」

「舐めたい……服を脱いでほしいということ?」

「あ、別に大丈夫よ。思っただけだから……」


 そこで、クラーナはそんなことを言ってきた。

 彼女は匂うのも好きだが、舐めるのも好きである。匂っていて、舐めたくなったのだろう。


「仕方ないなあ……」

「あ、アノン……」


 私は、ゆっくりと服を脱いでいく。

 朝から少し恥ずかしいが、クラーナの願いを叶えてあげたいのだ。


「はい、それじゃあ、どうぞ」

「アノン……ありがとう」


 クラーナは、私にお礼を言ってから、脇に近づいてきた。

 彼女の息が当たってきて、くすぐったい。服がなくなった分、それは先程よりも増している。


「ペロ……」

「ん……」


 クラーナの舌が、私の脇をなぞっていく。

 これは、息よりもくすぐったい。恥ずかしさもあって、なんだかすごい気分だ。


「美味しいわ……」

「そ、そう……」

「ペロ……」

「あうっ……」


 クラーナは、私の脇をさらに舐めていく。

 なんというか、もう彼女は体調が悪いことなど忘れているのではないだろうか。とても乗っているし、笑顔も見える。

 それは、とてもいいことだ。彼女が元気になったなら、私も一肌脱いだ甲斐がある。


「反対側も」

「あ、うん……」


 クラーナは、反対側の脇を要求してきた。

 どちらも舐めたいようである。

 こうして、私はしばらくクラーナに舐められるのだった。

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