第45話 ギルドで会ったのは
私とクラーナは、依頼を終えて、冒険者ギルドに戻って来ていた。
依頼をしている最中は、ラノアがいない寂しさを紛らわせた。依頼には、ラノアはついて来ないから、そうできたのだろう。
だが、家に帰れば、また寂しくなるはずだ。これから三日間、中々辛いかもしれない。
「お、アノンにクラーナじゃないか」
「あ、リュウカさん」
「リュウカ? 久し振りね」
「うん? 二人とも元気がないな? 何かあったのか?」
そんな私達は、リュウカさんと再会していた。
彼女は、すぐに私達の変化を見抜いてきた。とても、鋭い洞察力である。
いや、鋭くなくても、今の私達ならわかるかもしれない。結構、露骨に落ち込んでいると思うからだ。
「実は、ラノアが友達の家に泊っていて……」
「ラノア? ああ、お前達の娘さんだよな? そうか。確かに、それは寂しいかもな……」
私が事情を説明すると、リュウカさんはすぐに納得してくれた。
そういえば、リュウカさんとラノアはまだ会ったことがなかった。色々と噛み合わず、未だに会っていないのである。
今度、そういう機会を設けた方がいいかもしれない。リュウカさん達ならラノアに良くしてくれるだろうし、会わせておいた方が色々と話がしやすくなるだろう。
「そういうことなら、お前達にいいものをあげよう」
「いいもの?」
「これだ」
そこで、リュウカさんは手に持っていた瓶を差し出してきた。
差し出された瓶の中には、液体が入っている。ラベルなどから考えて、それはとある飲み物だろう。
「これは、お酒ですか?」
「ああ、酒だ。二人とも、もう飲める年齢だろう?」
「そうね……でも、私達飲んだことがないわ」
「そうだったのか? まあ、ものは試しだ。寂しさを紛らわすためにも、一杯飲んでみればいんじゃないか?」
私もクラーナも、お酒を飲める年齢ではある。
だが、まだ一滴も飲んだことがなかったのだ。
別に、そこまで興味がなかったため、積極的に飲みたいとは思っていなかった。だが、せっかくの機会なので、飲んでみるのもいいかもしれない。
ラノアがいないという状況は、お酒を飲むのに打ってつけだろう。私達がどうなるかわからないため、その方が安全なのである。
「ありがとうございます、リュウカさん」
「ええ、二人で試してみるわ」
「おう。無理はするんじゃないぞ? 一口飲んで嫌だったら、別に捨ててもいいからな」
それだけ言って、リュウカさんは去って行った。
私達のために、お酒を譲ってくれる彼女は、本当にいい人である。
こうして、私とクラーナは家でお酒を飲むことに決めたのだった。
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