第44話 しばしの別れでも
ラノアは、私とクラーナに向き合った。
彼女から、お別れの挨拶があるのだ。
三日間ではあるが、今までのことを考えれば、それは長い長いお別れである。
だから、私達は三人とも少しだけ寂しいと思っているのだ。
「ラノア、元気でね」
「レクリアやレフィリーナに迷惑をかけたら駄目よ」
「うん、わかってる。元気に、迷惑をかけないように頑張るよ」
だが、お別れの挨拶は笑顔ですることができた。
長い別れではあるが、すぐにまた会える。それがわかっているから、笑顔でいられるのだろう。
「レクリアさん、ラノアのことをよろしくお願いします」
「迷惑をかけることになって、申し訳ないわ」
「いや、大丈夫さ。そもそも、家のわがまま娘が言い出したことだからな……まあ、私も注意しておくから、安心しといてくれ」
「はい……わかりました」
「ありがとう、レクリア」
私とクラーナは、レクリアさんに挨拶した。
少ししか接していないが、彼女はとても頼れる人である。
そんな彼女が安心していいと言ってくれることは、心情的にとても心強い。
最も、それでも不安を完全に拭い去ることはできない。私もクラーナも、とても過保護であるようだ。
「お母様、私がわがままなんて……」
「わがままじゃないのか?」
「それは……今回は、確かに、多少わがままだったかもしれませんが……」
レフィリーナちゃんは、レクリアさんの言葉に反論しようとしたが、その語気はとても弱かった。
要するに、今回のお泊り会は結構わがままなものだったのだろう。それ程までに、ラノアと一緒にいたいと思ってくれたことは、私達にとっては嬉しいことである。
「さて、それじゃあ、行くとしようか」
「ええ、ラノア、行きますわよ」
「それじゃあ、二人とも、行ってきます!」
「行ってらっしゃい」
「気をつけてね」
レクリアさんの言葉で、三人は馬車に乗り込んだ。
戸が閉まった後、馬車はゆっくりと進んで行く。
その後ろ姿から、私もクラーナも目を離せない。別れが寂しいから、その背中をずっと見つめてしまうのだ。
やがて、馬車は見えなくなった。それを認識して、私達はゆっくりと見つめ合う。
「……行ってしまったね」
「ええ、なんだか、とても寂しいわ」
「家の中に戻ったら、もっと寂しいんだろうね……」
「そうね……」
私とクラーナは、少し苦笑いをした。
思っていた以上に、ラノアがいなくなったという事実は心に来ている。恐らく、一人で向こうに行っているラノアより、私達の方が不安なのではないだろうか。
そう思う程、私達は寂しさや心配を感じているのだった。
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