第12話 その選択は
私とクラーナは、ラノアちゃんを連れて、犬の獣人達の隠れ里を訪れていた。
ラノアちゃんのことを話すため、私達は長老の元に来ていた。
「つまり、その子がここの住人になりたいということか……」
「はい、そうなんです」
「ふむ」
私達の説明に、長老はゆっくりと頷く。
長老は、それ程驚いていないように見える。
恐らく、この隠れ里では、ラノアちゃんのような子はそれほど珍しいことではないのだろう。
「よく保護してくれたのう。わしからも、感謝しておこう」
「い、いえ……」
長老は、私達に頭を下げてきた。
その態度に、私は思わず困惑してしまう。
「まあ、この里にはそういう者達が集まってくるから、特に問題はないじゃろう。ただ、子供ということを考慮して、引き取ってくれる者を探さねばならんな……」
「あ、そうですね……」
「まあ、それまではわしの所で引き取っておけばよい。大抵は、そういうことになっておるからな……」
どうやら、ラノアちゃんは引き取ってもらえる人が見つかるまで、長老の家で暮らすことになるらしい。
中々、腰を落ち着かせることができなそうだが、これも仕方ないだろう。
引き取ってくれる人が見つかれば、きっとラノアちゃんも幸せになれるはずだ。
「あの……」
「む?」
そこで、ラノアちゃんがゆっくりと手を挙げた。
何か言いたいことでもあるのだろうか。
私達の視線が、一斉にラノアちゃんに集中する。
「ラノアちゃん、どうしたの?」
「わ、私……」
ラノアちゃんは、少し震えていた。
少し言い辛いことなのだろうか。
「二人と……一緒にいたら、駄目?」
「え?」
「迷惑なのはわかっているけど、私……アノンとクラーナと一緒にいたい」
「ラノア……」
ラノアちゃんの言葉に、私とクラーナは驚いた。
まさか、そんなことを言われるとは、思っていなかった。
だが、それは私達にとっても、言って欲しかったことなのかもしれない。
「駄目かな……?」
「駄目な訳……ないよ」
「ええ、大丈夫よ、ラノア」
私とクラーナは、両側からラノアちゃんを抱きしめた。
私達も、ラノアちゃんと一緒に暮らしたいと思っていた。心の中では、そう思っていたのだ。
「二人とも、ありがとう……大好き」
そんな私達に、ラノアちゃんがそう呟いてくれた。
その言葉に、私達も笑顔になる。
「ふむ……よくわからないが、話が纏まったようじゃな」
「あ、長老、すみません。色々と言いましが……」
「構わんさ。その決断が、その子にとって、一番いい決断なら、それを尊重するべきじゃろう」
長老も、ラノアちゃんの気持ちを尊重してくれるようだ。
押しかけてきて、このような結果になってしまって、長老には迷惑ばかりかけてしまった。非情に申し訳ない気持ちで、いっぱいである。
こうして、私達はラノアちゃんと別れないことを選択するのだった。
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