第11話 隠れ里へと

 私とクラーナは、依頼を終えて、サトラさんの元を訪れていた。

 今日も、ラノアちゃんを預かってもらっているのだ。


「あっ! アノン! クラーナ!」

「あれ? 今日は結構早いお帰りだね」


 私達の姿が見えたことで、ラノアちゃんをサトラさんが反応した。

 ラノアちゃんは喜んでいるが、サトラさんは不思議に思っているらしい。

 サトラさんが、そう思うのも当然だ。私達は、いつもより早く帰って来ている。それは、あることに気づいたからだ。


「ラノアちゃん、ただいま」

「ただいま」

「お帰り、二人とも!」


 ラノアちゃんは、明るく迎えてくれる。

 だが、私達はそんな彼女にあることを伝えなければならない。


「ラノアちゃん、実はね……」

「うん?」

「犬の獣人の隠れ里が、見つかったのよ」

「え?」


 それは、隠れ里が見つかったということだ。

 ラノアちゃんの当初の目的は、隠れ里に行くことである。そこで、新しい暮らしを送るためにあの森まで来ていたのだ。


「うん……」


 ラノアちゃんは、その報告を聞いて、少し元気がなくなった。

 それもそのはずだ。隠れ里が現れたということは、私達の別れを意味している。そのため、喜ぶことなどできないのだ。

 私達も、正直全然喜べなかった。ラノアちゃんは、私達にとってそのような存在になっていたのだ。


「行こうか……」

「うん……」


 しかし、私達はラノアちゃんを隠れ里に連れていかなければならない。

 人間の獣人に対する差別は、未だ根深い。ラノアちゃんには、そんなこちらの世界で暮らすより、平和な隠れ里で暮らして欲しいと思ったのだ。


 こうして、私達は隠れ里に向かうのだった。




◇◇◇




 私達は、犬の獣人達の隠れ里に来ていた。

 森のある茂みを抜けることで、この隠れ里につくことができる。


「さて、今回は誰が出迎えてくれるのかしらね……」

「さあ……」


 ここに来たのは、かなり久し振りだ。

 私達は、最初に迷い込んだ時から数えられる程しか、ここに来ていない。

 だが、一応私やクラーナの存在は、ここの獣人達に知れ渡っている。そのため、人間である私が来ても、それ程騒ぎにはならない。

 しかし、念のためかよくわからないが、武装した誰かが出迎えてくれるのが恒例になっている。


「止まれ!」

「あっ……」

「来たわね……」


 私達が歩いていると、前方から弓を構えた犬の獣人達が現れた。

 相手は、私達を視認すると、ゆっくりと弓を下す。


「やはり、あなた達でしたか……」

「ええ。長老の所に行きたいんだけど、構わないかしら? 犬の獣人の子供を保護したから、話がしたいの」

「はい、どうぞ」


 犬の獣人達は、私達を避けて道を開けてくれた。

 これが、ここに来る時の恒例行事のようになっている。

 少し物騒だが、この里を守るためには仕方ないことだ。


 こうして、私達は長老の元へと向かうのだった。

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