第10話 役割分担?

 私とクラーナは、ラノアちゃんとともに過ごしていた。

 最近は、依頼に行って、ラノアちゃんと過ごしての繰り返しだ。


「ウゥ……」

「クゥ……」


 ラノアちゃんは、クラーナに向けて、喉を鳴らしていた。

 それに対して、クラーナも喉を鳴らす。


「アウッ!」

「ウウッ!」


 次の瞬間、ラノアちゃんはクラーナに飛び掛かっていた。

 それに対して、クラーナは後退する。


「ウウッ!」

「ウウッ!」


 お互いに距離をとりながら、再び睨み合う。

 その様子は、まるで軽い戦いのようである。


 最近、この光景はよく見るものだ。二人は、よくこうしてじゃれ合っている。

 少々危ない気もするが、二人とも楽しそうなので、別に止めるつもりはない。


 だが、その光景に、私の中にはある疑問があった。

 それは、ラノアちゃんがこうしてじゃれ合うのが、クラーナだけだということだ。

 ラノアちゃんは、私にはすごく甘えてくる。それに、軽くじゃれ合うこともある。

 しかし、クラーナとのようなじゃれ合いはしてこない。それが、少し疑問なのだ。


「ねえ? 二人とも、少しいいかな?」

「……何かしら?」

「……どうしたの?」


 私が声をかけると、二人はすぐにこちらに意識を向けてくる。

 このように、二人は私が呼びかけると、すぐに切り替えてくれるのだ。


「ラノアちゃん、クラーナとはこういう風にじゃれ合うけど、私とはしないよね?」

「ああ、それは……」

「うん……」


 私の言葉に、二人は顔を見合わせる。

 どうやら、明確な理由があるようだ。


「ラノアは、相手をわかっているのよ」

「わかっている?」

「獣人は、普通の人間よりも、身体能力が高いでしょう? だから、人間であるアノンではなく、私とこういうことをするのよ」

「へえ……」


 クラーナの説明で、私はなんとなく納得できた。

 つまり、種族差を考慮して、ラノアちゃんは遊び相手を選んでいたのだ。

 そこまで、考えられるなんて、とてもえらい。


「すごいね、ラノアちゃん」

「クゥン……」


 私が撫でてあげると、ラノアちゃんは気持ちよさそうにする。

 すると、それを見ていたクラーナが笑う。


「アノンからは、そういうことの方がいいみたいね」

「あはは、なるほどね」

「クゥン……」


 私の役割は、こうやって褒めて撫でてあげることであるらしい。

 種族の差によって、色々と役割が違うようだ。それは、なんとも不思議なことである。


「それじゃあ、あれはクラーナに任せるね?」

「ええ、任せなさい」


 私が離れると、二人はじゃれ合いを再開する。

 そんな風に、私達は過ごすのだった。

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