第9話 嫉妬をなくすには

 私とクラーナは、ラノアちゃんとともに過ごしていた。


「よしよし……」

「クゥン……」


 ラノアちゃんは、私の膝枕で寝転がっている。

 そんなラノアちゃんの頭やお腹を、私は撫でているのだった。

 非常に和やかな時間だ。だが、一つだけ心配なことがある。


「うっ……」


 それは、クラーナの態度である。

 私が、ラノアちゃんを撫でていると、少し微妙な表情になるのだ。

 恐らく、嫉妬しているのだと思う。同族として、撫でられることへの独占欲があるのだ。


「クラーナ?」

「えっ……?」


 そんなクラーナに、ラノアちゃんが話しかけた。

 ラノアちゃんも、クラーナの微妙な表情に気づいたようだ。


「どうしたの? なんだか、苦しそうだよ?」

「べ、別に、苦しくないわ。気にしないで……」

「……もしかして、私がアノンに撫でられているから?」

「うっ……」


 クラーナは、非常にわかりやすかったため、流石にラノアちゃんもわかったらしい。

 すると、ラノアちゃんの表情が変わる。


「ごめんね……私のせいで……」

「ち、違うわ! 私が少し独占欲を出してしまっただけよ! こういうのはよくないって、わかっていたのに……」


 ラノアちゃんもクラーナも、落ち込んでしまった。

 お互いに、自身に非があると判断して、そう思ったのだろう。

 二人とも、別にお互いのことを嫌っている訳ではない。むしろ、好きだからこそ、そういう風になるのだろう。


「二人とも!」

「わっ!」

「ア、アノン!?」


 そこで、私は二人を引き寄せる。

 ここは、私が何とかしなければいけない場面だ。

 私は、ラノアちゃんを膝に寝かせて、右手で撫でる。

 さらに、隣に座るクラーナの体に左手を回し、その体を撫でていく。


「クゥン……」

「ア、アノン? 急にどうしたの?」

「いや、二人が悲しくならないように、二人同時に撫でることにしたんだ」


 私が出した解決策は、これだった。

 クラーナが、ラノアちゃんに嫉妬しないように、二人同時に撫でればいいのだ。

 少々強引だが、これが一番早いはずである。


「た、確かに、そうかもしれないけど……アノンが、大変なんじゃ……」

「大丈夫、むしろ楽しいし……」

「楽しい……」


 クラーナが大変だと言ったが、そんなことはない。

 むしろ、二人を同時に撫でられて、とてもいい気分だ。


「で、でも……」

「クラーナは……素直に撫でられていいんだよ?」

「あっ……」


 私は、服の中に手を入れて、クラーナのお腹を撫でる。

 ここは、クラーナにとってかなり弱い所だ。そのため、クラーナも気持ちよさそうにする。


「いいよね?」

「え、ええ……」


 結局、クラーナも受け入れてくれた。

 やはり、撫でられると嬉しくなるのだろう。


 こうして、私は二人を撫でて過ごすのだった。

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