第8話 迎えに行って
私とクラーナは、依頼を終えて戻って来ていた。
大方の予想通り、犬の獣人の隠れ里は現れていなかった。やはり、まだあそこにはいけないようだ。
という訳で、私達は普通にサトラさんの元に来ていた。
ラノアちゃんを迎えるためである。
「あっ! アノン! クラーナ!」
「おっ、帰って来たみたいだね」
私とクラーナが、サトラさんのいる農場に行くと、ラノアちゃんが声をあげていた。その隣には、サトラさんもいる。
どうやら、二人とも外にいたようだ。
「ただいま、ラノアちゃん」
「ただいま、いい子にしていた?」
私達は、ラノアちゃんの元に歩いて行く。
すると、ラノアちゃんとサトラさんもこちらに近づいてくる。
「お帰り、二人とも! いい子にしていたよ!」
ラノアちゃんは、そのままの勢いで、私達に抱き着いてきた。
なんだか、とても嬉しそうだ。その表情を見ていると、こちらまで嬉しくなってくる。
私達が帰ってきたことを喜んでくれているという事実も、その感情を大きくした。誰かが待っているというのは、こんなにも嬉しいことなのだろうか。
「ラノアちゃん、畑を手伝ってくれたんだよ」
「そうなんですか?」
サトラさんも近づいてきて、そう言ってくれた。
どうやら、ラノアちゃんは、畑仕事を手伝っていたらしい。それは、えらいことだろう。
「それは偉かったね……」
「えへへ……」
私が頭を撫でると、ラノアちゃんは嬉しそうにする。
撫でられるとそうなるのは、犬の獣人共通のことらしい。
「サトラさん、今日一日ありがとうございました」
「ううん。全然、大丈夫だよ。これからも、依頼に行くときはここに来ればいい」
「それは、ありがたいわね。お願いできるかしら?」
「もちろん。テットアさんも、いいって言っていたしね」
私がお礼を言うと、サトラさんはそう提案してくれる。
それは、とてもありがたいことだった。私達は、生活や隠れ里を探すために、出かけなければならない。その際、ラノアちゃんを見ていてもらえるのは、非常に助かるのだ。
「あ、そうだ。テットアさんから、野菜を預かっているんだ。形が悪くて、売り物にはならないものらしいんだけど、よかったらもらってくれないかって」
「それも、助かるわね。ありがとう、頂けるかしら?」
「うん、もちろん」
しかも、野菜まで貰ってしまった。
サトラさんやテットアさんには、感謝の言葉しか浮かんでこない。
サトラさんは、すぐに野菜を運んできてくれた。
見た目は悪いが、味は変わらないため、非常に助かるものだ。
「それじゃあ、三人とも、気をつけてね」
「サトラさん、色々と本当にありがとうございました」
「あなたのおかげで、本当に助かったわ」
「サトラ、ばいばい」
「ばいばい、ラノアちゃん」
こうして、私達は帰路につくのだった。
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