第116話 発情期の獣人
私が朝起きると、クラーナが隣にいなかった。
不審に思った私が、家の中を探していると、クラーナはお風呂場にいたのだ。
なんでも、発情期がきてしまったらしい。
「でも、クラーナ、ずっと離れているつもりなの? なんだか、それは寂しいよ?」
「うっ……まあ、そうかもしれないわね……」
発情期のため、クラーナは私に近づけないと言っている。
だが、それは無理があるだろう。クラーナと離れているなんて、少なくとも私は嫌だ。
「それに……興奮するなら、それはそれでいいんじゃないかな……」
「え?」
「別に、遠慮しなくても……いいよ?」
それに、興奮してしまうなら、それはそれでいいと思う。
恋人同士だし、それで困ることはないはずだ。
「ほ、本当に……?」
私の言葉に、クラーナは反応した。
それは、期待が込められた声だ。やはり、クラーナも本心では離れたくないと思っているのだろう。
それなら、そんなことをする必要はない。クラーナの全てを、受け入れてあげよう。
「うん、大丈夫だよ。クラーナ、おいで」
「え、ええ……」
私がそう言うと、クラーナがお風呂場の戸を開いていく。
その瞬間、私は驚いてしまう。
「あ、う……」
出てきたクラーナは、よくわからないがとても色っぽく見えた。
それに、少しいやらしい香りもしているような気がする。
発情期だからといって、そんな変化があるのだろうか。なんというか、私まで興奮してきそうだ。
「……言い忘れていたけど、発情期は相手を興奮させる効果もあるの……」
「そ、そうなんだ……」
「もしかして、アノンも?」
「う、うん。だって、今のクラーナ、とってもいやらしい感じだよ?」
「そ、そうなのね……」
どうやら、発情期とは他者興奮させる効果もあるらしい。
だが、考えてみれば、一人で発情しても意味は薄いため、それも当然だ。
「まあ、いいわ。別にいいわよね、認めてくれたんだから……」
「え?」
「んっ……」
「んん!?」
そんなことを考えている内に、私は押し倒され、唇を塞がれていた。
こんな状態で、そんなことをされたら、私も我慢できなくなってしまう。
ここが脱衣所であるからとか、まだ朝だとか、そんなことはどうでもよかった。今は、ただクラーナとしたいという気持ちしかない。
「んん……」
「んあ……」
舌を絡めて、体を触り合い、私達の長い戯れが始まるのだった。
◇◇◇
カーテンの隙間から差す光に、私は目を覚ます。
どうやら、朝であるようだ。
「うっ……」
昨日は、色々と大変だった。
朝から晩まで、ほとんどクラーナとしていた。おかげで、とても疲れている。
ただ、なんだかんだ楽しかったので、別にいいだろう。
今日からは普通なのだから、たまには、ああいう日もいいはずだ。
「うん……あ、おはよう、アノン」
「お、おはよう。クラーナ……?」
そんなことを考えていると、隣のクラーナが声をあげた。
その瞬間、私は違和感に気づく。クラーナの感じが、昨日とほとんど変わっていない。具体的には、興奮してしまいそうになる。
「あの、クラーナ、少し聞いてもいい?」
「何かしら……?」
「発情期って、どれくらい続くの……?」
私は、気づいた。恐らくクラーナは、まだ発情期なのだ。
そもそも、期というくらいなのだから、一日で終わる訳はない。そんなことに気づかないとは、私もどうかしていた。
「……十日間くらいかしら?」
「え、ええっ!」
思っていたより、長い期間だったため、私は驚いてしまう。
つまり、昨日のようなのが、後十日間も続くということだろうか。そんなのでは、体がもたない気がする。
「でも、大丈夫よ。昨日よりは、多分ましだから……」
「そ、そうなの……」
「……多分」
そう言いながら、クラーナは、私に覆いかぶさってきていた。
これで、ましであるというのだろうか。
どうやら、発情期のクラーナとの付き合いは、まだ続くらしい。
本当に、大丈夫だろうか。
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