第115話 とある期間とは?

 カーテンの隙間から差す光に、私は目を覚ます。

 昨日は、色々と大変だった。キーラさんとサトラさんの再会、ティネちゃんの打ち明け。色々とあったのだ。

 しかも、キーラさんとサトラさんが宿に行った後、残ったメンバーで依頼に行ったので、大変な一日だった。


「あれ?」


 そんなことを考えていた私は、あることに気づいた。

 隣に、クラーナがいないのだ。


「クラーナ……」


 私は少し心配になった。

 朝起きて、クラーナが隣にいないのは初めてのことだ。

 トイレとかかもしれないが、何かあったのではないかと不安になってくる。


 私は起き上がって、寝室から出ていく。

 とりあえず、探してみようと思ったからだ。


「あれ?」


 すると、すぐにあることがわかった。

 それは、脱衣所への戸が開いていることだ。もしかして、クラーナはお風呂場にいるのだろうか。

 ただ、朝からお風呂場に行く用とはなんだろう。もし、朝風呂なら、絶対に私を誘うと思うので、これは少し違和感がある。


「まあ、行ってみればいいか……」


 私は、脱衣所に足を進めた。

 脱衣所には、クラーナはいない。ただ、お風呂場から、人の気配がする。


「クラーナ?」

「ア、アノン……」


 私が呼びかけてみると、クラーナが答えてくれた。

 やはり、お風呂場にいたようだ。一体、何をしているのだろう。


「クラーナ、どうしたの? 朝から、お風呂場になんて……」

「そ、その、今日は少しアノンから離れていないと駄目なの……」

「え?」


 私の質問に、クラーナはそう答えてきた。

 その言葉の意味が、私にはよくわからない。私から、離れていないと駄目とは、どういうことだろう。

 クラーナも、本意ではない感じで話しているので、何か事情があるのは確かだ。


「どういうこと……?」

「い、犬の獣人には、ある特別な……期間とでも言えばいいのかしら? そういうものがあるのよ」

「特別な期間?」


 クラーナの言葉は、私の疑問をさらに加速させた。

 特別な期間とは、一体なんなのだろうか。


「その……は、発情期とでもいえばいいのかしら……」

「は、発情期!?」


 そこで放たれた言葉で、私は理解する。

 クラーナは、発情期だったのだ。詳しくはわからないが、私もなんとなくは知っている。

 確か、性的な意味で興奮したりするという感じだったはずだ。


「つまり、クラーナは、今日、私の近くにいると……」

「興奮してしまうのよ……」


 どうやら、クラーナは興奮してしまうため、私の近くにいられないらしい。

 それは、なんというか大変だ。


「最近、もしかしたらとは思っていたんだけど……結構、急に来たのよ」

「そうだったんだ……」


 こうして、クラーナの発情期が始まるのだった。

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