第113話 再会からの……

 リュウカさんのパーティを待っていた私とクラーナの前現れたのは、犬の獣人の隠れ里で出会ったサトラさんだった。

 サトラさんは、昔のパートナーを探しているらしく、私はその人の名前を聞くことになったのだ。その名前に聞き覚えがあった私は、サトラさんをリュウカさんパーティのある人に会わせるのだった。


「サトラなの……?」

「キ、キーラ……!」


 どうやら、サトラさんは、昔のパートナーに再会できたようだ。

 リュウカさんのパーティメンバーの一人キーラさんは、結構なお金持ちらしい。その点も合わせて、サトラさんが探している人だと思ったのである。


「あ、ああ……」


 キーラさんは、ゆっくりとサトラさんに近づいていく。

 二人の顔には、笑顔が見える。久し振りの再会だ。それも当然だろう。


「キーラ、私ね……んっ!?」

「ん……」


 そこで、キーラさんは一気に距離を詰めた。

 そして、サトラさんの唇を奪ったのだ。


「……ええっ!?」


 咄嗟のことであったため、呆気にとられていた私だったが、その行動に大いに驚いた。

 周りの皆も同じだったようで、目を丸くしたりしている。

 あまりにも突然のキス。再会して、一番にこれとはおめでたいことなのだろうか。


「ふう……」

「はっ……キ、キーラ、ちょっと話を……」

「サトラ……」


 あまりのことに後退するサトラさんを、キーラさんは追いかける。

 やがて、サトラさんは壁際に追い込まれてしまう。


「久し振りですわね……」

「あ、うん。それで……んっ」

「ん……」


 キーラさんは、再びサトラさんにキスをした。

 さらに、その体を触り始める。

 なんだか、少しまずそうな雰囲気だ。いや、雰囲気としては別にいいのだろうか。ただ、どちらにせよここで始められるのがまずい。


「キ、キーラさん、サトラさん、とりあえず、落ち着いてください」

「アノンさん……そうですわね。ごめんなさい。ここは、あなた達の家でしたわ」


 私の言葉に、キーラさんは手を止めた。

 そう思ったのも束の間、キーラさんはサトラさんの手を握る。


「サトラ、宿に行きましょう」

「え? 宿? なんで?」

「全部言わせるのは野暮というものですわ」

「い、いや、待って……」


 キーラさんは、サトラさんを宿に連れて行こうとした。

 その意図は、ただ一つだろう。再会から、そうなるまで早すぎると思わなくもないが、キーラさんにそんなことは関係なさそうだ。


「す、少し話をしてからにしよう。ほら、君のパーティも少し引いているよ」

「……確かに、そうかもしれませんわね。皆に事情を説明しないのも、不義理かもしれませんし……」


 サトラさんの言葉で、キーラさんは足を止める。

 色々と興奮しているが、リュウカさん達のことを思い出し、冷静になったようだ。

 これなら、話が始められるだろう。ただ、ティネちゃんの正体を明かすことだけではなくなってしまったが。


 こうして、私達は話を始めることになるのだった。

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