第112話 相次ぐ再会

 私とクラーナは、家で待機していた。

 昨日、リュウカさんと会って、この家を貸してもらいたいと言われたからだ。

 今日ここで、ティネちゃんが、リュウカさん以外のパーティメンバーに自身の秘密を打ち明けるのである。


「大丈夫かな……」

「ええ、きっと大丈夫よ。大丈夫……」


 私もクラーナも、ティネちゃんのことを受け入れてもらえるか、とても心配だった。

 特に、クラーナは同じ犬の獣人として、色々と思っていることだろう。


「あっ……」

「あら……」


 そんな私達の耳に、戸を叩く音が聞こえてきた。

 私とクラーナは、お互いに顔を見合わせた後、玄関に向かう。


「今、開けます」


 私はそう言って、玄関の戸を開ける。


「え?」

「あら……」


 そこで、私とクラーナは驚いた。

 なぜなら、目の前にいる人物は、リュウカさんパーティの誰でもなかったからだ。


「サ……サトラさん!?」

「久し振りだね、二人とも」


 私達の前に現れたのは、犬の獣人の隠れ里で、私達を泊めてくれたサトラさんだった。




◇◇◇




 私とクラーナは、サトラさんと向き合って、座っていた。

 サトラさんは、私達に対して、少し気まずそうな笑顔を向けてくる。


「ごめんね。急に、来ちゃって……」

「あ、いえ、それは構いませんが、どうしてここに?」

「あ、えっと……実は、少し相談したいことがあって……」


 私の質問に、サトラさんはそう答えてくれた。

 相談したいこととは、一体なんだろう。


「こっちに来たのは、その……探しに来たんだ。私のパートナーを……」

「あっ……」


 サトラさんの言葉で、私は全てを理解する。

 サトラさんには、クラーナに対する私のように、人間のパートナーがいたのだ。

 そのパートナーを探すことは、隠れ里から出る前に、クラーナが約束したことでもある。


「約束では、見つけてから来ることになっていたけど、駄目だったんだ。それで、何か手がかりがないかと、来させてもらったんだ。人間側で頼れるのは、ここくらいしかなかったから……」

「それは、別に構わないわ。むしろ、ごめんなさいね。あの約束が、ここに来るのを躊躇わせてしまって……」

「あ、いや、別にそれは、大丈夫」


 その約束では、パートナーを見つけてから、ここに来ることになっていた。

 だが、サトラさん一人の力では、それは困難だったのだ。

 そのため、サトラさんは何も悪くない。私達を頼ってくれることに、問題などあるはずがないのだ。


「それで、サトラさん。そのパートナーさんについて、わかることってあるんですか?」

「あ、それなんだけど、一応、昔住んでいた所には行ったんだ。でも、そこには誰もいなくてね」

「あ、そうなんですね……」

「うん。だから、そこの人達がどこに行ったかがわかれば、大体わかると思うんだ」


 どうやら、サトラさんは、事前にパートナーが元いた家に行っていたらしい。だが、そこには誰もいなかった。それなりに前のことなら、そこから去っていてもおかしくはないだろう。

 問題は、その人達がどこに行ったかだ。


「あ、パートナーさんの名前はなんていうんですか? 素性がわかれば、案外私が知っている人という可能性もあります」

「あ、確かにそうだね。なんで、今までその考えが浮かばなかったんだろう」


 そこで、私は思いついた。

 サトラさんから、パートナーさんの名前を教えてもらい、もしその人を私が知っていたら、とても話は早いのだ。

 可能性としては高くないが、まずそれを確かめるべきだろう。


「キーラという名前で、結構いい家の子なんだけど、知っているかな?」

「え? キーラ? 名家の出身……?」


 サトラさんの言葉に、私は驚いた。

 その名前と素性は、とても聞いたことがあるものだ。

 まさか、そんな偶然があるというのだろうか。


「あら……」

「うん?」


 そんなことを考えていると、戸を叩く音が聞こえてきた。

 恐らく、リュウカさん達が来たのだろう。これは、いいタイミングかもしれない。


「誰か来たみたいだね」

「ええ、元々、今日は客人を待っていたのよ」

「え? そうだったんだ。それなら、私は邪魔になっちゃうか……」

「あ、いえ、サトラさんも来てください」

「え?」


 私は立ち上がり、サトラさんを呼ぶ。

 もう、会ってもらうのが早いだろう。違ったら、それも仕方ない。


 という訳で、私達は三人で玄関に向かう。


「今、開けます」

「おお、頼む頼む」


 玄関まで来て、私はゆっくりと戸を開けた。

 すると、そこにはリュウカさん達が立っている。


「え?」

「は?」


 その瞬間、サトラさんとリュウカさんのパーティの一人が声をあげた。

 どうやら、私の予想は当たっていたらしい。


「キ、キーラ!?」

「サトラ!?」


 こうして、サトラさんとそのパートナーと思える人物が再会するのだった。

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