第102話 思い返してみれば?

 私とクラーナは、ボール遊びを終えて、家の中に入ってきた。


「……」

「ク、クラーナ……」


 その瞬間、クラーナの顔が赤くなる。

 なんだか、とても恥ずかしそうだ。


「クラーナ? どうしたの?」

「……そ、その私、とても変なことをしていた気がして……」

「変なこと?」


 クラーナは、何か変なことをしたことを気にしているらしい。

 しかし、変なこととは一体、なんだろうか。別に、楽しくボール遊びをしただけで、特に変なことはなかったはずだ。


「す、少し本能を出し過ぎてしまったわ。変な感じになっていたわよね?」

「あ、ああ……」


 クラーナの言葉で、私は理解する。

 どうやら、クラーナはボール遊びの時に、ほとんど犬のようになっていたことを気にしているようだ。


「あんな風になるなんて、とても恥ずかしいわ。いくらなんでも、あれは駄目よね」

「え?」

「だって、ほとんど犬のようになってしまっていたもの」


 確かに、あれはいつもと違う態度だった。だが、そこまで気にする必要はないだろう。

 私も最初は少し驚いたが、よく考えてみれば甘えてくる時のクラーナは、犬っぽくなる。そのため、そんなに違和感もない。

 それに、とても可愛かったので、何も問題はないだろう。


「大丈夫だよ。可愛かったし……」

「か、可愛いのかしら……」

「うん」


 ただ、それは私の感想である。クラーナ自身が、どう思かとは別の問題なのだ。


「で、でも……」


 私の予想通り、クラーナは気にしていた。

 やはり、本人的にはあれは駄目だったらしい。

 まあ、それもわかる気がする。いつものクラーナと違ったことは確かなので、そう思うのも無理はない。


「別に、私に見せただけだから、そんなに気にしなくてもいいよ」

「ア、アノン……」

「それに、私は、ああいう面を見せてくれる方が嬉しいし……」

「そ、そうなのね……」


 私は、クラーナを励ますことにした。

 最も、今言ったことは素直な気持ちである。

 クラーナが、ああいう風に楽しんでくれるのは大歓迎だ。


「それとも、クラーナは私に見られるのが、嫌だったのかな?」

「そ、そんな訳ないわ!」


 そこで、私はそんな質問をした。

 これは、少しずるかったかもしれない。私がこう言うと、クラーナの返せる言葉が一つになるからである。


「それなら、大丈夫だよね」

「まあ、そうかもしれないわね……」


 私の言葉で、クラーナは納得してくれたようだ。

 とりあえず、元気になってくれそうで良かった。


 こうして、私とクラーナのそんな話は終わるのだった。

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