第101話 楽しいボール遊び
私とクラーナは、家の外に出ていた。
ボール遊びをするためである。
私達のいる家は、町外れにあるため、周りには何もないし、人に見られる心配もない。ここなら、絶好の遊び場といえるだろう。
「よし、それで、私はこのボールを投げればいいんだよね?」
「ええ、お願い……」
「それじゃあ、いくよ」
私が声をかけると、クラーナは構えた。走る体勢だ。
それを見て、私はボールを投げる。
「はあっ!」
「ワンッ!」
「え?」
私がボールを投げると、クラーナは一気に駆け出した。
しかも、珍しく犬の獣人らしい鳴き声をあげている。
かなり、昂っているのだろうか。
「ワウウッ!」
「わっ!」
クラーナはボールに追いつき、大きく飛び上がった。
そして、その口を開けて、ボールに噛みつく。
そのまま、クラーナは身を翻し、私の方に帰ってくる。
中々に、華麗な動きだったので、私は思わず驚いてしまう。
「ワウッ!」
「あっ……」
クラーナは、私の手にボールを落としてきた。
私がボールを受け取ると、クラーナが笑顔を向けてくる。尻尾も振っており、何をして欲しいのか、大体理解できる。
要は、褒めて欲しいのだ。
「クラーナ、いい動きだったよ」
「クゥン……」
私が頭を撫でてあげると、クラーナはとても嬉しそうにする。
とてもかわいい。
「ワンッ!」
「えっと……」
クラーナは、私にもう一度ボールを投げるように催促してきた。
なんだか、言語がなくなっているが、どうしたのだろうか。
もしかしたら、本能の面が強調されているから、こうなっているのかもしれない。最早、本当に犬である。
「それじゃあ、いくよ……えいっ!」
「ワンッ!」
私がボールを投げると、クラーナが駆け出す。
クラーナはそのまま、ボール目がけて飛び上がる。
それにしても、クラーナはすごいジャンプ力だ。
獣人は、基本的に人間より身体能力が高いらしいが、実際見るとやはりすごい。
それに、その口もすごいと思った。
あのように、口で物を運ぶのは、人間には中々できないことだろう。
「ウウ……」
クラーナはボールを加え、帰ってきた。
私の手に、ボールが再び落とされる。
「ワン……」
「はい。よしよし……」
クラーナが物欲しそうな顔をしていたので、私は頭を撫でてあげる。
持って帰れたら、褒めるというのが、この遊びの決まりになりそうだ。
「ワンッ!」
「あ、うん。次だね」
私が撫でていると、クラーナが大きな声を出す。
これは、投げて欲しいという合図である。
鳴き声だけでも、色々とわかるのは少し不思議だ。
「いくよ」
「ワンッ!」
こうして、私とクラーナは、しばらくボール遊びを楽しむのだった。
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