第100話 新しい遊び?

 私とクラーナは、魔物討伐の依頼を終わらせていた。

 昨日は、クラーナを撫でたり、耳掃除をしたりして過ごしたが、今日は依頼をしたのだ。

 私の風邪は、完全に治ったので、こうなった訳である。


「さて、依頼も終わって、買い物もして、後は帰るだけだね」

「ええ」


 依頼のついでに、買い物も終わらせ、私達は家へと歩いていた。

 そこで、クラーナの視線が動く。


「うん?」

「あっ……」


 私も、その視線を追ってみると、そこにはいつもの小物屋があった。

 今日も、クラーナが何かを見つけたらしい。

 こういう時のパターンは決まっている。


「クラーナ、欲しいものがあるなら……」

「あ、いえ、そうじゃないの。今日は、欲しいものがある訳ではないの」


 そう思った私だったが、どうやら違うようだ。

 それなら、一体何を思ったのだろう。


「それなら、どうしたの?」

「ええ。あの店にあるもので、思い出したのよ。実は、昔あるものを買っていたってね……」

「あるもの?」


 どうやらクラーナは、小物屋で確認できたものを、昔買っていたことを思い出したようだ。

 小物屋には、割となんでも置いてあるため、私には見当がつかない。

 クラーナは、一体何を買ったのだろう。少し、気になる。


「まあ、帰ったら教えてあげるわ。アノンに、頼みたいこともあるし……」

「え?」


 そんな私に、クラーナがそう言ってきた。

 このことは、家に帰ってから教えてくれるようだ。それなら、楽しみにしていよう。




◇◇◇




 家に帰ってから、クラーナはあるものを見せてくれた。


「これは、ボール?」

「ええ、そうよ。なんの変哲もない、ただのボールよ」

「うん……」


 クラーナが棚の奥から引き出してきたものは、手の平サイズのボールだった。

 確かに、あの小物屋にはこういうものもある。ただ、これに気をとられていたとは、どういうことだろうか。


「とりあえず、買ったんだけど、あまり使っていなかったわね。そもそも、一人で使うものでもないし……」

「え? これって、何に……」


 そこまで言って、私はだんだんとわかってきた。

 今まで経験してわかっているが、犬の獣人は結構犬よりの性質がある。

 そこで、ボールときたら、もう一つしかない。


「もしかして、これを私が投げて、クラーナがとってくるってことかな?」

「ええ、そうよ」


 私の予想通り、やはり犬と同じ遊びをしたいらしい。

 ただ、その図は少し奇妙な気もする。


 私が投げて、クラーナが走って、それを拾う。そして、私の元に帰ってくる。なんだか、特に面白みもないのではないだろうか。


「より正確に言えば、アノンが投げて、私が口でそれをキャッチするわ」

「口で?」

「ええ」


 そう考えていた私は、クラーナの言葉で考えを改める。

 クラーナは、手を使って取ってくるという訳ではないようだ。しかも、空中でキャッチすることを想定しているらしい。


 それなら、中々に楽しそうな気もする。少なくとも、変な図にはならないはずだ。


「よし、それなら、外に出てやってみようか」

「いいの?」

「もちろん!」


 こうして、私達のボール遊びが始まるのだった。

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