第99話 耳の掃除をしてあげて

 私は、クラーナの耳掃除をすることになった。

 という訳で、クラーナは私の膝に頭を乗せて、寝転がってもらっている。丁度、耳の中が見えるように体勢になってもらっているので、耳掃除もしやすいはずだ。


「……これをで、入れるの?」

「ええ……」


 クラーナに渡されたのは、洗浄液と呼ばれる液体だった。これを耳の中に入れるのが、最初の手順らしい。


 なんだか、とても緊張する。耳の中に、液体が入るのは、いい感覚とはいえないだろう。

 ただ、クラーナがいいというのだから、入れるしかない。


「それじゃあ、いくよ」

「お願い……」


 私は洗浄液を、クラーナの耳に垂らしていく。使用量は、ボトルに書いてある。

 というか、これはどこで売っているのだろう。後で、聞いてみようか。


「んん……」

「クラーナ?」

「だ、大丈夫……」


 耳の中に液体が入ってくる感覚に、クラーナは身を震わせる。やはり、いい気分ではないらしい。


 とりあえず、私はクラーナの頭を撫でてあげる。少しでも、これで落ち着いてくれればいいのだが。


「もう、大丈夫そう。次の工程に、移って……」

「あ、うん……」


 私は、ガーゼを手に取り、クラーナの耳を拭いていく。

 これが、犬の獣人の耳掃除の手順らしい。

 確かに、大変だ。特に、洗浄液を耳に入れる部分が。


「ふう……」


 耳を拭いている時のクラーナは、大人しかった。むしろ、こちらは気持ちよさそうだ。


「よし……これで、いいと思う」

「ええ、ありがとう、アノン」


 とりあえず、片耳は拭き終わった。

 しっかりと綺麗になったので、これでいいはずだ。


「それじゃあ、次だね」

「ええ、お願い……」


 そこで、クラーナは体を反転させる。当然、耳は二つあるので、今度は反対側だ。


「いくよ?」

「あっ……」

「我慢してね……」


 反対側の耳にも、洗浄液を垂らす。

 すると、クラーナの体が震える。この瞬間は、やはりきついのだろう。私は、再びクラーナの頭を撫でてあげる。


「ア、アノン……ふ、拭いて……」

「うん」


 クラーナにそう言われたので、私はこちらの耳も拭いていく。


 この時のクラーナは、とても大人しい。しかも、気持ちよさそうだ。そのため、こちらは楽しいと思える。


「よし……こっちも、いいよ」

「……アノン、ありがとう」


 クラーナは体を起こしながら、お礼を言ってきた。


「アノンにしてもらったから、いつもより楽だったわ」

「それなら、よかったよ」

「これからも……してもらえるかしら?」

「もちろん」


 私の言葉に、クラーナが笑顔になる。


 こうして、私はクラーナの耳掃除を終えた。

 これからも、耳掃除は私がしてあげることになりそうだ。

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