第97話 完治して……

 朝、私は目覚める。

 隣には、クラーナが一緒だ。それは、いつも通りのこと。


 だが、今日はいつもと違う喜びがある。


「うん……」


 私は、体の調子を確認していく。

 体はだるくない。節々も痛くない。喉も大丈夫。鼻水も出ない。


「治った……!」


 私の体は、完治していた。いや、完治ではないかもしれない。

 まだ、完璧というには早いだろう。


 だが、えらくないのは確かだ。

 私の風邪は、とりあえず治ったということだ。


「ん……」


 私がそんなことを感じていると、隣のクラーナが声をあげた。

 どうやら、起きたらしい。


 それなら、この喜びをクラーナにも伝えなければならないだろう。


「クラーナ、おはよう」

「ええ、おはよう、アノン。調子はどう?」


 朝の挨拶で、丁度良くクラーナは質問してくれた。

 私は、その質問に対して、笑顔で答える。


「バッチリ! おかげ様で、回復したよ」

「本当に!? それは、よかったわ」


 私の言葉に、クラーナは安心したような表情を見せてくれた。

 その表情がとても嬉しくて、私はクラーナを抱きしめる。


「クラーナ!」

「アノン……」


 私が抱き着くと、クラーナも抱きしめて返してくれた。

 この温かさが、私を救ってくれたのだ。

 私は、クラーナと向き合って、お礼を言う。


「クラーナ、昨日から本当にありがとう」

「そんなの問題ないわ。私も、アノンには早くよくなって欲しかったもの」

「クラーナ……」


 私は、クラーナに顔を近づけていく。

 風邪が治ったばかりなので、どうかとも思ったが、我慢することができそうにない。


「ん……」

「ん……」


 私とクラーナの唇が重なる。

 今回は、クラーナの口の中に舌を入れていく。

 このキスは、久し振りだ。


「んん……」

「んあっ……」


 お互いの舌を絡ませ、唾液のやり取りをする。

 朝から、少し過激かもしれない。


「ふう……」

「はあ……」


 少しの間、そうして、私達は離れた。

 これ以上するのは、まだ流石に駄目だろう。

 名残惜しいが、今はこれだけだ。


「今日は、まだ用心して、依頼には行かないことにしましょうね?」

「あ、うん。ごめんね、色々と……」

「大丈夫よ。問題ないわ」


 今日は、私の体調を考慮して、依頼にも行けない。

 そのため、一日自宅待機だ。


「その代わり、今日は家で遊びましょう? 撫でたりしてくれると、嬉しいわね」

「それなら、大歓迎。いっぱい撫でてあげるね」


 という訳で、今日は健全な遊びをすることになった。

 本当に健全なままでいられるかわからないが、きっとなんとかなるだろう。


「さて、まずは朝食ね」

「うん。今日は、私も手伝うね」

「ええ、お願い」


 こうして、私達の新たなる一日が始まるのだった。

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