第85話 その秘密をどうするのか
私とクラーナは、家に帰って来ていた。
そんな私達の元に尋ねてくる人がいた。それは、リュウカさんのパーティのティネちゃんだ。
そこで、私は衝撃の事実を知ることになる。なんと、ティネちゃんはクラーナと同じ犬の獣人だったのだ。
とりあえず、私達はティネちゃんの話を聞くのだった。
「それで、詳しいことを聞いてもいいのかな?」
「はい……」
ティネちゃんと向かい合って座りながら、私とクラーナはティネちゃんに質問する。
まずは、わかりきったことだが、事実の確認をしよう。
「ティネちゃんは、犬の獣人で間違いないんだよね?」
「はい、正真正銘、犬の獣人です」
「そ、そうだったんだ。全然、気づかなかった……」
やはり、ティネちゃんは犬の獣人で間違いないようだ。
まったく気がつかなかった。もちろん、リュウカさん達も気づいていないはずだろう。
これは、色々と疑問が湧いてきてしまう。
ただ、その前に聞いておきたいこともある。
「クラーナは、気づいていたんだよね?」
「ええ、そうね」
色々と察せたが、クラーナはティネちゃんのことに気づいていたようだ。
「匂いですぐにわかったわ。少し驚いたけど、あの場で言う訳にもいかなかったから、教えることはできなかったわ」
「そうだったんだ……」
犬の獣人は、鼻がとてもいい。
そのため、相手の匂いで判断できたようだ。
だから、あの時、妙な反応をしつつも、何も言えなかったのか。
あの場で言うと、色々な人に知られてしまうし、他の場でもリュウカさんに知られてしまう。そのことを隠しているティネちゃんにとって、そんな酷なことはできるはずがない。
「それで、あなたはなんでそんなことになっているのかしら?」
「はい……」
そこで、クラーナがティネちゃんにそう問いかけた。
その質問に、ティネちゃんはゆっくりと頷く。
「獣人だとばれてしまうと、人々からひどい扱いを受けると、母から学びました。だから、私は耳と尻尾を隠すことにしたんです。そうすれば、人間とほとんど変わりませんから……」
「そうだったんだ……」
どうやら、ティネちゃんは差別を避けるために、隠していたようだ。
それは、大いに納得できる。獣人は、人間から差別されてしまうことが多い。隠すことができるなら、そうしようと思うのは必然だろう。
「……確かに、あなたの耳なら、フードでも隠しやすそうだし、そうするのも頷けるわね」
「はい。この耳のおかげで、フードを隠せば、見えなくなります」
ティネちゃんの耳は、クラーナの耳と少し違う形だ。
その垂れさがるような形状は、フードでも隠しやすいだろう。それにより、今まで隠し通すことができたのだ。
同じ犬の獣人でも、犬種と同じで様々な種類がある。それが、こんな所で生かされるとは、驚きだ。
「でも、クラーナさんの存在を知って、思ったんです。私も、自らの正体を打ち明けなければいけないって。私も、いつまでも正体を隠すことはできませんから……」
「そっか……」
「だから、クラーナさんに相談したくて、ここに来たんです」
「なるほどね……」
ティネちゃんは、正体を隠すことをやめるつもりらしい。
それは、とても大きな決断だろう。だが、いつまでも隠しておくことが難しいのも事実だ。
「でも、私に言えることなんて、ほとんどないわよ」
「え?」
「私は、ただアノンに理解してもらえただけだし、結局は相手次第だと思うわ」
「相手次第……」
悩むティネちゃんにクラーナがかけたのは、そんな言葉だった。
あまり、アドバイスできることはないらしい。
「あなたが打ち明けたいと思っている人が、あなたを理解してくれるかどうか……」
「そうですよね……」
クラーナの言葉に、ティネちゃんの表情が変わる。
その表情は、かなり険しい。
こうして、私とクラーナは、ティネちゃんの秘密を知るのだった。
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