第86話 秘密を打ち明けるのは……

 ティネちゃんが私達の家に来てから、一日が経っていた。

 今日は、色々と重要な日になりそうだ。


「さて、覚悟はできているわね」

「はい……」


 私達は、ある人を待っていた。

 ちなみに、ティネちゃんも一緒である。


 昨日、ティネちゃんと色々と話し合った結果、リュウカさんにその秘密を打ち明けることになったのだ。

 私達は、その場所として、この家を提供した。町から離れているここなら、誰かに聞かれることもない。そういった理由から、ここが告白の場所になったのだ。


「それじゃあ、大丈夫だと思うわ。頑張りなさい」

「はい……」


 ティネちゃんは不安そうにしている。

 それも、当然だろう。


 そんなティネちゃんを、クラーナは励ましてあげている。

 獣人の先輩として、色々と心配なのだろう。やはり、クラーナは、とても優しい。


「あっ……」


 そんなことをしている内に、戸を叩く音が聞こえてくる。

 どうやら、リュウカさんが来たらしい。


「おっ! アノンか。ここで、会っていたんだな」

「はい。ここですよ」


 戸を開けみると、やはり、リュウカさんがいた。

 少し安心したような顔をしているのは、きちんと私達の家に辿り着けたからのようだ。


「さあ、入ってください。中で、ティネちゃんも待っていますから」

「ああ……」


 私はリュウカさんを、ティネちゃんの待っているリビングまで案内していく。

 今回、ティネちゃんが話したいことがあるというのは話してある。ただ、何を話すかまで入っていない。


 恐らく、リュウカさんもただことではないことはわかっているのだろう。先程までの安心したような表情から、不安そうな表情に変わっている。

 まあ、こんな所に呼び出された時点で、そう思うのも仕方ないかもしれない。


「さあ、ここです」

「ああ……」


 私とリュウカさんは、リビングに入っていく。

 ここから、とても重要な場面だ。


「リュ、リュウカさん……」

「ティネ、今日は話があるんだってな」


 リビングには、ティネちゃんとクラーナがいた。

 二人とも、少し緊張気味だ。いよいよ告白の時なので、そうなるのも当然だろう。もちろん、私もとても緊張している。


 ティネちゃんは、リュウカさんの前に立ち、ゆっくりと口を開く。


「リュウカさん、私、あることを打ち明けなければならないんです」

「あること? 一体、なんだ?」

「言葉で伝えるより、見てもらった方が早いと思います。だから、見ていてください……」

「あ、ああ……」


 ティネちゃんは、そんな言葉を放ち、フードに手をかけた。

 どうやら、そのフードの下に隠されているものを見せるらしい。

 確かに、それが一番手っ取り早いとは思う。ただ、それはとても勇気がいることだ。


「行きます」


 ティネちゃんは、短くそう言ってから、フードをとった。

 すると、その犬の耳が露わになる。

 その瞬間、リュウカさんは驚いた表情になっていく。


「ティ、ティネ……お前……」

「はい。私は、犬の獣人なんです……」


 ティネちゃんの言葉に、リュウカさんは固まってしまう。

 どうやら、かなり驚いているようだ。

 それも当然だろう。今まで、ずっとパーティを組んでいた子に、そんな秘密があったのだ。それで、驚かないというのは、無理な話だろう。


 こうして、リュウカさんとティネちゃんの話し合いが始まるのだった。

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