第84話 意外な訪問者
私とクラーナは、リュウカさんとティネちゃんとの依頼を終えて家に帰って来ていた。
魔物を倒した後は、特に何もなくギルドまで着き、報酬もらい、その後に解散したのだ。
「あの、クラーナ?」
「うん?」
家の中に入ってから、私はクラーナにそう問いかけた。
依頼について、何も問題は起こらなかったが、私はあることが気になって仕方がない。
それは、ティネちゃんのことだ。
「ティネちゃんからクラーナが感じたことって、なんだったの?」
「ああ、そのことね。もちろん、話すつもりよ。ただ、立って話すようなことでもないわ」
「あ、そうだね。それなら、ソファにでも座ろうか?」
「ええ。でも、その前にやることがあるわ」
私の質問に、クラーナはそんなことを言ってきた。
ソファに座る前に、やらなければならないこととはなんだろう。
「まだ、お帰りのキスをしてないわ」
「え? あ、ああ」
クラーナはそう言いながら、私に顔を近づけてきた。
確かに、お帰りのキスをしてはいない。別に決まりという訳ではないが、私達はいつも家を出る時や戻った時にはキスをしているのだ。
「ん……」
「ん……」
という訳で、キスをしてから、私達はソファに向かう。
私がソファに座ると、クラーナが隣に座り、よりかかってくる。
「あ、膝使う?」
「いいの?」
「うん、いいよ」
「それじゃあ、失礼するわ」
私の言葉に、クラーナは体勢を変えていく。
クラーナの頭が私の膝に乗る。
ふわふわの髪の毛が当たって、気持ちいい。
「……あれ?」
そこで私は思い出す。
こんな風にじゃれ合うために、ソファに座った訳ではない。
クラーナとのキスで、一度記憶から離れてしまったのだ。
「それで、クラーナ。ティネちゃんのことなんだけど……?」
「ええ、そうね。話そうとは思っているわ。ただ……」
「ただ?」
「私が話さなくても、いいかもしれないわ」
「え?」
私の質問に、クラーナはそんなことを言ってきた。
その言葉の意味は、よくわからない。クラーナが話してくれなければ、誰が話してくれるというのだろう。
「うん?」
「来たみたいね……」
その直後、戸を叩くことが聞こえてきた。
それと同時に、クラーナは私の膝から起き上がる。なんとも短い膝枕だった。
とりあえず私も立ち上がり、クラーナとともに戸の方に向かっていく。
そして、戸の前まで来て、ゆっくりと開けみる。
すると、そこには驚くべき人が立っていた。
「え?」
「あっ……こ、こんにちは」
「ティネちゃん!?」
「やっぱりね……」
私達を訪ねて来たのは、ティネちゃんだったのだ。
その来訪に、私は驚いてしまう。
「ど、どうしてここに……?」
何故訪ねて来たのかという疑問もあるが、そもそも、ティネちゃんはこの家を知らないはずである。
それなのに、訪ねて来たことにまず私は驚くのだった。
「に、匂いを辿ってきました……」
「え? 匂い?」
その言葉に、私はさらに驚いてしまう。
匂いを辿ってきた。それは、普通の人間からは出るはずがない言葉だ。
「実は、お二人に相談したいことがありまして……」
「う、うん……」
「クラーナさんは気づいていると思います。それに、アノンさんも……」
ティネちゃんは、自身のフードをゆっくりととっていく。
すると、私の目にあるものが入ってくる。
「私は、クラーナさんと同じ、犬の獣人なんです」
ティネちゃんの頭からは、犬のような耳が生えているのだった。
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