第74話 出かける前も

 朝、私はカーテンの隙間から差す光に目を覚ます。

 目の前には、気持ち良さそうに眠るクラーナの顔。今日も、本当にかわいい。


「うっ……」

「あっ……」


 私が顔を見ていると、クラーナが声をあげた。

 どうやら、起きたようだ。

 それを見て、私はゆっくりと口を開く。


「おはよう、クラーナ」

「……おはよう、アノン」


 私の言葉に、クラーナが顔を近づけてきた。

 おはようのキスということだろう。

 それを察して、私もクラーナに近づいていく。


「ん……」

「ん……」


 私とクラーナの唇が重なる。

 寝る前以来のキスだ。とても気持ちがいい。


「ふぅ……さて、起きないといけないわね」

「うん、そうだね……」


 クラーナが離れていき、そう言ってきた。

 気分的にはまだベッドでクラーナとゆっくりしていたいと思うが、今日は依頼をしないといけないので仕方ない。


 こうして、私達は起き上がるのだった。

 今日も、一日が始まるのだ。




◇◇◇




 私達は朝食を終わらせて、出かける準備をしていた。

 これから、依頼を受けるために、ギルドに行くのである。

 今日も、簡単な魔物退治の依頼を受けるつもりだ。


「よし、それじゃあ、行こうか」

「ええ、そうね」


 準備ができたので、クラーナに手を伸ばす。

 今回は、依頼に行くので、手を繋ぐ方がいいと思ったのだ。


「……」

「クラーナ?」


 しかし、クラーナは私の手をとってくれない。

 もしかして、腕を組む方がいいのだろうか。

 別に、そちらでも構わないので、まったく問題はない。


「アノン、キスをしましょう……」

「え?」


 だが、私の予想に反し、クラーナはそう言ってきた。

 どうやら、キスがしたかったようだ。


「行ってらっしゃい……行ってきますのキスよ」

「こ、これから二人で出かけるのに?」

「ええ」


 クラーナはそんな風な理由を言ってきた。

 ただ、これは恐らく適当な理由だろう。

 一緒に出かけるのに、行ってらっしゃいも行ってきますもないはずで。ある

 要は、キスがしたいだけなのだろう。それは、私もしたいので、まったく問題はない。


「それじゃあ……」

「ええ……」


 私とクラーナは、ゆっくりと顔を近づけていく。


「ん……」

「ん……」


 私達の唇が重なる。

 出かけてからは、中々できないと思うので、じっくりと味わう。


「よし……行こうか?」

「ええ、行きましょう……」


 私が再び手を伸ばすと、クラーナがそれをとってくれた。

 指を絡ませ、その手をしっかりと繋ぐ。


 私とクラーナは、ゆっくりと歩き出す。

 行き先は、ギルドだ。


 こうして、私達は依頼をしに向かうのだった。

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