第73話 寝る前にいっぱい

 私とクラーナは、お風呂か上がって、寝室に来ていた。

 今日はもう、寝る時間である。


「さてと……」


 明かりを消して、ベッドに寝転ぶ。

 隣には、もちろんクラーナがいる。


 ちなみに、今日は普通に寝る予定だ。

 明日は依頼を受けたいので、そういうことにしようという判断である。

 今日の感じから、多分大丈夫だとは思うが、まだ慣れていないので念のためという話の流れになったのだ。


「アノン、寝る前にキスしましょう?」

「え? あ、うん、いいよ……」


 寝転がった私に、クラーナからそんな言葉をかけられた。

 断る理由はまったく無いし、むしろ嬉しいので、私はそれを了承する。


「それじゃあ……」

「うん……」


 すると、クラーナがゆっくりと近づいてきた。

 明かりを消したが、この距離なので顔ははっきりとわかる。


「ん……」

「ん……」


 すぐに、唇同士が接触した。

 今回は、触れるだけのキス。恋人になってからは、もしかして、こちらの方がよくしているかもしれない。


「ふふ……」

「あはは……」


 唇が離れると、クラーナは小さく笑う。

 それに合わせて、私も笑っていた。


 クラーナとの何気ない時間が、とても幸せで、自然と笑みが零れてしまうのだ。

 クラーナとである前の私は、きっとこんな風に笑っていなかっただろう。


「もう一回……」

「え? ……ん」

「ん……」


 私がそんなことを考えていると、再びキスをされた。

 何度キスしても幸せな気持ちになれる。これは、すごいことなのかもしれない。


「ん……」

「ん……」


 一度離れて、再度キス。

 いつの間にか、私達はお互いに体を引き寄せて、抱き合っていた。


「んん……」

「ん……!」


 さらにクラーナは、キスを重ねてくる。

 今度は、少し深めで長めのキス。お互いに、じっくりと味わうように、唇を重ねる。


「ん……」

「ん……」


 その直後、軽いキスを一回。

 感じからして、どうやら、それが最後のキスであるようだ。

 しかし、ここまではクラーナからのキスである。それなら、もう少し、いいだろうか。


「ん……」

「んん!?」


 今度は、私からキスをした。

 先程で終わりと思っていたであろうクラーナは、その行為に目を丸くする。


「ん……」

「んん……」


 それでも、すぐに受け入れてくれた。

 私はそれに甘えて、クラーナを味わう。

 これが終われば、明日の朝まではキスできない。そのため、寝ている間の分をしっかりと補給しておかなければならないのだ。


「ふう……」

「はあ……」


 私が唇を離すと、クラーナが息を吐いた。

 少し、苦しかったのだろうか。


「クラーナ、ごめんね。大丈夫?」

「あ、別に問題ないわ。いきなりで、少しびっくりしたけど、アノンから求められて、嫌な訳ないもの……」


 私が声をかけてみると、クラーナは笑顔を向けてくれた。

 その表情に、私は安心する。

 それと同時に、もう一度キスしたくなってくるが、それは我慢した。流石に、これ以上は危ないからだ。


「なんだか、私達って、キスしてばかりだね。今日、何回したんだろう?」


 そこで私は、話を切り替えるためにも、疑問に思ったことを聞いてみた。

 私達は、今日何度もキスをしたが、その数は一体いくつなのか、少し疑問に思ったのだ。


「そうね……十、では絶対足りないわね。二十?」

「二十も少ないかな……三十か四十くらいじゃない?」

「でも、朝、昼、夜でそれぞれそのくらいしている気がするわ」

「それじゃあ、百……?」


 それを考えてみると、すごいことが判明した。

 今日一日で、百回くらいキスをしていたようだ。もしかしたら、それ以上かもしれない。

 いくら、恋人になったからといって、こんなにしてもいいのだろうか。


「まあ、いいじゃない。私は、百回どころか千回でも、アノンとキスしたいもの」

「……うん、そうだね」


 私の悩みは、クラーナの一声で吹き飛ばされた。

 確かに、クラーナとなら何回でもしたいので、何も問題はないのだ。


「さて、それじゃあ、寝ましょうか、アノン。お休み……ん」

「ん……お休み、クラーナ」


 一回数が増えた後、私達は眠りにつくのだった。

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