第67話 朝のお風呂は

 私とクラーナは、お風呂場にいた。

 色々あったので、入浴中なのである。


 体などを洗った後、二人で浴槽に入っているのだが、今回は少し入り方が変わっていた。


 私が後ろから、クラーナを抱きしめるような形でお風呂に入っているのだ。

 クラーナは、私に体を預けてくる。


「ねえ、クラーナ、これからどうするの?」

「え?」

「いや、だって、もうお昼近いし……」


 そこで、私はクラーナにそんなことを問い掛けていた。

 色々あったため、時間的にはもうすぐ昼食をとるような時間である。


「まあ、今日は一日、ゆっくりすることにしましょう。昨日から、色んなことの連続で、かなり疲れているもの」

「うーん、まあ、それでもいいか」


 クラーナは、今日はどこにも出かけないつもりらしい。

 確かに、昨日からの疲れはないこともないので、それはいいと思う。

 ちなみに、色々していた時は、テンションが上がって疲れなど感じていなかった。


「あ、でも、食材の買い足しくらいはしておきたいわね」

「あ、そっか。それなら、買い出しにだけ行こうか」


 ただ、食材の買い出しはしないといけないようだ。

 これは、切れるとどうしようもないので仕方ない。


「……これって、初デートになるのかしら?」

「え?」

「二人で付き合ってから、初めて出かけるのよ? それなら、初デートといえるんじゃないかしら?」

「ええ!? いや、それは……」


 そこで、クラーナがそんなことを言い出した。

 確かに、付き合ってから初めて出かけると言えなくはないが、買い出しをデートとするのはどうなのだろう。


 そもそも、二人で出かけるのがデートなら、隠れ里から帰ってきた後も、家に帰るまでは出かけていた訳なので、そちらが初デートになる気がする。

 でも、あれをデートと呼んでいいのだろうか。それは、何か違う気がする。


「アノン、ただの冗談よ。そんなに考えなくていいわ」

「え、そうなの?」

「ええ、まあ、デートといえるかもしれないけど、初デートはもっとちゃんと決めてしましょう?」

「あ、うん、そうだね……」


 焦る私に、クラーナがそう言ってくれた。

 なんだか、色々と悩んでしまったが、それなら大丈夫だ。

 やはり、デートはデートと決めてからにするべきなのだろう。


「……うん?」

「アノン? どうしたの?」


 そこで、私はあることを思いついていた。

 よく考えたら、私とクラーナはデートもまだだったのだ。


「い、いや、私達、デートもまだなのに、あんなことしたんだなって思って……」

「……ああ、確かにそうね」

「なんだか、恥ずかしいかも……」


 私が思ったのは、そんなことだった。

 デートもしてないのに、それ以上ともいえることをしている。そこは少し、恥ずかしい気がしてしまうのだ。


「アノン、そんなことを恥ずかしがることはないわ。順序なんて、人それぞれだもの。それに、私達は付き合う前から好き合っていたのだから、特別ということになるんじゃない?」

「あ、うん……そうなのかな」


 そんな私に対して、クラーナはそう声をかけてくれる。

 確かに、私は少し気にしすぎてしまったかもしれない。


 そんなこと気にせず、クラーナと毎日楽しく過ごせたら、それでいいのだろう。


「クラーナ、ありがとう。私、変なことを気にしちゃったね」

「別にいいわ。でも、せっかくだから、一つお礼をもらってもいい?」

「お礼? いいよ、なんでも言って」

「キスしてもらってもいいかしら。そろそろ、アノンのキスが恋しくなってきたわ」

「え? それなら、いつでも言ってくれていいのに……」


 そこで、クラーナは私にキスを要求してきた。

 クラーナとのキスなら、私はいつでも大歓迎なので、こんな風にお礼としなくてもいい。

 まあ、恐らくはタイミング的にそう言っただけで、クラーナもそれはわかっているだろう。


「ん……」

「ん……」


 お風呂の中で、私とクラーナはキスをする。

 今回は、唇が触れるだけのキス。なんだか、幸せでいっぱいだ。

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