第68話 腕を組むのは
私はクラーナと一緒に、買い物に行くことになっていた。
という訳で、私はクラーナに手を差し出す。
いつも通り、手を繋ぐためだ。
「……」
「あれ? クラーナ?」
しかし、クラーナは何かを考えるような表情をして、私の手を取ってくれなかった。
もしかして、私と手を繋ぐのが恥ずかしくなったとかだろうか。
ただ、クラーナが今更それを恥ずかしがるのは、今までの経験から違う気がする。
「アノン……その、腕を組んでもいいかしら?」
「腕を組む……? ああ! もちろん、いいよ! 嬉しいし!」
どうやら、クラーナは手を組みたかったらしい。
それなら、大歓迎だ。
「それじゃあ、失礼するわよ」
「うん!」
そう言いながら、クラーナが私の腕に抱き着いてくる。
「あう……」
「あら?」
体が密着し、クラーナの温かさや感触が伝わってきた。
中でも、私の動揺を加速させるのは、クラーナのおっぱいだ。腕にその柔らかい感触が当たってきて、とてもドキドキする。
「アノン、大丈夫?」
「だ、大丈夫だよ……この感触自体は、嬉しいし……」
「そう? 駄目なら、腕を組むのをやめるけど……」
私の気持ちを察してくれたようで、クラーナがそう声をかけてくれた。
ただ、これは、腕を組むのをやめるようなことではない。
別に、クラーナのおっぱいが当たるのは嬉しいし、何も問題はないのだ。
「そんなの駄目だよ。せっかくクラーナとくっついているのに、離れたくないもん」
「アノン……それなら、大丈夫ね」
私の言葉に、クラーナは笑顔を見せてくれた。
さらに、体を押し付けて、私にさらにくっついてくる。
「手を繋ぐのもいいけど、こっちもいいわね」
「確かに、こっちは密着するし、手を繋ぐと肌と肌が触れ合うし……どっちも違った良さがあるよね」
「ええ、どっちもしていきましょう」
私とクラーナは、そんな話をしながら歩き始めた。
これから、買い物に出かけるのだ。
「あ、帰りは、私が抱き着いてもいい?」
「ええ、もちろん、いいわよ」
こうして、私とクラーナは町に出かけるのだった。
◇◇◇
私とクラーナは、買い物に来ていた。
町を歩いていると、周りの人は変なものを見るような目線を見てきたが、そんなことは気にしない。
私とクラーナは、そういう扱いは慣れているので、まったく気にならないのだ。
ただ、今回は、私とクラーナがあまりにも仲良しな雰囲気なので、向けられているような気がする。
そんな私達が、最初に訪れたのは、テットアさんの八百屋さんだ。
テットアさんは、腕を組んでいる私達を見ると、少し笑顔になる。
「あら、二人とも、今日はとっても仲良しって感じね?」
「あ、あはは、そうですか?」
「ふふ、まあ、そうかもしれませんね」
さらに、テットアさんはそんな言葉をかけてくれた。
やはり、私とクラーナはそう見えるようだ。
それは事実なので、別に否定する必要はない。
「さて、今日もいいお野菜があるから、いっぱい買っていってね?」
「あ、はい」
「もちろんです」
こうして、私とクラーナの買い物は始まるのだった。
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