第51話 泊めてくれる家は
私とクラーナは、犬の獣人達が暮らす隠れ里に迷い込んでいた。
ここには、ある一定の時間しか出入りすることができないらしい。そのため、ここの長老に泊まれる場所に案内してもらっているのだ。
「ここじゃ」
長老は、ある一軒家の前で足を止める。
どうやら、この家が私達でも泊まれる家らしい。
「サトラ、長老じゃ。先程伝えた二人を連れてきた」
長老がそう言うと、戸が開き、中から犬の獣人が出てくる。
「へえ、君達が客人か……」
「あ、はい……」
「……ええ、そうね」
出てきたのは、私よりも少し年上くらいに見える女性だった。
あまり私に対して敵意がないことから、人間も平気なようだ。
「私はサトラ、よろしくね」
「あ、はい。よろしくお願いします」
「……よろしくお願いするわ」
私とクラーナが挨拶すると、サトラさんは笑ってくれる。
いい人そうで、よかった。
クラーナは少し警戒しているようだが、この人なら、恐らく大丈夫なはずだ。
「サトラ、後は頼んでもいいかい?」
「ええ、任せてよ、長老」
そこで、長老が口を開く。
どうやら、長老は自分の家に戻るようだ。
「それじゃあ、二人とも、わしはもう行く。後は、サトラに聞いてくれ」
「あ、はい。ありがとうございました」
「一応、感謝しておくわ……」
私達の感謝を聞き終わった後、長老はゆっくりと去っていく。
それを見ていると、サトラさんから声をかけられる。
「それじゃあ、二人とも中に入りなよ」
「はい」
「……わかったわ」
こうして、私とクラーナは家の中に入っていくのだった。
◇◇◇
「君達も、色々と大変だったみたいだね」
家の中に入って、私達はサトラさんと一緒にテーブルについていた。
その時、サトラさんがそう言い始めたのだ。
「いえ、まあ……」
「ここって、人間に対する敵意がすごいから、君なんかは参ってしまうよね……」
「そ、それは……」
サトラさんの言葉に、私は微妙な反応しかできない。
あまり、ここの住人を批判するようなことは、言いづらいからだ。
確かに、ここに来てからいい思いはしていないが、それをわざわざサトラさんに打ち明けるのも、違う気がする。
「でも、私は彼らの気持ちもわかるから、なんとも言えないんだよね……」
「……あなたも、あの人達と同じ考えなのかしら?」
サトラさんの共感を示す言葉に、クラーナが反応した。
やはり、クラーナは獣人達がとった行動が気に入らないようだ。
「いや、気持ちがわかるだけで、同じ行動をしようとは思わないよ。私は、人間の全員が悪いとは思っていないからね」
「……そう。それなら、一応は安心しておくわ」
だが、サトラさんは他の獣人達とは違い、人間に対してそれなりの理解はあるらしい。
それで、クラーナも一応は納得したようだ。
これで、一先ずは安全なはずである。
それにしても、サトラさんは、どうして人間が平気なんだろう。
しかし、それを聞くことはやめておく。初対面で、聞いていいことではないからだ。
「まあ、今日一日はこの家の中にいてよ。それなら、多分大丈夫だからさ」
「は、はい……」
「ええ、そうね」
こうして、私とクラーナはサトラさんの家に留まるのだった。
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