第48話 隠された場所で

 私とクラーナは、森の奥にある不思議な場所で、犬の獣人達に襲われってしまった。

 絶体絶命かと思われた私達だったが、急に現れた長老と呼ばれる人物によって、助けられたのである。


「お主達、すまなかったのう。ここにいる者どもは、人間に慣れてなくてな……」


 獣人達が去った後、長老がゆっくりと近づいてきた。


「あ、い、いえ……助けて頂いて、ありがとうございます」


 私は、とりあえずお礼を言っておく。

 素性はよくわからないが、助けてくれたことだけは確かだ。


「それで、あなた達は何者なの?」


 それに対して、クラーナがそう言い放つ。

 クラーナは私の前に立ってくれており、未だに警戒を解いていないようだ。

 あれだけのことがあったので、当然かもしれない。しかし、助けてくれた人達なので、もう少し柔らかくしてもいいと思う。


「クラーナ、落ち着いて……」

「アノン、駄目よ。そう簡単に、警戒を解かない方がいいわ」


 そう思った私が声をかけても、クラーナは変わらなかった。

 先程の出来事が、クラーナの中でかなり許せないことだったのかもしれない。


「お主達が、怒るのも仕方あるまい……全てを話そう」


 幸いにも、長老は、そんなクラーナの態度も気にしていないようだ。


「ただ、ここで話すのも、なんじゃろう……わしの家に案内する。話は、そこでしよう」


 そして、場所を変えて、全ての事情を話してくれるらしい。

 それは、丁度良さそうだ。


「クラーナ、ここは従っておこう?」

「……ええ、わかったわ」


 そう思い、クラーナに話しかけてみると、それを了承してくれる。

 クラーナも、話を聞く方にメリットがあると思ったのかもしれない。


 何はともあれ、話はまとまったので、よかったのだろう。


 こうして、私達は長老の家へと向かうのだった。




◇◇◇




 私達は、長老の家に着いていた。


 そこで、テーブルを囲み、長老の話を聞くことになったのだ。


「まず、ここがどこかから話すべきかのう?」

「ええ、それからお願いするわ」

「お願いします」


 クラーナはまだ警戒しており、少し口調が強めである。

 私も、一応は警戒しているが、恐らくは危害を加えてきたりはしないだろう。


「まず、ここにお主達が来たのは、匂いを辿ってということで、間違いないか?」


 長老は、私達の態度を気にすることもなく話し始める。

 その最初の言葉は、問い掛けであった。


「ええ、確かに私が匂いを辿ってきたわ。それが、どうかしたの?」

「いや、それならよいのだ。魔法がきちんと機能しているということじゃからな……」


 クラーナが答えると、長老は安心したような顔になる。

 何か、重要なことだったらしい。


「魔法……? それは、一体、どういうことかしら?」

「ここは、普通に知られてはならない場所でのう。魔法によって、犬の獣人だけが辿り着けるような仕組みを作っておったのじゃ」

「犬の獣人だけが……」

「それって……」


 どうやら、この場所は本来、犬の獣人しか、辿り着けないはずの場所らしい。

 だんだんと、ここがどんな場所かの予想ができてきた。

 ここは恐らく、犬の獣人達にとって、重要な場所なのだ。


「ここは、隠れ里。犬の獣人だけが暮らす場所じゃ」

「……そういうことだったのね」

「……やっぱり」


 そこで、長老から決定的な一言が放たれた。

 それに対して、私とクラーナは納得する。


 ここは、獣人達の隠れ里。

 人間から身を隠しながら暮らす者達の楽園なのだ。

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