第42話 夕食と入浴と
私とクラーナは、夕食を食べている。
「うん、おいしい」
私が手伝ったため、少々見た目が悪くなってしまったが、味付けはクラーナなので、そこは問題ない。
「ふふ、ありがとう。でも、半分はアノンが作ったのよ。ありがとう、アノン」
「いや、それは……」
しかし、クラーナはそう言って、私にお礼を言ってくれる。
ただ、野菜を不格好に切って、その他色々な失敗をした私には、そんな言葉は相応しくないような気がした。
むしろ、足手まといになってしまったのではないだろうか。
「……私は、アノンが手伝ってくれると言っただけで、とても嬉しかったわ。一人より、二人の方が楽しいもの」
「クラーナ……」
落ち込む私に対して、クラーナはそう言ってくれる。
クラーナがそう思ってくれていたなら、手伝った甲斐があったというものだ。
「それに、あなたに指示を出していたのは私よ。あなたが失敗するかもしれないと思って、頼んだこともあったわ」
さらにクラーナは、そう言ってフォローしてくれる。
確かに途中からそれはわかっていた。
「でも、それにしても私、できなさ過ぎだよね……」
だが、それでも自分の不甲斐なさに驚いたものだ。
私は、思っていたよりずっと料理ができなかった。
それは、少しショックだ。
「誰でも最初は、あんなものよ……というか、アノンは今までどうやって食事してきたの?」
「あ、外食とかできたものを買うのがほとんどかな。後は、丸焼きとか……」
「丸焼き……」
私の言葉に、クラーナは少し引いていた。
◇◇◇
私とクラーナは、夕食を終えてしばらくして、お風呂に入っていた。
今は浴槽の中で、向き合って座っている。
昨日と一昨日は、この体勢ではなかったが、顔を見合うために、こうなった。
今日で三日目となる入浴だが、やはりそれなりに恥ずかしい。
「……ねえ、クラーナ、明日はどうするの?」
浴槽の中で、しばらく見つめ合っていたが、話さないのもなんなので、私はそんなことを聞いてみた。
ちなみに、普通に気になっていたことだ。
「そうね……依頼でもしようかしら?」
クラーナは少し考えて、そう言った。
確かに、色々な手続きが終わったので、それが一番かもしれない。
「私達二人でやる初めての依頼だね」
「ええ、でもやることは変わらないわ」
「うん、でもクラーナと一緒なのは、楽しそうだなあ……」
今まで私は、仲がいい人と依頼をしたことなどなかった。
そもそも、仲がいい人がいなかったのだが、とにかく楽しみだ。
「……そ、そうね、楽しみね」
私の言葉に、クラーナは少し照れているようだ。
その姿は、とても可愛らしいものである。
そんな話をしながら、私とクラーナは入浴するのだった。
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