第45話 二年目になったらお友達が増えた。んだけど……


 ヒャッハー! この学校は地獄だぜえ!


 というのも。


 入学したら二年間は帰れないんです。その覚悟があるものだけがここに来て官僚や魔法理論、人脈作りをしなさいというところですね。知らなかったわ!!



 一年目の基礎はつつがなく優秀な成績で終わらせ、二年目、応用理論が始まりました。


「魔素っていうのはこの世界に充満している〈架空〉の物質であり、それを〈具現化〉することによって各種魔法を実現させている……」

「体内に存在する魔素は、体内の水素原子等原子数が少ない原子と絡み、〈半具現化されている状態で格納〉されており……」

「魔法は具現化のために〈イメージする〉ことが欠かせない。良いイメージが出来ない魔法は中途半端な結果になってしまう……」

「魔法陣は周辺魔素を〈吸う〉ため、使用以上に吸う描き方をすれば半永久的な動作を可能とするものもある……」

「魔導永久機関は存在している。超古代文明の遺跡等で発掘されることがある……」


「ソラちゃんは貧乏国家の王女様のためいっぱい支援してあげないといけない」

「ヒラちゃんは偉い人なので敬うようにしてあげないといけない」


「来たかマジョマジョコンビ」


「来ちゃダメ? 貧乏だから? 二年目になったら扱い悪いね」

「あたしが来たら何か不都合があるのかな? かな?」


「君らどうせ私のノートを借りに来ただけっしょ」


「ご名答! 貧乏だからねーノートが買えないの。頼むよーサクラちゃん」

「嘘つけ!!」

「あたし魔女になるために大変なの、協力してくれるのがお友達ってやつよね」

「真のお友達はあえていばらの道を行かせるものだと思うな」


「えー、貸してくれないなら貧乏になる呪いをかけてあげる」

「えー、貸してくれないなら魔女になる方法を教えてあげない」


「えー、なんかソラちゃんのが怖い。本当にありそう。しょうがない、貸すか」


「「きゃーありがとうきつねのお人形ちゃん!!」」


 いやーいいお友達なんですけど、なんか乗せられちゃうんだよねえ。



 他のお貴族様がどうなのかは知りませんけど、私は成績上位にずっといます。いちゃってるんだよ。凄いな私。

 だってさ、お金出したの私の懐からじゃなくて、村の予算からなんだもん。

 だってさ、私がしっかり勉強しないとエルたんに教えられないじゃん。


 だから必死で食いついていってるんですよ。真面目にやってるんです。


 凄くない? きつねがまじめにやってるんだよ、このきつねが。




 そんなわけで、二年目も半年ほど経ちました。特にイベントなし。発情期もエルたんが(いろいろとあきらめて)お相手するので即終わる。男性陣入る隙なし。ハルキ来た意味なし。うーんこの。でもそうそうイベントある方がおかしい。


「二年目も半年経ったし、ソラちゃんの王国と同盟結ぶべきよね!」

「まずはヒラちゃんの国からよね」


「うーん、独立している村だから都市国家ではあると思うけど、まだ村だよ。うち」


「でもソラちゃんの国は貧乏だし……本当に助けが必要だし……」

「ヒメちゃんのところは兵力が足らないし……」


「へえ? 兵力? 兵力に? 軍事面で何か問題でもあるの?」


 そっと目をそらす二人。でも何かを期待する雰囲気はすげー、すげーすげーすげーある。

 厄介ごとを頼まれる予感。


「まあまあ、話してみなさいな。まあまあ……」

 話を聞きましょう、しっぽ下げながらですが。




「ほうほう、ソラちゃんのところはオークにちょっかいというか【ピー】出されていると。〈鉄鉱石〉があるから」


「そうなの。酷い話なの。略奪も行われるから発展できないのよ……せっかく独立したのに……お父様の苦労が本当しのばれるわ」

「姉妹国家である私の国が全力で支援しているんだけど、いかんせんうちはそっちに割ける戦力がないの」


「鉄鉱石、と、ヒメちゃんの所の〈魔法鉱石〉は魅力的だな……でもルーデル経由では兵士を持っていくことはできないよ、さすがにルーデルに兵士を送ることはできない」



「ソラちゃんのところに直通させようとすると、多分オークの国家? にぶち当たるからちょっと無理だと思うのよね。」

「ヒラちゃんのところに道を開通できないかしら。計算が正しければそんなに森を切り開かなくてもヒラちゃん国家につながるはずだけど」



「うーん、話に乗らなければよかったかな……今、東のルーデルと道を開通させようとしているんだよね……北西のヒメちゃん国家に繋がるのって何年後……」


「ルーデルとヒラちゃんどっちが大切なの!!」


「るーで――」


「ソラちゃんを助けてほしいの! 本当に!」


「うちまだ村……兵士の質は高いですけど知性も力もあるオーク相手だと――」


「「サクラちゃん!!」」


「ぐぐぐぬぬぬぬ」





 折れました。しっぽも折れた。


 といってもうちがオーク国家か集落かに正面から相手するのは無理。参謀ハルキ君と協議した結果、ケンタウロス部隊とそれに騎乗した魔導猟銃部隊でしばらくの間ゲリラ戦を行うことに。森を味方にゲリラ戦とか、地球のベトコンかよー。


 キッコリーに北西にも道を、そしてオーク相手にゲリラ戦を展開してほしいという親書を届けたあとは、出来ることもないのでやはり勉学です。もう魔素や魔法に関するあれこれはかなりのものですね、攻撃魔法以外はだけど。なんかできないんだよなあ。攻撃は、魔法勇者版ハルキ君とスーパー魔法少女エルたんに任せるか。





 二年目最終盤は卒論で忙しくてどうにもなりませんわ。

 ソラヒラコンビの卒論まで手伝うことになってるし。卒論三人分の勢い。なんかもーね。もーね。


 私の卒論テーマは「魔素、その性質について」。


 そのーなんというかね。



 魔素って、地球に存在したナノマシン粒子と性質がかなり酷似しているんだわ。



 ナノマシンの方が魔素より優秀なんだけど、魔素も下位存在として扱える感じがある。

 ナノマシンは科学技術の頂点に立った存在。これの理論を応用すれば、魔術として恐らく頂点に立った魔素もかなり面白いことが出来るんじゃないかと。【市長権限の加護】でそこそこの知識は教えてもらってあるから、ちょっとだけナノマシンの科学的性質も知ってるんだ。



 ということで論文探しに奔走。本当に暇がない。マジョマジョコンビともおしゃべりしてるけど内容が無いよう。

 ちなみに男性とは仲良くなってない。おかしい、なんで日照りを迎えてるんだ私。そりゃ中身はさじゅげふんぐふん。うら若き乙女で経験がないのですけど、おほほ。



 ナノマシンと魔素を比較したり、知っているナノマシンの理論で魔素の研究をしたりと、村のことを見ている暇なし。二年たったんだから相当発展しているとは思うんだけどどうなんだろうなあ……




 駆け込むように卒論提出してそのまま主席で卒業。


 えええ、ラノベっぽいイベント期待していたのに。キャッキャうふふ乙女の世界とか期待していたのに。何もないまま終わったんだけど。ただし形態的に魔法理論は覚えたし、効率よく魔素を操作する技術も学んだ。ルーデルのお役人候補とは仲良くなった。エルたんは相当優秀な魔法使いになった。メイドというか、御付きの魔女にしよう。魔女だぜ魔女。うひょうマニア舌なめずりじゃん。


  ま、ばんざい、しっぽぽよんぽよん!



 帰ったら報告聞かないとね。相当成長しているみたいなんで、楽しみです。しっぽぽよーん。みみほっさほっさ


ちなみに大砦とルーデルへの森が道がつながったそうです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る