第44話 入学してから。




 さ、優雅な魔法学校生活の始まりざんす。私も優雅になって行動するざんす。



 ということはなかった。


 いや、ほら、私も地球でラノベとか読んだことあるんですが、そこで出てくる貴族養成学校のような要素? ああいうのはほっとんど無くてですね、ひたすらに勉強ですね。このルーデルに貴族はいない様なのですが、遠い国から来た貴族様もひたすらに勉強ですわ。なんというか、官僚養成学校。

 いわゆる社交の場は学校の外、ただの村長な私は蚊帳の外。


 なんでこう、異世界でとーだいに入ったかなあ。


 んで、社交の場に赴けない人は、ここで勉学を共にしあった中で友情が芽生えて、ゆくゆくの関係に発展していくというか?なんか普通の学校であるような感じですね。


 つまらぬ。われはつまらぬぞ。個人にランクがあって十傑とか呼ばれていたりするものはおらぬのか。

 そしてそいつらをボッコボコにするまおーぐんの諜報とかさ。そういや魔族って概念をいまだに見合たことがないんだけど。

 悪役令嬢みたいな展開とかはないのか。貧民主人公をいたぶってたら首がポーンと飛ぶような。



 ないんだよなー。ないんだよ。


 やっているのは高校の青春みたいなちまちまとした友情関係。

 そんなのやってらるかーっつの。私の中身はさんじゅげふんげふん。

 もう大も大の大人なんだよ。



「つーか、なんでこんな環境で護衛とか必要なのー? 要らなくない? 年齢問わずみんな青春謳歌してるだけよ?」

「サクラさん、シークレットサービスってのは、要らない状況でも必要なんですよ。そういうものなんです」

「私、こんなかわいいけもけもさんがいたら盗みますね」

「盗む」

「ええ、盗む」


「今ちょっとだけ護衛の必要性を感じたわ」


 んでまあ、毎日部屋からクラスへ行くのですけどね。


「あ、サクラ様、ご機嫌麗しゅう」

「あ、ども。確かテリヤキのお嬢様のバガ子さん」

「ええ、本日もよろしくお願いいたしますわ」

「ソッスネ」


 んっはーつかれる。ちゅかれる。お嬢様会話難しい。


「本日もそのお召し物? 大変ね村の首長さんは」

「(うるせーはげ)丁寧に作っていただいた服なんですよーあはは。今年か来年には絹の成る木を植えるから特産品になるはずですよ」

「大変ねえそういうことを考えないといけないなんて。私はなーんにもそういうことは考えないし、未来もばっちり決まっていますわ」

「ソッカー」


 あーイラつきますねマウントってのは。

 んで、そんななかにも楽しい出会いというのがあって。


「あ、おはよーソラちゃん」

「おはよーきつねのお人形さん!」

「またそれか」

「またそれだよ」

「そんなにデフォルメされてるかねえ、この体」

「魔導アニメに出てきそうな体じゃん。おつきの人もイケメンに美女だし」

「醤油顔がイケメンかは議論の余地があるけどエルたんは美女でしょーもう最高」



 ルーデルより北の国『カクニ』の偉い人ソラちゃんと出会えました。

 カクニは普通の君主制国家なんだけど、ソラちゃんは2番目の王位継承順位を持っているんだよ。っかー王族っすよ。でも私並みに服装とかは地味なんだけどね。


 ちなみにこのカクニ、どうも位置を計算すると、うちの〈北の森〉を〈北東〉に抜けるとカクニの領内に入るみたい。

 この世界にきて最初の方に北をちょっと探索したらオークの集落があって逃げ回る羽目になったので、間にオーク部族が国を作っているかもしれないけど、とにかく北方面を開拓すればカクニへぶつかるかもしれないんだよね。

 半径5キロもある巨大な円の北側って言っても、ちょっと精度なさ過ぎて困るよね……山手線でいえば、池袋と上野の間の駅って北の範疇だと思うよ……。


 ただ、カクニへの直通距離は【方位磁石魔法】と【地図魔法】を使って計算してるから、そこまで間違ってないと思うんだ。

 今度【座標魔法】、複数個のとある点を基準とした座標、そういう魔法を教えてもらえるから、それではっきりすると思う。最初のとある点はルーデルの真ん中に設置しておこうかなー。しかし、やっぱりこういう魔法あるんだね。アメリカの軍事衛星から派生した例の座標システムみたいなもの、魔法であるんだねえ。あれとはちがってかくかくしかじかだから精度は悪いけど。



 なんでこんなにカクニへ入れ込んでいるかっていうと、シンパシーを感じているから。カクニは独立したばかりでまだまだ貧乏。うちも開拓したばかりで貧乏、似た者同士。しっぽぽよんぽよん。


 一応道はルーデル経由では繋がっているんだけど、特産物を貿易し合うほどじゃあないんだよね。でも今度遊びにいこう。


 そういうこともあって、純粋にお友達としてやっていける感じなんだー。

 こういう、同じ世代のお友達っていなかったので新鮮。まあ私の中身はさんじゅげふんげふん!




 んで、まあ、勉強しているんだけど、どうにも攻撃魔法ってやつはからっきしなんだよね。難しいなあ……何でもできる体とはいえ、出来ないというか苦手なものもあるみたい。

 お役立ち魔法や味方への能力向上なんかの、便利系支援系はとっても向上しているから、それでここに来た意味はあるかな。


 ああそれと魔法陣。これは凄い勉強になってます。エルたんがゴブリン防衛線の時に使った〈高度〉な【魔法陣】なんかは全然教えてくれないけれど、基本的な【魔法陣】なんかは教えてもらったよ。攻守と増強弱体に遮蔽シールドとか。そして土に作用する魔法陣なんかね。

 土に作用するのは土壌改良とか豊作にする魔法なんで、非常に高度な魔法なんだけど、理論は真っ先に教えるみたい。練習させまくって学校にいる間にモノにさせたいのかなー?



【各種制御魔法】は教えてもらったー! これで開拓が楽になるよ。らくちんらくちん。らくちんを2倍にするとらくらくちんちん。


 魔法理論とか錬金術についてとか、そういうのを一杯教えてもらいつつ、部屋に帰ったら私がエルたんに教えます。なんだかんだで魔法はエルたんに任せるのが一番だからね。エルたんも入学させればよかったかな……。


 でもでもさすがはエルたん、学校だけあって教科書があるんだけどそれだけでバリバリ勉強してバリバリ技術などを身につけてます。きみ、教科書あれば全部作っちゃうタイプの人だね。あれ、私が教えてるってさっき言ったけどあれは嘘だね。


「ご主人、なんか子供のころを思い出しますね。文字が読めたので、毎日魔法理論を読んでいたんですよ。そしてそれを実践するみたいな。魔法陣に注入とか、そういう魔素の受け渡しは上手くならなかったんですけど、ずーっと理論読んで実戦していたので魔素のイメージ化及び操作、つまるところ魔力ですね、そっちはとってもうまくなったんです」

「そっか。それで今のエルたんがいるんだね。魔法ぶっぱならエルたんでもできるし、防衛戦、あるかわからないけど、その時は期待しているからね」


「はい! ご主人様!」



 という感じで一年目が終わりました。そう、基礎一年と応用一年で二年あるんだよこの学校。短期大学みたいだね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る