第41話 とくちゅうってたまにだめなときもあるよね


 ざ゛む゛い゛――!


 今は真冬の2週間、しかも寒波が到来。

 外はマイナス45度。じ゛ぬ゛。さすがに普通の木造家屋ではどうにもならないので入れる限りの人をサクラの中型砦に収容して、ガンガンに火を焚いてます。

 まぁ、まだまだ入れる人に余裕あるんだけどね。


 エルたんの【気温操作魔法】も駆使し(ついでにそれを【ラーニン……見よう見まね】して私も使いつつ)なんとか室内温度を20度に。

 超古代ロボットの大工さんも、断熱処理を大急ぎで行ってた。


 そんな中お外でトレーニングを行うモロッコ氏。いやモロッコシー。やっぱりあれ超古代の遺産だわ、人間じゃない、うん。




 トレーニングといえばハンタです! 厳しいリハビリやトレーニングを積んだことにより義足の動作が上手くいくようになり、かなり元の足に戻ったそうですってさ!


「やったーやったー!」しっぽぽよよんぽよよん!!

「私の魔道銃もエル様に整備していただきましたし、エル様には感謝でいっぱいです」

「てへへ、お礼を言われるなんて。私ご主人に買われてよかったです」

「ふふふ、私の鼻と勘は本当によく効くのだ!」


 きゃっきゃうふふ。



 寒波が来ているので、領民の皆さんが食うのも寝るのもこの砦です。

 食うのに関しては砦から香辛料やハーブを倉庫から放出して、いつもより香りが効いて美味しい物を用意。やっぱ香りって料理のおいしさに非常に関わりますなあ……。

 寝るのは雑魚寝になっちゃうのだけど、そもそも避難用にこの砦は作ってあるので、柔らかいシートを用意してあるよ。ハリコー一家が頑張ってくれた。というか魔導縒り機様。縒るよるだけじゃなくて織るおるもしてくれる。



 寒波が去るまではこんな感じだねえ。この時ばかりはきつ寝を許してくれる。ごろーんごろーん。ぐう。寒波嫌いだけど寒波好き。ごろーんごろーん。ぐうぐう。


 ――――


 寒波が過ぎました。さて、トレーニングですね。いつもの地獄トレーニングからは逃げ出しております。


 そう、今回やるのはハンティングです。ハンタが回復しましたしね。


 この冬で二丁ほど新たに魔道猟銃を作成できたのでハンタの持っている旧型と合わせれば五丁の猟銃が手元にあることに。この内二丁はケンタウロスのケンさん夫妻に。奥さん身重だから使うのはかなり後なんだけど、慣らしはしておくとのこと。


「んでんで、ケンさんなんかが持っている【強弓】なんかは、発射した投射武器の速度とかぶつかった時のエネルギーを増すスキルとか魔法の類なんで、銃になっても問題なく使えるんだよね、べんりー」

「ご主人、御託はいいから練習しに行きますよ。特にご主人の魔素込め能力はとんでもないので、特注魔道猟銃の、魔素タンクのリミッターをぶっ壊す可能性があります」

「はーい」



 いつもだったらここで魔導猟銃を壊すのだけど、さーすがにそんなことしません。えっへん。しっぽよん。

 丁寧に扱いましたよ。

 それがふつーってゆーな。


「基本的に魔導銃の魔素タンクという物には事前に充填しておくことが可能です。物によるけど猟銃なら5発から10発くらいは弾込めができますよ。」

「ほー、一応連射が効くというのはそいうことなんかな?」

「ですです。ですので、今のうちにスッと注入して」


「こうかな、スッと……」

「いい感じ。で、威力の段階ごとにリミッターがあるので、注入して止まったらカチッと次のタンクの蓋を外して、止まったらカチッとを繰り返してください。」

「物理的に蓋が無いのに蓋を外してカチッとなって。感覚的な。しかし私は地味に魔力の扱い魔素操作とかは最強の部類に入るくらいうまいからね。ほーれっと」


 カチカチカチカチ


「さすがですね。じゃあ発射しましょう。これは20段階までリミッターがありますけど、大型バイソンモンスターをしとめる程度なら……7クライ? 魔素はどうしても性質上ゆっくりとですが消散するので、狙う前に魔素を込め直してください」


 それでは連取用の的を狙ってー。はっしゃ!


 どぉ――――ん!


 練習用の的を吹き飛ばしてものっそい遠くの大地を深く抉る魔法弾。


 反動でごろごろごろーとすっころぶ私。


「いやこれ、いやこれ!? 反動制御も何もないよ!? 肩飛ぶかと思った!」


「…………モットコマカク、50ダンカイニ、シマスネ。チョット、ツヨク、マホウジン、カキスギタ」


「反動制御も書き込んでくれると嬉しいな、嬉しいな!!」



 ちなみにハンタの旧式銃は、照準合わせなどの軽い調整をした後に、平均的な威力で平均的な反動制御で、普通にハンティングしてた。

 ケンさんの〈普通に作られた〉魔導猟銃は、サクッと大型バイソンモンスターを始末してた。


 わたし、あれじゃだめかな?


「しくしくしく、せっかく特別に作ったのに捨てるんですねえ。しくしくしく」

「わわわ、わかったよ、反動制御とか威力の扱い頑張るから!」

(ニタァ)


 なんかちょっとぞくっとしましたけど、特注の魔道猟銃、使いこなせるとかなりのもんですからね。

 こういうのを作り出せるエルたんは凄いなあ……。

 忌子な割には本当に、魔法術とか魔法学とかいうの? そういうのに関しては完璧な知識を誇るんだよね。どこで勉強したんだろ。


 まあいいや。


 勉強といえば来春のルーデル魔法学校入学だ。理論をいっぱいもらってこようっと!

 わたしも攻撃魔法を扱えるようになりたい!! ファイアボール!! ライトニングボール!! ウォーターカッター!!

 ぐへへへへ。


 思考がそれた。


 でまあ、使えない特注魔導猟銃なんですが、アナログ操作なら一応扱えましてね。


 適度に自力でチャージを止めて、自力で【反動制御魔法】を展開して撃てば、割とどうにかなりまして。一回一回チャージをしないといけないんですけどね。

 とりあえずこれで練習しまっす。



 どーん


 どーん


 どーん


 どぉーん!


「おし、大型バイソンモンスター昏倒! こいつぁ仕留めたな!!」


「ご主人、あっさり慣れてきてますね……。上限のリミッター以外は無段階でいい気がしてきました」

「いや、でもこれだと5個ある魔素タンクを1つしか使えないからやっぱりリミッター入れてもらったほうがいいんじゃない? 反動も自力じゃどうにも。補助魔法でも書きこんでくれないとやっぱり体に来るよ」

「そうですね。じゃあ細かーくリミット段階を設定して、そして素早く第二射第三射が撃てるように、反動制御がとってもしやすいようにしますから!」

「はーい」


 大型バイソンモンスターを仕留めたというところで【狼煙魔法】を発射し、狩人系の人を集めて輸送しました。こういう時本当下半身が強靭な馬であるケンタウロスさんたちが頼りになるよ。ハラミ*でも馬刺し*でもいいけどね。


 エルたん製魔導猟銃の導入によって狩猟は第二段階へ。北の森にいる大型有蹄類モンスターの狩猟です。これが出来ればまたタンパク質の供給事情が改善するんじゃー。


――*説明――

 ハラミ…………ミノタウロスと牛をかけわせたミノウシというモンスター動物、モンブツ――2足直立歩行している牛――。の、名前

 馬刺し…………ゴンゴーン(身体が金属でできている牛)とウマをかけあわせたウマーンというモンブツ――岩石でできた体重2トンはあるんじゃないかっていう重馬で、飼料は石か金属――。の、名前。

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