第37話 ねずみの国相手にゃ錬金化学。万歳。後、新作魔導銃をどうにかしたいんです、どうにかしたいんです。



 暴風のように春はかけ去り、一気に夏がこの開拓村に飛び込んできました。あちー。


 さてさて、夏はモロコシの収穫の季節です。春植え夏採り万能栄養価の主食。さいこーやんなあ。小麦とコメは趣味程度の栽培でいいよね……


 収穫なのですが、普通に収穫できたのは7割くらい。他は…………


「この〈ピー!〉モンスターがぁ!!」

 ハリコーの【ハリセンボン】をまねた、【鉄釘千本】!

 無常なる鉄の釘がネズミを襲う!

 ネズミは針だらけになってSHOCKDIE!!

「ごしゅじ、おちつ……」

「もうネズミー国には立ち入らんわ!」

 ハルキ君からまねたファイヤーボール!

 BABOOM!

 ネズミは爆発四散した!

「そんな、わたし、いきた」

「うおおおおおおお!!」


 そう、収穫前のモロコシをネズミモンスターに食われていたのです。ファッキンネズミ。なにがネズミンミンだ、かわいい名前してかわいくない。


 昨年の三倍作付けしたモロコシの三割を食べたくらいですからね、数が多いんですよ。地下に巣を作って冬を越したらしい。こしゃくなー!




 と、私(とモロッコシー)が壮絶な戦いを繰り広げている中、ハリコーはしれっとエルたんに誘引殺鼠薬を錬金で作ってもらい畑に放出。

 あっさりとネズミを全滅させてました。錬金化学万歳。


「こ、こんなに頑張ったのに薬一つに負けるとは」

 がっくりとうなだれる私。「ですぜぇ」大の字になって倒れるモロッコシー。

「あんな数殺しきれるわけないじゃないっすか、体なんて使ってなくてさっさと頭を使うのがいいっすよ。経験値とやらになるハルキならともかく」


「あ、ハルキにさせればよかったな……童貞卒業したハルキに」


 さてさて、ネズミ映画絶対見てやんねーと息まき、隣でエルたんがしょんぼりしている中、ハンタが歩いてやってきました。


「ハンター!もうそこまで歩けるの?」

「お館様。ええ、歩くくらいには馴染みました。エル様の魔法技術はものすごいですね。本当の足があるようです。木製の義足で十分だと思っていたのに、それ以上の義足が私にきてしまいました」

「いいんだよハンタ、良い義足が手に入ったのはとてもいいことじゃないか。走り回れるようになるまで馴染ませようね」

「よかぁ。なつ、おわり、くらい、なじむ」

「そっかそっか」

「エル様もかなり喋れるようになってきましたね」

「毎日ちゅっちゅっちゅっちゅ吸ってるからね。私自体【呪いを吸う技術】が上昇してきてるしね」

「は、はずか」

 顔を真っ赤にしてうつむくエルたん くぁわぁぁぁぁぁいぃぃぃぃ!!!


「それではトレーニング行ってまいります。モロッコシー、よろしく頼む」

「あいあいさー!じゃあ今日も基礎訓練からだぜぇ!!」


 そういうと二人はトレーニングのために出かけていきました。あの時はごめ……ううん、庇ってくれてありがとうハンタ、がんばってねハンタ。




「新作魔導銃とな」


「うん、わたし、あつか、う」


「エルたんがとな」


「ばんばん、ばん」


 銃を持つ構えをしてバンバンするエルたんくぁわぁぁぁぁぁいぃぃぃぃ!!!


「はーかわいいーすりすりすりちゅっちゅっちゅっちゅ」


「ん……!ン……! ぷは、はずか……!」




「んで、どういう魔導銃を作るんだい」

「しんしき、りょうじゅう」

「ほえ!? 新式猟銃かな? 作れるの?」

「うん」

「魔術に関しては本当一番だね……」

「ざいりょ、これ」


「ふむ……鉄鋼……は作れる。カチンコの木……あるな。魔法鉱石……ないわ。魔法絵具……これもない。エルたん、これ売ってる物なの?」

「わかん、ない」

 小首をかしげるエルたん。くぁわぁぁぁぁぁいぃぃぃぃ!!

「はーかわいいーすりすりすりちゅっちゅっちゅっちゅ」


「むぐぐぐ」




「そうでありんすな、この手の物は魔法学校や魔法関連の商会で売っているでありんすよ。こいつらは独立した国営組織、ルーデルは都市国家だから国営じゃなくて市営でありんすな、そういう組織でありんすからそうそう簡単には売ってくれないでありんすなあ……」

「むうーなんとかならんかね。よう考えたら第1の壁の石壁改修が終わったら再度魔法陣張り直すんだし粉は必要でっしゃろ?」

「そうでありんすなあ……そして売ってくれるかというと……安全保障上の理由から拒否されそうでありんす……。筆頭、魔法鉱石どこかから採ってきてほしいでありんす」


「ど、どこにあるんだいそれ。しかも初めて聞いたし……」


「でかいくにのそうこでありんす」

「むりでありんす」

「……しって、る」

「ん、いまなんて?」

「わた、しが、どれいに、なっ、た、まち、は、…………こうせき、の、採掘街。今は、オクにおそわ、て、オクの、げほげほ」


「頑張って喋ったねエルたん。大体わかった。生まれ故郷的な場所は魔法鉱石が取れたんだね。そしてオークが支配していると。むりだーあきらめよー」


「ゴブリンで必死だった我々にオーク軍相手に立ち回れるとは思えないでありんす」


「まどう、じゅう……」


 オークってのは緑色の人(イノシシが混ざってるときもあると、【市長加護の権限】の知識がささやいてはおりますが)でして、野蛮で粗暴なんですよね。〈あえて〉まともな文化を持たない。

 といっても自給自足する程度の農業文化、他部族との交流はあるみたいなんですが。


「一般的に筋肉が強く、勇猛果敢な性格も相まって優秀な兵士を抱えていることがおおい、かあ。『種族と分類、その全て/著 コナンセ・ハリマリスイ』より。りむりむーり。わが村では鉱石入手は出来ませーん。防御魔法陣用の粉は宝箱から買おう」




 ……そういえば北の方探索していた時にオークがいたなあ。今度偵察だけしてもらおう。



 探索といえば西の探索ですが、ゴブ穴を抜けた先に村の跡地を見つけたそうです。焼き畑で暮らしていたみたいですね、あのゴブリン。うちが焼き畑されなくてよかった……

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