第36話 だいきぼせいてつ。ぼーえきってむずかしい
鉄鉱石とコークスがわが開拓地にやってまいりました。
「かじこおおおおおおお、ぶきつくってえええええええええ」
「まずはこれを鋼鉄にできるか、よね」
「出来るんじゃないの?」
「材料持って来て、はいドン、と作れるなら苦労しないわよ。試作しないと。本格的に稼働するのはそれからよ」
「難しいんだなあ物を作るって」
まあすぐに武具が作れなくていいので試験を見学しましょう。
試作高炉に、鉄鉱石とコークスをわんさわんさと入れて火をともします。実際は絶妙な配合をしつつ組んでいるそうなのですが、私にはわんさわんさしか見えません。
火を入れたら、送風して酸素を下から送り込む!今回の試作高炉は、川の水を使った水力送風機でガンガン送風するタイプです。魔力で水車が回るのを助けて送風量をあげたりしてますね。
「おあああああ!! 溶けてきましたね!! 高炉の下にどんどん灼熱の鉄が流れ出ています! どろどろだ!」
「これをかき集めて次の工程に鉄を持っていくわ」
「複数工程あるんですね」
「ええ。溶かして、不純物と炭素を取り除いて、製品にする、大きく分けてこの三工程ね」
へえー。
次の工程では、それなりの大きさの壺みたいな炉にどろどろの鉄が投入されて、下からブクブク空気を送ってました。
「これが転炉工程。空気は魔法で酸素主体のガスを送り込んでるわ。ここで不純物と炭素を取り除くのよ。高炉よりは断然地味で地味で地味だけど、これが鋼鉄を〈大量に作る〉一番重要な工程よ」
「へえー。この炉にはそれなりに私が〈産んだ〉金属が使われていますねえ」
「炉の素材と不純物が反応しないために魔法コーティングをするのだけど、やはりそういうのは〈丈夫で強い〉素材が一番ね。可能なら耐火煉瓦に魔法コーティングしたいのだけれど……」
「それ、そのたいかれんが。絶望的に作れないって聞いてますね……」
最後の工程。先ほどの炉から取り出されたまだ熱い鋼鉄に何か吹きかけたり、延ばして板状や棒状(Hの形をしていました)の形にしていました。
「含有元素及び炭素の微調整を行った後、扱いやすい形状にして、一連の作業は終わりってところね。もっと細かい作業は鍛冶屋や工場で行われるってわけ。いろいろ端折ったし色々とごまかしたからわかりにくいかもしれないけど、大目に見てね」
「わたくしきつねのサクラ、1割も理解してないので大丈夫であります!」
とりあえず〈鋼鉄〉は大量生産ラインで作られるようになったのだ!!
今は生産量も少ないけど、徐々に増えていくであろうさ!!
「じゃあさっそく武具の更新を――」
「先に道具の改良をしたいのだけどいいかしら。道具が改良されて効率が上昇してから武具に色々とまわしたいわ。勿論最優先で兵士と狩人の武具は作るけれども」
「優先順位ですか。なるほど理解。きつねはりかいしましたぞ!」
「あんまり理解してないわね」
よくわからな……りかいしたので、サクラの開拓地パールライトは〈木と石、鉄の文明〉から〈鋼の文明〉に進化したのである!!
現状だと貿易を切らしたら鋼鉄は作れなくなるということなので、なんか日本みたいだなーなんて思いつつ貿易をちゃんとしようと決意を新たにしました。がんばれアキちゃん。
「もっと大きな炉、ですか……」
「ええ、試作してある各種炉じゃせいぜい10キロの鋼が手にはいるだけね。後一桁は増やしたいわ」
「えーと、物体Xを10ばいにするとき、物体Xのたいせきは1000ばいになるはずであって……」
「そこはほら、魔導があるから。そんなにはならないと思うわ」
「さいさんはとれるのでしょうか」
「テリヤキは錬鉄までしかまともに生産できておらんさかいに、この鋼の鉄そのものが高価な貿易品になるでありんす。多いに儲けるでありんすよー」
わかったけど、ぼうえきはめがまわる。
――――
疲れた頭にはハンタへの魔素供給。これをやってすっきりしましょうそうしましょう。
「どう……かな」
「あぁ……すごいです……とてもよいです……」
「ちょっとーーー!?!? R18おーばーはやめて!?」
「ごしゅ……じん……?」
「ああお館様、本日も義足の調整に来てくれたのですか。ありがとうございます」
「oh」
うん、普通に調整を行って終わったよ。
夏までもう少しなんだけど、結構いい感じに義足になってるねー。エルたん魔法に関しては超一流だね。
そのエルたんですが、毎日行っている結果、こう、従順? になりましたね。うふふふふぐへへへへへ。秋の繁殖期が楽しみだぜ。ぐふふふふふ。
川辺に試験的でミニマムとはいえ、「製鉄所群」が建ったので、大規模な移住も行われたよ。ここだけで30人はいるかな……? しかもみんな専門家。ここはここで重要防御施設に認定しないと。
これによって開拓地も人口100人突破。もう完全に村になった感じだね。
これを祝って開かれた宴会場にて。
「というわけで皆さん、これよりここは『開拓村パールライト』として独立独歩で歩んでいきたいと思います!!」
「おめでとう市長。俺たち木こりはどんどん木材を供給していくぜ」
「あっしら農民はその優れた肉体と栄養価の高い食材を生産していきやすぜぇ!」
「足が使えない私が隊長なのはおこがましいのですが……狩猟及びなめし組はもっともっと肉と皮、そしてそれの革の供給を増価させたいと思います」
「服飾はテリヤキと張れるレベルっすね。がんばるっすー」
ワッショイワッショイ! やったぜ市長! ワッショイワッショイ! やったぜ市長!
「……まほ……の……わた……も……がんば……る……!」
こんな感じで良き春は過ぎ去り、夏前半がやってまいりました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます