第34話 鉄がないと始まらへん。





 この星は地球より一年が長い、といっても一年は一年なんだよね。

 春も油断なく行動していこうっと。



「やることは……西と北の探索、……あと船っぽい舟の建造、サクラの小型砦の石材化、うーん、……ああ、武具の強化。そうだね武具の強化が一番重要なやつだわ」



 ――――


「探索はハンタさんとケンタウロスのケンさんがよろしいのではないでしょうか」

「ハンタが【地図魔法】もっていて、ケンさんの【目測技術】があるなら迷わないし発見もしやすいかな? うんそれで行こう」


 というわけでお二人に伝令。ケンさんの上にハンタが乗って、出かけていきました。気を付けてねえ。




 んで、お舟。

 お舟で運べば凄い量の岩塩などが運べちゃうんだよね。地球でも水運がめっちゃ大量の品を輸出入していたよね。

 だからお舟が欲しい。ルーデルに卸したほうがいいんだけど、交易路がない今だと運べる量に限界があって結果的にいっぱいお金が入ってこない。

 あと、この集落って遊ぶところがないから、遊べる場所に連れて行ってあげたいなあ。


「大工のロボットさん、舟の建造は出来るの?」

「大工といっても超古代文明の遺産ですからねーわたし。なんでもつくれまっすー。武具は難しいですけど、建造ものなら何でもできまっすー」

「材料って何がいいの?木材とほかになんかあるの?」

「そのしっぽっすねー、浮き輪になるっすねー」

「ぎにゃあああぁぁぁぁぁぁ」大逃走するわたし。

「うそっすよー」


「はぁ……はぁ……それで、本当に必要なのは……?」いまだしっぽ警戒中。

「木から出た油〈木タール〉、あれば石炭製のタールとかっすかねー。舟の底に塗って撥水はっすい防水に使いたいっすー」

「どっちも作れるよ!! 材料はある! 炭焼きの副産物と、コークス作るときの副産物だよね!! 鍛冶屋は拡張したいしするから、将来的にどっちもたくさん生産できるはず!」

「そいじゃ、多用途な木タールは使わずに、コールタールを作ってもらって使うっすーついでにピッチも取ってきてほしいっすー」

「はーい。んじゃあ鍛冶屋さんに聞いてくるねえ」




「あのねえ、コールタールは石炭を蒸し焼きにしてコークスっていうものに作り変えるときに出るのよ。うちのどこにコークス生産できる炉があるのよ」

「だめなの!? カジコでもダメなの!? 高炉は?」

「石炭と鉄鉱石を入れて鉄を取り出すための物よ。コークスは作るためにコークス炉が必要。大抵のコークス炉は全部金属でできているから普通のレンガで頑張っているうちの設備で作れるものじゃないわ。宝箱から小型魔導コークス炉買ってくれるなら別だけど」

「無理です…… ちょっとだけでも作れないの?」

「コークスという乾留物以外にもガスやアンモニア、硫酸なんかを得るからどうやっても大規模設備ってやつになるわよ。だからコークスなどは交易で入手して来なさい。ルーデルなら確実にあるでしょうし、テリヤキだって工業の魔導近代化を行っているから多少はあるんじゃないの」

「そっかぁ……」


 こーぎょーは難しいんだねえ。商人のアキちゃんに入手してもらえるよう頼んでおこう。



 そうだ、家や壁などの石材化はどうなっているんだろう。またもや大工のロボットさーん。


「順調っすー。私が魔法で生み出した接着剤を石と石の間に塗っているので、普通に積んだだけの者より頑丈っすー」

「魔法できるの、ロボットなのに」

「ロボットなのに出来るっすー」

「すげえ」

「すげえっすー」


 石材化はまず私の小型砦から。改装して中型砦になる予定。一周り大きく、一階層増築。なんたって最後の砦だしね。そうしたら木の壁を石材に変えていく感じ。みんなが住んでいる家は冬場に耐えられたから後回しで大丈夫だと思うんだよね。




 あとは……武具かなあ……ごぶごぶ攻防戦でちょっと痛感しちゃったんだよね。

 死者が数人重傷者が数人出たけど、布の服を詰めに詰めただけじゃ、【防具強化魔法】で強化してもやっぱり難しいんだよ、致命傷を防ぐには。

 やっぱり、ちゃんとした防具が必要なんだよ。鉄製、可能なら鋼鉄で出来た防具が。


 カジコー!!


「んー……リーダーの生み出す鉄を炭で炭素調整して粘りのある鉄にしてはいるけど、ちゃんとやるならもっと大量に鉄が必要よ」


「むう…… ルーデルから鉄を交易……? でも交易路の無いルーデルからそれらを輸送するのはいくらモンブツのリャバでも無理があるなあ……」


「舟が作られるときいたし、テリヤキから輸入してもいいんじゃない?」


 うーん、商人のアキちゃんに聞いみよう。


「そうでありんすねー、鉄鉱石が見つかるまでは、それを輸入するといいでありんすね。というかそれしかないでありんす。くず鉄が扱えるなら非常に安価に手に入るくず鉄を専用炉で溶かして、えっちらおっちらやってよい鋼鉄を作る方法もありんすが」

「ほええ」

「ま、鉄鉱石からの鋼鉄でありんすね。」


「ほうほう、それでそれで」


「それででありんすね、その鋼鉄を魔導自動縒り機にかけて何らかの防具にするでありんすよ。あれは繊維なら何でも加工できるでありんすから、あれで独特で強い防具を作るでありんす。細かいことはカジちゃんに聞くでありんす」


「ふーむ」


「そいたらいっぱい作って、ある程度テリヤキかルーデルに売るでありんすよ。その利益でさらに鉄鉱石を買って、利益を増幅して、もっと鉄鉱石を買ってウハウハになるでありんす。貿易の始まりでありんす!!」


「うんきっと多分分かった恐らく。詳細はカジコとアキちゃんにまかせやう」


 わ、判らなかったわけではないからね!!


 防具はなーんとなく流れが掴めたかな。主に鉄をどうにかする。自力生産するならコークスと鉄鉱石。


 武器は…………。


 カジコォォォ!!



「やはり金属、鉄よ。槍の切っ先だけでも金属にすれば、市民でも致命傷を負わせやすくなるわ。今まではどちらかというと、鈍器みたいな扱いしかできなかったわよね」


「まあ、民兵レベルだったからね、殴ったほうが扱いやすかったはずだよ。本格的な兵士はケンタウロスさんと、ハルキ君位だしなあ……」


「武器も防具も、鉄の調達、特に鋼鉄ね、それが上手くいかないとどうにもならないわね」




 うーん、てつかあ、てつ。鉄かあ。

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