第31話 砂漠のきつね~ごぶりん殲滅戦~



 戦後処理を終えたあと、すぐに逆襲準備に取り掛かることに。私疲れたので寝て待っていい? 果報は寝て待て。だめ? そうか……


「そいじゃあ行ってきます……」

「市長気をつけてな」

「はぁい……」


 送り出された先はゴブリンの例の穴。なんでも、私が統率すると【統率】の力が加わって素質や能力にプラス効果があるんだとか。

 ゲーム?いやいや第二次世界大戦のロンメル将みたく、優れた統率で能力以上に軍を動かした事例もあるしね。ゲームではないな。

 そういえばこれでハンタを助けて雇ったっけかねえ。


 今回はほぼ偵察。いやー、弓はあっても矢がないでござるよ。重騎兵ケンタウロス部隊が少し蹴散らすそうですが。

 ケンタウロスって兵士としても一人のヒトとしてもすごい逸材なのにルーデルやテリアみたいな〈都市〉では冷遇気味なんだって。蒸気、内燃、魔導など各種機関が発達している上に、一人ひとりがデカいからだそう。ふーん……。


 白銀のキュウちゃんに乗ってケンタウロスを率い、穴の近くに。いやーやっぱり臭いなー。今は20時正午ごろ、森の中からでも十分に穴を見通すことができるかな。じー。


「いるなあ。大きな緑色のゴブリンもいる、大将かな?なんか反省会しているわ10名くらいかな。名? いや10匹」

「突っ込んで蹴散らしますか? サクラさん」ハルキくんは参謀モードできていただいております。

「んー、やってしまおうか。コヤヤに乗っているエルたんが魔導銃で狙撃したら突撃開始ね。みんな予備の木槍はもってるよね」

「準備していきたでガンス。われわれケンタウロスは人の形が前足の真上にあるから、普通の槍でもランスチャージに相当するリーチと威力を出せるでガンス。まあ槍は粉々になるでガンス」


「私は普通の長さの槍を担いできたよ。キュウちゃんの上で暴れてやるぜ。そいじゃ、エルたん狙ってね」


「ぁ!」

 ピシッと敬礼をして狙い始めました。あたれーあたれー。

 ……………………。


 どーん



「当たらなかったけどまあいいや、突撃!!」


 ダダッダダッダダッ!!


 4体のケンタウロス、1体の巨大きつね生物、計5体によるランスチャージ攻撃ですっ!!


 グサッ! バキィ! ドガァ!

 ズゴォ! ギニュウ!


 槍が次々とゴブリンに吸い込まれて突き刺さり、そのまま突撃の圧力で槍が破壊。しかし食らったゴブリンはほぼほぼ即死のダメージ。

 私は槍は外したけど魔法の【石ドリルアタック】(犬の頭蓋を破壊したアレ)で一匹を穿つ!

 そしてキュウちゃんの【前足びたーん!!】一匹が圧死!

 からの!!

『地獄の業火よ!!』


 炎の息を、混乱しているゴブリンに吐きつける!!


 熱さで転がり込むゴブリン!! 焼け落ちるゴブリン!! いわゆる範囲攻撃ですがケンタウロス部隊はすでに過ぎ去っていて無傷、そして第2攻撃をする構え!


 いや、キュウちゃんだけ圧倒的に強くない? まあいいや、強いのは正義。


「よし、第2回目の突撃をしたら逃げる!!やろう!!」


 ダダッダダッダダッ!!


 2度目のランスチャージ!といってももう表に出ているゴブリンはほとんど死んでいるので、ケンさん夫妻のチャージに子供が補助する形。私は2歩離れて逃した獲物をすくい取って殺す係。

 こういうのが自然とできているのが【統率】の効果なのかな?ロンメルすげーな。砂漠の狐ってあだ名だったしね。おなじきつねじゃん。



 2度めの突撃も無事に終了し、そのまま撤退。タウリンのうち、リンを監視につけて一度引き上げたよ。


「戻ったか市長」


「うん、とりあえず穴の前に出ていたゴブリンを蹴散らしてきた。あとは白兵攻撃? で穴の中を掃除するだけ、じゃないかな? どうなのハルキ君」

「はい、サクラさんのおっしゃるとおりです。穴の中を掃除して終わりにしましょう」




「ということで、選抜メンバーは俺ら木こり10名と、石屋の6名、メインメンバーの俺、モロッコシー、エン、カジコ、ハルキ、そして市長だ。22名だな」

「穴が狭いからケンタウロスやキュウちゃん、モンブツは入れないんだよね……」

「そうなります。今回私が突撃役を務めますね。スキル組み替えれば【防具強化魔法】の効果を強くできます」

「その後に私キッコリーモロッコシーが続いて、そしてみんながズダダダーっと」

「狭くて長い武器が使えないからな、一般連中は商売道具で戦うことになる。戦闘は可能な限り避けたいな」


「そして我々は槍の半分の長さの棒、と。鉄の切っ先が付いているけども」

「あるものを利用するしかないのよ、これが精いっぱいよ。切っ先はあるけど、鈍器のように使って。太く重い角材を選んで加工してあるわ」


 よし!

 ――集中!!――


 服を幾重にも着込んで、進軍開始!!


 まずは穴の前を占拠。これは何の妨害もなくできちゃった。

 松明を投げ入れて空気が通っているかを確認してから穴の中に。

 内部は洞窟っぽい感じ。いや、穴なんだから洞窟でっしゃろな。

 罠があると思うので慎重に進んでいくよ。罠探知はカジコとエルたんが強いので、なんだかんだ二人が前に出る感じに。

 突撃隊長ハルキ君は1.5列目に。今度は探知系にもスキル振ろうね。


 罠を解除しつつ進んでいたら道が分岐し始めた。ので、みんなで考えた結果一般人もグループ化して行動することにしたよ。ちょっと不安だけど負けないよね。


 分岐する道をゆっくり進んでいくと、後ろのほうから叫び声と金属が交わる音が。どこかで交戦が始まっている!!


「戻る?」


「俺が助けに行くから市長やハルキは前に進んでくれ!」


 といってキッコリーが後ろに戻っていきました。


 それでも進む一行に、遂にゴブリンが襲い掛かってきた!! 多分5体くらい! いや、5匹!


「!」

 エルたんは冷静に魔道銃でショット!

「鍛冶屋の武器扱い舐めないでよね!!」

 カジコは巧みに棒を振ってゴブリンを迎撃!

「そいやぁ!」

 ハルキは棒をもって突進して後続のゴブリンの動きを封じる!


「ぁ!」

 エルたんは撃ち終わるとすぐに接近し、持っていたナイフで喉笛をかっ切った!!


 え? エルたん? あなたそんなことできるの? え? 何者?


 なんて唖然としているとカジコがゴブリンの頭をかちわっており、ハルキが棒の切っ先で心臓を突き刺していました。

 後2匹は逃走を開始。


「逃がすか! 【土制御術】!」


 私は地面に手を付けると、制御術を使って2匹の脚を土の手でつかみ転倒させる!

 伊達に土制御を1年間使っていたわけじゃない! 遠距離発動くらいはできるんだぜ!


「さすがサクラさん!!」

「いくぜぇいくぜぇ!!」


 転倒したところにモロッコシーとハルキの無慈悲な一撃が振り下ろされ、それは一撃では終わらずに何度も振り下ろされ、無残な死体となり果てました。コワイナアコノフタリ。


「5匹も一度に出てきたんだし、この道を行けば大将に出会いそうだよね」

「準備は抜かりなくですぜぇ!!」



 もう分岐しない道を進むと、空間が広がりました。そこには緑色のゴブリンが。隣には魔法使いの杖っぽい杖を持っているゴブリン。シャーマンかな。


「クソウ キサマラナンカニオ――」


「いたぞ、エルたん、やれ!」


「ぁ!!」


 エルたんが何かを投てき! 完全に不意打ちになったそれは緑色のゴブリンの頭部に命中!


「ギャウアガヤギャア!!」


 うめき声をあげる緑色!そう、中身は……。



 中級錬金レシピで作った毒薬球なのである!!



「あ……が…………………………」



 ばったりと倒れた緑色。


「よし、ハルキ、死亡確認任務!!」


「おるぁ!!」

 ハルキが勢いよく緑色の心臓に棒の切っ先を突き刺す!何度も突き刺す!


 唖然としているゴブリンシャーマン!


「あのババアゴブリンも逃がすな!!」


 モロッコシーとカジコが突っ込み、袋叩きにされるババアゴ……ゴブリンシャーマン!!



 数分後には何かの物体だった赤色と、ぐっさぐさに刺されているゴブリンの死体が存在しておりました。




 ――勝利!!――




「いやー正々堂々と戦うと気持ちいいねえ」ばんざいばんざーい、しっぽぽよよんぽーん!

「…………ぁ」

「サクラさんって時に非情ですよね」

「うん、まあ、勝ったからいいかしらね」

「さすがお頭、正々堂々と勝ちましたぜぇ!」


 ばんざい、ばんざい、しちょうばんざい!



 みんなで万歳していると他のところにいたメンバーも合流。死者は木こりに2名、石屋に1名出ちゃったそうです。


「残念だけど、しょうがないね。もう一度募集をするよ。本当に残念だよ……。」

「ま、これで開拓地の危機は去ったんだ。募集に応募する奴らはすぐ現れるさ。死んだ奴は丁寧に弔ってやろう」

「そうだね……ところで奴隷とかはいなかったの?」

「いたぞ、結構多くな。みんな女性だった」


「ああ……それじゃみんな」


「数名気が強い女性もいたが、ほかはみんな楽にしてやった。生き残った者によると、全員生贄だそうだ」


「そっか」


「……ガラクタだが道具や金属なんかがいくつも手に入った。どれも潰して使いなおせそうだ」



「ああ、うん。使いなおそう。シャーマンゴブリンとか緑ゴブリンなんかが使っていた装備は魔法の品かもしれないよね」



 ゴブリン殲滅でばんざいですが、しっぽしょぼよんよん。

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