第29話 ごぶごぶ攻防戦
「遂にゴブリンが……! どういう状況なのハルキ君?」
「まず向かってきている総数は54匹。巣にいたゴブリンがこの冬で一気に爆発的増加をした模様。遠距離から削りに削ってこの数です」
「多い」
「今ケンタウロスたちは罠を仕掛けながら後退しています。もうちょっと削れると思います」
「かかか、か、壁の状況は? キッコリーに聞かないとわからないか。招集をかけよう」
私はサクラの小型砦の頂上部にまで登り、設置してある鐘を打ち鳴らします。
カーンカーンカーンカーン!!
この合図で全住民が重要防御区画、第1の壁の中に避難。事態を見守ります。
――小型の砦中央の間、大勢が見ている中、宝箱から買ったホワイトボードでメモを取りながら――
「さて、キッコリー、改めて聞くけど壁の状況は?」
「強化は完了してある。ゴブリン程度じゃあ普通に殴ってもびくともしないはずだぜ」
「遠距離組組長のケンタウロスのケンでガンスが、この際石材を投石してしまってもいいんじゃないかと思うでガンス。もちろん壁に取り付いたらの行動でガンスが」
「そうだね、投げられるものは何でも投げよう。モロッコシー、食料備蓄はどれくらいある?」
「モロコシは2月後半までは。あとは一週間ってところですぜぇ。冬明けでちょうどほかの食料がないんですぜぇ」
「お金はあるし、領民の食料は宝箱から買おう。水は井戸をバージョンアップ(500ユロルでした)させてあって少し大型の井戸になっているし、魔法の井戸だから毒は入らない、生活用水に心配はいらないね」
この言葉を聞いてほっとする領民の皆さん。
「そうだ、遠距離投石に使えるバリスタや投石機って作れるのですか、カジコさん」
「無理よ参謀、間に合わない。宝箱から買って」
「そうですか……クロスボウはどうなってますか?」
「リーダーが作り出す鉄を元に弓の部分を作ってるから作れる量に速度に限界があるのよ。今持っているのは4丁、あと1つ2つくらいなら籠城中に作れるかしら。そのかわり木槍に鉄の切っ先を付けられないけれども。どちらが優先かしらね」
「わかりました。優先は遠距離ですね。木槍は上段からぶっ叩く感じで使用しましょう。りょりょりょ、領民の皆さん、訓練の成果を見せるときです! ここはみんなの土地なんですっ! みんなで追い払いましょうよっ!」
しっぽふるふる、みみぺたーんだけど訴えかけますっ
「市長……」「市長がああいってるんだから、防衛だけでも頑張ろう」「少し勇気が出てきた」
おお、みんな少しだけ士気が上がったようです!! よかった。この土地を守らなくちゃ。
――――
ケンタウロス部隊が帰還。状況報告してくれました。
「数42、さしたる武器はなし、ただ
「最悪われらケンタウロス部隊とモンブツを解き放てば蹴散らせると思います」
「私達ケンタウロス、死ぬその最後までゴブリンを蹴散らし続けます!!」
「ありがとうタウ、そしてリン。でも可能な限り犠牲を減らしたいんだよね。持続性が無くなっちゃう。もうだめになった一番最後はそれ、お願いするね」
「「はっ!」」
正直兵士と凶暴な動物を解き放てば終わりそうな気がするんだけど、情が入っちゃってるのでそういうことできないのだ。きつねは情に厚い。
「到着予定が、あと4時間くらい? もうすぐか。あー、岩塩採掘場壊されてなければいいんだけど……」
――――
猛烈な臭いとともに、ゴブリン軍団が御到着。壁からそれなりの距離を置いて整列しました。規律よくない?
「ゴブリンに統率者が複数いるってことだろうなあ」
知的なハルキ参謀からスキルを振り直して脳筋になったハルキ軍曹に代わって、キッコリーサブリーダーがそう言います。そうかもねえ。
「じー。太鼓持ちと旗持ちを視認したよ。これって?」本当きつねの目は良いなあ。
「ゴブリンとしちゃあ、正規軍ってことだあな」
「この砦頂上からなら弓の技の一つ、
「無駄うちはしないでね、矢の在庫はそう多くないんだ。クロスボウは本当に引き付けてから撃とうね」
ゲームだったら矢が無限な奴も多いんだけどなあなんて考えつつ、実戦です。
「はっ!!」
ハルキ君が集中して矢を発射、すごい勢いでゴブリン軍のほうに飛んでいき、届かず落ちました。だめかー。
「だめかー」
「もうちょっと近くならなあ」
「ハルキさんで届かねえなら、わしらじゃあ届かねえでガンス」
なんてことを話していると
「エンさん、大丈夫です、私がやりますので」
「…………」
砦の頂上に現れたのはハンタの魔道銃を持ったエルたんと、ハンタ。はて? ハンタが魔道銃で狙撃でもするのかな?
「狙撃するの?」
「ええ、エルさんがしたいそうでして…… これは旧型で精度も悪いですから、エルさんでは……」
「まあにらみ合いの最中だしやってもいいけど、そもそも魔道銃撃てる?の エルたんって」
「……ぁ!」
左手でガッツポーズをとるエルたん。かわいいのでやらせてみよう。
「……」
「狙ってるけど、そもそも発射できるの?魔道銃って銃に魔素を込めるんでしょ?エルたん私以下の魔素放出しかできないよ?」
「……!」
どーん
ひゅーん
どかん
「発射できた!? 当たりはしなかったけど」
「!! !!」
小躍りするエルたん。いやー。いやー?
「なんで発射できたの?」
「お頭様、これは旧式なので使用者の魔素を吸うタイプなんです。エンさんは魔素を膨大に持っているというのだけはわかりました」
「あ、込められないけど吸わせられるのはすんげーできるんだね。なるほど」
「!!」
「よしよし、どんどん狙っていこう!!」
どーんどーん
ま、当たりはしませんが動揺を誘うのは十分。後退させるのに成功。
夜までその場所に張り付けることにも成功しました。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます