第28話 キュウちゃん、アキンド、そしてモンブツ。まれにごぶりん



 冬の間にあと一回ルーデルに行きたかったのですが、それは叶わず。春になって、まずは雪解けのし切っていない森の中を進んで進んで、ルーデル到着です。

「付いたねー、んじゃあ各種商会に卸してくる――」

「サクラさん、今はまだそういう状況ですが、ゆくゆくはベルベルベを中心に商会を作り上げちゃったほうが今後を考えると楽でしょう。ここにサクラ商会ルーデル支部を設置するのです」

「なんか大それたことをしそうだね。いま知略系に振っているハルキ君ならなんかできそうだね!」

「勇者スキルばかりなのが玉に瑕ですけどね、このチート。魔法使い系勇者という概念があって助かりました」


 まずはベルベルベ商会へ。

「おはよー、今日も錬金術をリアルタイムで作るよ、今回からは私は中級、エルたんは初級を作るからね」

「おう、助かるぜ。しかしうちらもだいぶ攻勢に負け始めてなあ……」


「渡りに舟を出しましょう、レンさん、レン・フォワンダースさん。わがパールライト岩塩、独占販売しませんか?」

 なんかかっこいいなハルキ君。

「な、あれは市場で最高級の評価を受けている岩塩だぞ!? そらお前らが売りさばいてるんだからどこに売るかは自由だが、錬金商会のベルベルベに卸されてもどうにもならん」

「そこで、総合商会を立ち上げます。この都市は資本参加なども行っているようですし、我々の総合商会に1枚かんでもらえば十分ですよ」

「なんでそんなことをして助けてくれるんだ?」


「錬金素材を買い取ってくれた恩もありますが、まあ、〈多少〉の経営関与をさせていただければ……」

「それが狙いか。ベルベルベは売り渡さねえぞ」

「どちらかというと、立て直しですね。噂によるともうすぐ消えるんでしょう、ベルベルベ。販売している錬金術の質も凄く悪くなってる。だから渡りに舟なんですよ」


「少し考えさせてくれ」

「よい答えを期待しております。消えてしまう前にね」



「……ハルキ君ってあんなに狡猾だったっけ?脳筋馬鹿だとばかり思っていたけど。ステータスが上がったことによって必要ステがあるスキルが解禁されていったり?」

「……? ……?」

「ごめんごめん、エルたんにはわからないよね。よっし、まずは錬金だね」


 ふたりがかりの錬金で650ユロルゲット。うっしっし、最初のころの基剤3つ60ユロルとは段違いに稼げるなあ。


 次に岩塩……じゃなくてモンブツ農場へ。また来るとは思ってなかったぜ……!


 今回は、もう一頭コヤヤみたいなものを購入できないかと思ってね。コヤヤにハルキとエルたんを乗せて、私はもう一匹のほうに乗りたい感じ。3人同時にコヤヤには乗れない。

 あと石と塩の荷役動物の確保。事業拡大するからね。


「やあハゲじじい。コヤみたいな動物を探しているんだけどない?」

「ハゲ散らかすぞ!!!!」

「ごめんごめんじじい」

「ふんっ…………極秘じゃが、ケンタウロスとキュウビのきつねを合わせたモンブツがおる、それはどうじゃ」

「け、ケンタウロスって人種じゃ……」

「だから極秘なんじゃ。見た目は馬以上のデカさのきつね、知識はケンタウロスなみ。魔法も使える。どうじゃ?500ユロルでよいぞ」

「安い……裏がありますねこれ。ま見てみましょうか」




 そのキュウビウロスという名のモンブツは見事なまでに毛が透き通った銀色で、しっぽが9本どれもふさふさ、その巨体で私を見降ろしておりました。


「どうも……なんてお呼びすればいいですか?」


『ほう、きつね娘か、珍しい。別に何とでも呼べ、妾はここから出る気はない』

「念話ですか。じゃあキュウちゃんで」

『きゅ、きゅうちゃ……』

「性別ってあるんですか」

『ないな。キュウビはもともと単独で超長期間生きる存在じゃった』

「そっかー。じゃあお友達になるってことでここをでましょう」

『なめとんのか』

「ほんきだぞこら」

『いくらきつね人間でも荷役されるのはまっぴらごめんだな』


「そうか、でも外の世界は広いんだよ、私の開拓地には木の壁が設置されて、私の家は小型砦になってる。草原は広大で蒼い香りを持ってくるし、ここと開拓地を結ぶ森は歩きにくいけど心が解放された気分になる。北の森はまだ未探索だしなあ、西はゴブリンがいて、脅威になってる」


『ふむ……』


「覗いてみたいと思わない?キュウちゃん。もうしっぽが好奇心でフリフリ振っちゃってるよ」



『いいかもしれんな。そこは開拓地なんだろう?都市の発展を見守れるのは面白いかもしれぬ。改造された体のおかげで、力が上がったのは確かであるしな。守護神として生きてやるか』


「あ、守護神は私です」


『そんなー』




 というわけでキュウちゃんを0ユロルでゲット。まあハゲで有名なモンブツ所長を脅したんだけどね。

 代わりにハラミと馬刺しの嫁候補を購入。同じ種族? 改造モンスター? にしておきました。


 これで残り50ユロル。あとはハルキ君がどう頑張って岩塩処分してくれたかなってところかな。




「総合商会をもう立ち上げたんだ」

「はい、さくっと。本部は開拓地、ここには支部をおきましょう。商人も雇用しないといけませんね。岩塩などは今回は急ぎなので私が売りさばいておきました。次回以降は商社が売り払うことになります」


「ウィッス」


 というわけで岩塩処分したお金も使ってモンブツを追加購入、リャバ――馬型モンスターにロバを掛け合わせたモンブツ――ってやつを買ったよ。6本脚のラバという感じ。いやーうちの開拓地普通の荷役動物がいないなーあはははは、はぁ……。


 ――――


 パールライト本部には商人のアキンドさんを雇用。めちゃくちゃ成り上がるチャンスということで燃えてた。うまくいけば超古代文明の都市に自分の商会が独占的に置かれるんだもんね。


 ルーデル支部の整備はアキンドさんとその部下を中心に、上級錬金術師のレンさんも加わってまとめ上げてもらうことに。ベルベルベのお金も使って、ね。うふふふ。


 テリアルブ方面に関しては本部から輸送隊を出すだけにするそうでっす。支部は置かないみたい。なんでだろねー?


「という計画でありやんすが、とかく東の森に道を作るのが大変なので5年くらいかかりそうでありんすなー」

「その間に村に発展しそうだねえ……本当に木こりたちには集中的に東の伐採をしてもらおうかな」

「5年もあればあちきは結婚出産してそうでありんすなー」

「アキちゃんには負けたくないぞポニテ牛乳瓶眼鏡め」


 アキンドのアキちゃんは19歳のそばかすが印象的な人間の女の子です。金髪。身長は165cmくらいかな?体形はまあまあ。いつも魔導計算機を持ちにへらにへら笑っているのが特徴。コネはないけど熱意がある。



「アキちゃんに商売を任せちゃったら、私がやることほとんどなくなっちゃったなあ。おうちで寝てよう、きつ寝、き-つ寝」



 ぐうぐう



 すぴーすぴー






「サクラさん! サクラさん! 遂にゴブリンが動き出しました!!」

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