第24話 はつじょう


 木こり、農民、そしてケンタウロスのケンさんのご家族がいらっしゃいました。一番後者どういうことだ。奥さんと子供二人。みんな凄腕の弓と槍使い。


「ここに腰を落ち着けて、厳しいけど偏見のない環境で暮らしたいと思ったでガンス」

「私たち子供含めて、軍事的な〈戦力〉になりますので、守衛や偵察などにもお使いくださいませ」


「う、うん。よくおいでくださいました、歓迎いたします。通常は狩猟や、馬部分の力を生かした運搬や農業などを行っていただきますね」


 いや本当、馬の部分馬鹿にできなくてですね、走ればサラブレッド引けば荷役馬なんですよね。パワーとスピードがすんごい。おかげさまで来年の開墾は大規模にできそうです。


 通常の時は親が狩猟で子供は岩塩手伝いをさせることに。

 岩塩の出荷速度が速くなれば利益も上昇するんだで!! ……ハラミとうまくやってくれることを祈る。ハラミ通常時は温厚だからだいじょうぶでっしゃろ。


 ケンさん一家はこんな感じかな?



 新規木こり組はそのまま木こり作業をさせて、農民組は秋ということもあり自然の恵みを採取してもらうことにしたよ。

 農民組が本格稼働するのは春から。それまでは……


「おらぁ! まだまだ走れるぜぇ! そんなんでここの開拓を出来ると思っちゃだめですぜぇ!!」


 そう、トレーニング。モロッコシートレーニング。もれなく私付き。そう、私も走らされているのである。ぐへぁ。


「モ、モロッコシー先生……もう、もうだめです……」

「まだあと3週は出来る!! そしたら筋肉トレーニングだ!!」無敵のマッスルポーズ!!

「ぐへぁ」


 ちなみにエルたんも練習に付き合ってくれているんだけど、汗一つかかないんだよね。オークとエルフのハーフって種族的に強いのかもしれない。

 私は毎回しっぽがへぼへぼになってます。ぐへぁ。いや、もう犬や単独ゴブリンなんかには負けない程度には強いんだけどさ。ただしもっともっと強くならないといけないのは痛感しているから頑張る。




 という感じで6月第4週に入りました。ゴブリンも処分しているし、やってこないし、実に平和。



 あれ、なんか心がざわざわするぞ。


 サクラの家の中にある市長の部屋できつ寝をしていたわたくし。横にはぐうぐう寝ているエルたん。まだ与える部屋がないのでここで寝ているのだ。最初はすごい恐縮していたけれどもね。

「おはようエルたん。いやーエルたん」

「…………?」

「エルたんってさぁ、こう」



「魅力的よね」

 目がぐるぐる。


「!!??」



 私は顔をぐいーっとエルたんの顔に寄せて。


 チュッ。


 ほっぺにキス。


「……!! !! !!」


 唸り声をあげるエルたん。くぁいぃなぁ。


「さ、私とでも〈おさかん〉をすることはできるわよね? ね? しましょ? ね?」


 コンコンコンコン。


「おはよう市長、相談があるんだが」


「今取り込み中なんだけどー!」


「!! !!」


 唸り声をあげるエルたん。くぁいぃなぁ。


「エル!? まさか……!! すまんがぶち破るぞ!!」


 どんがらがっしゃーん。


「キャーキッコリーステキー! 私と一杯ひっかけない? 」

「……おいおいこりゃやべえ。市長が発情期に入ったぞ……モロッコシー!! モロッコシー!! 蔦のロープでいいから持ってサクラの家まで来てくれー!! モロッコシー!! エルはとりあえずそのまま弄ばれてくれ!」


「!?!?」


 悲痛なうなり声をあげるエルたん。くぁいぃなぁ。


「いいじゃなーいしましょーう、このさいだれでもいいわーん、しましょー、しましょしましょしましょー!!」


 したいしたいしたいしたいしたいしたいしたいしたいしたいしたいしたいしたいしたい。


「来たぜキッコリー! どうしたってんだい!?」


「ああ、市長が凶悪な発情期に入っちまったんだ!取り押さえてベッドに括り付けちまおう!!」


「ああああああモロッコシー!! その体最高!! ねえ私といたしましょ! ね! ね!?」


「こりゃひでえぜぇ、即刻取り押さえるぜぇ!」


 ガシッ! グルグルグルグル!


「ぐるぐる巻きなんてひどーい、ねえちょっとー、ねえー」


「猿ぐつわもしちまおう。申し訳ないが市長、発情期が納まるまでは完全拘束させてもらうぜ。エル、怪我はないか」


 こくりとうなづくエルたん。くぁいぃなぁ。


「もごごごごごごご」じたばたじたばた。


 ――7月1日、冬――


 朝10時、サクラの家にて。


「すいませんでした!!」


 ジャパニーズ式ジャンピング土下座をする私。


「いや市長、発情期はけもが入っている亜人なら誰にでも来るからそれで謝る必要はないぜ」

「特に被害はなかったですしなあ!! マッスルー!!」黄金のマッスルポーズ!!

「いやでも聞き及んだ限りでは酷いですよ私の発情期。誰彼構わず。これ秋が終わる6月最終週は10日間何もできないってことですよ。冬ごもりする最後の準備ができないし、時間がもったいない……」

「お館様、3週目4週目はもう相当寒いですから、3週目までに冬の準備するのがセオリーなんですよ。4週目はほぼ冬なので、みんな引きこもってますよ」


「うう、みんなの優しさが逆に痛い」





 来年以降も、目が覚めると冬が来ちゃってたってことになるのでしょうか。怖いです。

 この発情期のおかげで、この間以外に月経などの女性的な生体機能が働かないという事実はあるのですが……



「ちなみに姐さん、ヤッちまうと発情期ってのはすぐに収まるっすよ。女性を果たしちまえば、発情ってんのは終わるんっすよ」

「誰とヤるのさ……」

「異性とだと妊娠しますし、エルちゃんとでいいんじゃないっすか? 発情期専門のお店とかあるっすから。発情期だけ同姓で身体合わせするのは別に普通っすよ」


 そっとエルたんを見る私。

 そっと顔をそむけるエルたん。


「か、考えておくわ……」

「!?」

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