新しい土地へ。商売商売。

第18話 しさつします。それが市長の仕事。




 戦いは勝利しただけで終わらないんだね、戦後みたいなものがあるんだ。


「まずは壁の修復だよね」

「ああ、あと逃げ出した労働者の補充もな」

「うん……キッコリーの弟子さんは逃げださなかったけど、農民さんは数名逃げちゃったね」

「まあしょうがないですぜぇ、安月給なうえにゴブリンの危機がある開拓地じゃあ、逃げますぜぇ」

「だよねえ。はぁ……」


「姐さんがどんよりしちゃだめっす。士気が下がるっす。もっとぽよよんぽよよんしてほしいっす」


「むう、そう言われても」

「まあ出来ることやることはわかってるさ、市長は適当に錬金術でお金稼いでくれ」

「うん……じゃあそうするよ」


 ということで、私は錬金術でお金を錬金することに専念したよ。


 こねこねこねこね こねこねこねこね こねこねこねこね こねこねこねこね

 ずーりずーりずーりずーり

 錬金基剤は生ものと状態固定したものがあるということなんだけど、この開拓地でとれる素材だと生ものしか取れない。ざんねん。しっぽしょぼーん。

 今は四月中旬。夏。うちの錬金基剤は生もの、夏はダメになる期限が早いわけで。こまめにルーデルに行って捌いたよ。4つ売却して120ユロルげーっと。丸薬売却で合計150ユロルなり―ぱちぱちぱち。


「よし身なりを整えよう。義足士なんかに会う時に足元見られてはたまらないよね」


 ということで第2壁内部の市民服程度のお店をうろついたんだけど…………。



 高い。



 やっすーいへろへろのワンピで500ユロルから。500て。お召し物クラスの、身なりの良いワンピとかだと5000ユロルくらいする。10倍くらい高いのは日本と変わらない気がする、そういうところはどこ行っても同じなのかな?


 いやまあつまりね、市長クラスのお洋服はとてもじゃないけど手に入らないってことなんだよね。

 多分このルーデルで働いていればまあ、買えるかな? といったお値段なんでしょう。

 開拓地の収入ではとてもじゃないけど買えたものじゃない。開拓地の収入レベルが低すぎるんだよ。


 石材と岩塩は秋ごろに稼働見込み。とはいえ稼働しても収入の低い1次産業。厳しいのは変わりないかな。

 すぐにはハンタの義足手に入らないかもなあ。ごめんよハンタ。


 一応義足作ってもらえるところを巡ってみたけど、足元見られて「出口は入口と同じ所となっておりまーす」と帰されるか、吹っ掛けられて2000ユロル以上するといわれるか。

 うーん。〈貧乏に世間は冷たい〉のは異世界でも共通か。


 貧乏と言えば、私はルーデルに泊まったことがないんだよね。宿代結構高い。酒場についている宿でも結構する、開拓地の収入レベルではね。

 朝に大砦直前の森から出かけていって、大急ぎで大砦を通過してルーデルに入り、夜帰ってくるという感じ。くっそー貧乏は敵だ。


 でもあれは買わないとなあ。



「かえったどー!!」

「おかえり姐さん、今回はなにを手に入れたんっすか」

「このマジックポーチだよ。女性が持つポーチの形をしているけど、これで今までの背負い籠の3倍くらい容量が入って、少し重量が軽くなるやつ。少ししか重量が軽くならないから重いものは入れられないけどね。これで錬金素材や基剤、丸薬なんかを大量に輸送しようと思って。ルーデル行く時に背負い籠を持たなくなるから見た目もよくなるしね」

「将来への投資って感じっすね。麻と綿花は秋初頭に収穫できそうっす。麻の実からとれる油、こいつは高く売れるっすよ。石臼で挽けば油が出てくるはずっす」

「おお、次植える分は残して実は油にしちゃおっか。少しでも収入上げないとね」



 ハリコーとあいさつしたらみんなのところへ視察。指示出してないから何やっているかわかってないんだよね。


 まずはハンタ。片足けんけんだけど見事にタンニンなめしをしていたよ。

 この革の服が認められれば、この開拓地でもいい服が作れるんだけど……。 革じゃなあ…… って感じなんだよね。1890年代のアメリカ開拓時代における大きな文明都市みたいな感じだよ、ルーデルは。

 ハンタはすごく真剣だったのでそっと別の場所へ。


「っしゃーおらー!まだまだ走れるぞおらー!!」


 えっさ、ほいさ、えっさ、ほいさ


 は、ははは。収穫が大体終わったモロッコシー軍曹によるモロコシ部隊は、走らされてるわ。やはり筋肉なのかな、いや体力か。体力使う仕事ではあるもんね。

「あ、お頭ぁ!! 一緒に走りやしょうぜぇ!! 体力は全てをつかさどる!!」

「あいや、今日はほかの所視察に行くから駄目だよ。ふ、冬なら出来るかな?(どうせ雪積もって走れんだろう……)」

「わかりやしたぁ! 冬ですねぇ!! 雪かきして道はお創りいたしやす!」

「ア、ウン、ソンナ、ガンバラナクテイイヨ」


 ぼ、墓穴を掘ったかもしれない。


 木材部門はかなり大忙し。木壁の強化と、石材と岩塩の採掘場を作るための角材の作り出しのためにね。


 わたしも魔法を使ってお手伝い。【乾燥魔法】!! 【金属制御魔法】!! !! からの【鉄加工魔法】!!


 という感じで乾燥させてジグソーのようにノコギリを制御して、それを鉄くぎや針金に加工してるよ。


 なにかを生み出すのは大分珍しいそうなんだけどまあ使えるし、使えるもんは使う。

 鉄鉱石採掘できる場所あると思うんだけどねえ。あっても、そこから鉄まで加工するには何もかもが足りない。買うのは高い。なので生み出す。あまり質が良くないけどね。


 ハルキ君はスキル振り直しさせて〈弓適正I〉と〈解体I〉、〈ブレイブI〉に。弓技が出現したそうなので、それで狩りに行ってもらってるよ。経験値稼ぎになるし、お肉手に入るし。




 ぷっはー、市長の仕事今日は終わり。帰ってきつ寝しよーっと、ぽよよんぽん!


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