第19話 このよのはるを謳歌し始めた開拓地さん



 今は4月最終週、一気に秋の様相が漂い始めちゃった。



 わずか5匹のゴブリンで思い知りました。私は弱い。この世界、特にこの開拓地では弱いと生き残れない。強くならねば。


 木材を組み合わせて布の中に綿を詰めてもらい人形を作ってもらい、それに棒で打ち込みます。


「えい! えい! えい!」


 完全な我流ですが、やらないよりましでしょう。



 いしつぶては話にならなかったので、もっと威力のある魔法を考えます。


「うーん、犬の頭を穿った時を思い出すと、石だけど先端がとがっていれば火力になるかな?ファンタジーによく出てくるファイヤーボールみたいなかっこいいやつは今の私では【魔法操作技術】が足りない……。」


 犬の頭を穿った魔法をすぐに出せるように練習をします。石ドリル!! 石ドリル!! あ、魔素量の増加も頑張ろう。

 ……というか、魔法って詳しくはどういう原理で出てるんだろう? やっぱり学校行かないとこれ以上の能力向上は難しいかな……?


 全ての基本は体から。自分に厳しく、甘さを見せない。


「お頭、身体トレーニングのしすぎですぜぇ……」

「はぁ、はぁ。あともうちょっとだけ頑張る……」


 



 私の頑張りを見ていたキッコリーやモロッコシ―、モロッコシーの訓練から逃げていた労働者たちが、身体トレーニングと槍の訓練を本格的にしだしました。防衛意識が高まったのかな、嬉しいな。

 いわゆる民兵になってくれることを期待しよう。

 モロッコシーとハリコーそしてケンさんはすでに強いから、もう民兵だね。

 ハラミは最終兵器、かな……



 ――――


「それで思い出したんだけどさあ、各資源の収穫状況はどうなってるのかな?」


「そうだな市長、麻や綿花が取れた、結構膨大な量がな。今それの収納庫を作り終えたところだ」

「そっか。何か問題は?」

「おおありだ。糸紡ぎ機がないから糸をつむげずに綿ワタと麻繊維にしかならない。糸紡ぎを買ってくれ」

「なるほど糸紡ぎ機ね。他の要素はどうかな?」

「石材と岩塩は本格稼働開始だ。石材に馬刺し、岩塩にハラミをおいて、どんどん資源を取集しているぞ」

「おおー。資源保管庫も必要だね。どんどん作っていこう!」


 後はモロコシがこの冬超すのに十分な量を確保できたという報告。まあまあ寒さを凌ぐことは出来そうかな?

 石材が集まれば各家に暖炉が設置できる、そうすれば火で身体を暖めることができるからね。


 そりゃあ、可能なら地球では一般的だった断熱材を入れた建材で建てたいけど、そんなもの開拓地にはないしねえ。

 可能な限り分厚い木で作った家にして、少しでも断熱効果が期待できるように作るしか無い。うー文明がないと厳しいなあ。





「それでハルキ君、見たゴブリンってのは?」

「一匹だけ、明らかに周辺を探索している感じでした。こちらを探っているようです」

「そうか、処分は?」

「しました、死んだこともわからないように死体は処理していおきましたよ」

「さっすがーハルキ君。今のところ全員殺しているからまだこの居住地はバレてないはずだよね」

「そうだと思います。そういえば殺したことにより〈レベルアップ〉しました。」

「そっかわかった。ステータスも向上するんだもんね。ハルキ君はチート守衛だねっ」

 嬉しくて手を取ってニッコリにこにこ

「ひゃ、ひゃい。しょうでふね」


 顔真っ赤にしてる、うぶだなー。


 まあハルキ君はどんどん〈レベルアップ〉してもらおう。攻守の要になるかもしれないし。いや、なるでしょう、チート勇者君。


 ――――


 よーし、材料もたまったし、第一回大規模販売に出かけてくるよ!!


 馬刺しに荷物を積んで一路ルーデルへ。通れるかなって思っていたけど、鉄の身体を持つ馬刺しの前には樹木の通せんぼなんて意味がなかった。この子重戦車かな?


 まず伺ったのはベルベルベ商会。ここで……。


 ポーションをその場で生産して販売しようという算段。目の前で造れば生ものでも関係あるまい、わたしってかしこーい、ばんざいばんーざい、しっぽぽよよんぽん!


 こねこねこねこね ボシュウ シュバー ちょろちょろ

 こねこねこねこね ボシュウ シュバー ちょろちょろ

 こねこねこねこね ボシュウ シュバー ちょろちょろ

 こねこねこねこね ボシュウ シュバー ちょろちょろ


「とりあえずこれでどうですか?」

「ふーむ良い質だ、一個50ユロルってところだな」

「やった、作成自体は簡単だけど50ユロルになる! 時間のかかる錬金基剤もいらないタイプだし!!」

「あはは……可能なら錬金基剤も」

「値段によります」

「く……あれなら60ユロルだ。ここに来る合間に作っておいてくれ」

「70くらいほしいですけど、判りました」


 錬金だけで450ユロルゲット。まだまだ稼ぎとしては低いみたい(ルーデル比)だけど、いい感じに収入になってきています!!


 そしてベルベルベに紹介されたルンバルンバ塩協会にいって、岩塩の質を確認してもらい、持ってきた形(粉々の岩塩より、正確に切り取られた岩塩のほうが高い、という話。)、質、そして量を勘案してもらい、700ユロルの値段で売れました!! やったあ! しっぽぽよよんぽんぽん。

 錬金と合わせて合計1350ユロルです!!




 やっほおおおおおおーーいい!!ついに一回の交易で1000ユロルをゲットしました!!これで宝箱からの報酬を買うのが視野に入って来ます。

 そうじゃなくても開拓地向けの装備はいい感じに揃えられますね!!



 大型糸縒りより機が宝箱500ユロルだったので、2つ購入するとして、残りは350ユロル。何かに使ったほうがいいよね。


 やっぱりあれでしょう



 マジックリュックサック!!



 リュックの質はそんなにすごくないけど、馬刺し並みに岩塩を運べる量が入るリュックサック!内部重量軽減はそれなりレベルだけど、私【運搬技術】なんてのも持っていて、積んで移動するだけでどんどん運搬能力が上がっていくからね、やるしかないっしょ、みんなのために。


 350ユロルで買って、ルーデルから帰還。やはり何かを売るならここだなあ。




 糸縒り機も設置できるし、生産能力がぐんと上がるなあ。石もたまり始めているし、遂にこの開拓地にも春が来た!!

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