第17話 あぜんとするわたし!

 

 さて、怖いけど戦闘開始です。


 集中!!


 まずは遠距離戦。対応するのは私とハリコー、ケンタウロスのケンさん、そして魔道銃を持ったモロッコシー。

 私は目くらいまでしか壁から出ていないけどそれでオッケー。魔法で戦いますので。


「射程の範囲!! くらえー! 現出せよ、いしつぶて! いしつぶて! いしつぶて!」


 ヒュンヒュンヒュン!

 ポトッポトッポトッ


「あれ、射程距離が足りない」


「お頭、慌てすぎですぜぇ。ここは魔道銃で……発射!」


 ドーン!

 スカッ

 魔法の弾はゴブリンから大きく外れた軌道で飛んでいきました。


「くそっ、ハンタじゃないと癖があって扱いこなせないぜぇ」


 それでも撃つべし撃つべし撃つべし!!


 ヒュンヒュンヒュン!

 ポトッポトッポトッ

 ドーン!

 スカッ


 ヒュンヒュンヒュン!

 ポトッポトッポトッ

 ドーン!

 スカッ



「あ、当たらない……」


「市長、撃つのを控えろ。魔素が足りなくなるぞ」


「うん」


「やつら木の陰に隠れたし、まあ効果があったっすよ」


「この距離ワシの距離ガンスけど、台に乗れないので狙えんでガンス」


「ケンさん、大きいですものね…… 」


 どちらも遠距離が当らない距離なせいかにらみ合いが続き、そのまま夜になりました。


 みんな一度サクラの家に戻りました。夜目が効く人いないから、見張れないんです。

 ここって夜でも明るい地球の都市とは違って、びっくりするほど真っ暗だから。


「何もしてこないといいんだけど」


「ゴブリンは頭良くないから、こざかしい真似はしないだろうさ」



 夜が明けました。まだ薄暗いですが、ゴブリンのほうに動きが。


 強襲してきました。


「今度は当たりますように!現出せよ、いしつぶて! いしつぶて! いしつぶて!」

「魔道銃の陰陽弾を食らえ!」


 どれもスカ


「やっぱり当たらない……」

「うおっまぶしっ」

「もっと引き付けるっすよ。もっと」

「狙えんでガンス」

「もうケンさんは槍で頑張ろ?」


 そういえばハリコーは全然動揺してませんね。


「ハリコーは強心臓だね」

「ビビッて何もできないだけっす」



 そう言いながらも何か力をためています。なんだろうな。


 牽制という名の当たらない攻撃をしつつ、交戦距離がかなり近距離に縮まりました。


「これくらいからが当る範囲っす。いきます! ハリセンボン!」


 ハリコーの頭上に数えきれないほどの針が出現、そしてゴブリンに襲い掛かりました! 凄い強そう!



 実際すごく強くて、体中針まみれになった1匹が行動不能になったようです。残り4匹!


「あたれー!現出せよ、いしつぶて!」


 ヒュン!

 ドカッ!


「当たった! 1匹こけたよ! 勢いを少しは殺せてるかな!」


 魔道銃は当たらず。

 そしてこけたゴブリンは起き上がって復帰。


 もう1匹ハリセンボンで行動不能になったあたりでゴブリンが壁に張り付きました。

 3匹で壁を殴り始めています。


 ボコッボコッボコッ

 メキッメキッメキッ


「あわわ、壁が崩れちゃう!」


「あっしの真の出番だぁ!! 槍槍ぃ!」


 無慈悲にも筋肉だるまから突き下ろされる槍がゴブリンを襲う!!


 グサグサ!


 1匹死亡!

 しかし槍が抜けずにモロッコシーの手から離れてしまいました。後は普通の槍で応戦するしかない。


 ボコッボコッ


 メキッメキッ


「壁が壊れるぅ! 侵入されるよぉ!!」


 

「ぶもももおおぉぉぉぉおおぉおっぉおぉぉ!!」




 え、なにっ?




 後ろを振り返るとそこにはハラミ――ミノタウロスと牛を掛け合わせた、2足直立歩行している牛――の姿が。

 マサカリ担いで見た目は牛タウロスって感じ。


「ぶもっぶもっぶもおおおおおぉおおぉぉぉおおぉ!!」


 ハラミは全身の筋肉を肥大化させて壊れかけの壁に突進! 担いでいるマサカリで壁を破壊!! そう、壁を破壊したのである!!



 ちょちょちょちょっとおおおぉっぉおおおぉ!?!?


「ぶんがぁぁぁぁぁ!!」


 逆侵攻をかけたハラミはゴブリンをなぎ倒す! なぎ倒す! 



 ……ちょあ、ちょま。ちょ、まてよ!



 ハラミはそのままの勢いで突進し、ゴブリンを緑の血が噴き出た肉塊に!!


 叩き潰されるゴブリン! 握り潰されるゴブリン! 唖然とする私!


「ぶんもぉぉぉぉ!!」


 雄たけびを上げ、ハリセンボンで行動不能になっているゴブリンの〈頭を踏み潰す〉ハラミ!


 踏み潰す! 踏み潰す! ただ立ち尽くす私!



 …………えっと




 勝利!!



「えーみなさん。ハラミに平身低頭。礼! あざっしたぁ!!


「「「「「っざっしたぁ!!」」」」


「ぶもー」


 照れるハラミ。こっちは怯えているよ……


「えー今後ハラミ……さんの飼料を5割増しにします。異論は? ……ないね。よし、解散!」




「なんとか大きなけがもなく、酷い損壊もなく終わったね。良かったあ」


「ああ。ただな、市長。今はいいが多分またやってくるぞ。今度はもっと大人数でな。ゴブリンってのはそういうやつらだ」


「私は加護の制限でここを放棄できないけど、みんなは逃げられるから……」


「何弱気になってるんすか姐さん。防衛力をあげて、軍事力をあげて、巣を駆除すればいいんすよ。姐さんおいて逃げる人なんてここには誰もおりませんよ」



「ぐすんぐすん。ありがとうみんな。よし! 最後まで頑張ろうね」


 ――――


 頑張ろうねとは言ったものの、よく考えれば私が偵察しに行くなんて行動しなければよかったんですよねえ……ハンタとケンさんに任せればよかったんです。


「ドンヨリ」


「気分が言葉に出てますよお館様。起きたことはしょうがないですし、結果そうなったのもしょうがないです。それよりも義足をお願いします」


「うーんそうは言ってもなあ」


より、が重要です」


「……わかった。義足購入は任せてね! お金貯まったら一緒にルーデル行こうね」



 岩塩採掘場整備して、錬金術もいっぱいしなきゃ!




 爆弾の存在を忘れてました。


 つかえばもっとらくだった。


 あぜんとするわたし。

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